「当社は、10年ほど前の東急東横線の地下化工事に代表されるように、東急沿線の維持管理工事や他の民間鉄道工事にも深く関わっている。日常的に鉄道軌道内に入って工事をしており、工具も鉄道軌道付近に置くケースが多い。もし、一つでも工具を置き忘れれば、重大な事故が発生するおそれがある。そのためにチェックを欠かすことはないが、現状はほとんどが紙ベースで行っており、これを解消する必要があった」と小島部長は鉄道工事におけるチェック方法の非効率性を説いた。
東急建設では、数年前にRFIDによる数量把握の迅速性について着目し、「工具ミッケ」の前身として、リーダーとパソコンを接続してExcelで管理するソリューションの開発を試みていた。しかし、さまざまな課題が見えてきた中で、携帯性やカメラ機能に優れたスマートフォンアプリを使った実装が理想的と判断。スマートフォンアプリ開発のリーディングカンパニーであるアイリッジと共同開発を行い、課題解決とブラッシュアップを目指したという。
「紙を使ったフローをデジタル技術によって半自動化し、最大8割程度の作業量削減効果を確認した。さらに現場規模が大きくなるほど工数削減効果も見込めると考えた。また長期にわたって利用すれば、さらに効果が認められるのではないかと思っている。何よりも鉄道軌道内に工具類を残さないように確実なチェックの実現とその管理の省力化が肝要である。その思いが工具ミッケに詰まっている」と小島部長は自信を深めた。
目前に迫る「働き方改革関連法」でDXが急務に
こうした建設DXについて開発に至った経緯について、アイリッジ MaaS 事業推進室 室長の吉岡大輔氏が解説する。
アイリッジは、延べ20社近くの鉄道アプリを手掛ける中で、鉄道工事現場での工具管理は重要な案件であると認識した。慎重に行われている工具管理はダブルかトリプルでチェックを実施し、鉄道工事ではこの業務が負担であることを理解したという。そこで近年、ガラケーからスマートフォンへの転換が急速に進んだこともあり、コンシューマアプリで培ったノウハウが工具管理の課題解決に活用できると考え、事業化を検討した。
このような背景をもとに、アイリッジではRFIDタグとスマートフォンアプリを活用して工具管理のDXを実現するツールを企画しプロトタイプを開発した。この取り組みは、東急株式会社が主催する事業共創プラットフォーム「東急アクセラレートプログラム(現・東急アライアンスプラットフォーム)」を通じて実現。2020年度に開催した、東急グループとスタートアップを中心とする企業とで事業共創を進めてきたプロダクトやサービスをプレゼンするイベント「TAP Demo Day」で「SOIL賞」を受賞した。そうした成果もあり、東急建設とアイリッジの両社で共同開発を開始し、これをもとに概念実証を複数回実施し、効果を確認、このほどサービス化に至った。

2022年7月に概念実証を実施し、「工具ミッケ」の効果を確認した
開発の動機としては、建設業界は働き方改革関連法により、2024年4月以降、時間外労働の上限規制が適用になるため、DXによる業務効率化が急務となっている。アイリッジでは、工具管理の効率化という切り口から「建設業の2024年問題」の解決の一助とするという野心的な考えから、開発に至った。
「工具ミッケではチェックに時間がかかっていること、忘れ物・無くし物に対する不安・紙の保管の面倒さという課題を解決する」(吉岡室長)
開発を大きく前進させたことは規制緩和が大きい。これまで数mや数10mの長距離の読み取りが可能な高出力のRFIDリーダーは、店舗・工場などの固定の事業所での活用のみに限定されていた。しかし、2019年3月27日の規制緩和により屋外でも高出力タイプのRFIDリーダーを使用できる法整備が制定され、物流業界のトラックや、工事現場などのさまざまな場所での使用が可能となった点も開発の後押しとなった。
利用には総務省への申請が必要となるが、導入時の申請書類の作成代行も今回のパッケージに含んでおり、顧客視点では導入障壁を低減している。

工具類の上にRFIDスキャナをかざすだけでスマートフォンアプリ上のリストと照合できる
機能としては、・工具持ち込みリスト作成、工具数量チェック、続いて工具数量チェックで全ての工具が揃った時のみ、作業完了報告ができる画面に遷移。あらかじめ指定した工事監督者のメールアドレスと作業完了報告内容が入力された状態でメール画面が立ち上がり、送信ボタンをタップするだけで、ペーパーレスで作業完了報告ができる。
「工具ミッケ」の操作性については、同社鉄道土木部 学芸大学総合事務所 所長の津島史人氏が鉄道工事に持ち込んで確認した。
通常の鉄道工事では、線路内、ホーム上などでは終電後から始発までの短時間で多くの工具を持ち込み実施する。現場所長の立場からは、「工具ミッケ」を現場で導入することにより作業効率の向上を期待できると述べている。
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