3Dデータなら、発注者にもすぐ見せられる

3Dで作成した図面(金杉建設提供)
――それにしても、最初に買ったのは、ドローンではなく、レーザースキャナーだったのですね。
小俣さん ええ。最初にレーザースキャナーを買ったのは、今でも正解だったと思っています。
当時、世の中的にはレーザースキャナーよりもドローンの写真測量が流行っていたので、レーザースキャナーを買った後、ドローンの写真測量も試してみましたが、写真解析に時間がかかるのがネックで、正直イマイチでした。次に、アメリカ製のレーザースキャナー搭載ドローンも試してみました。こっちはリアルタイムで点群データが確認できるので、非常に良かったです。とくに、発注者にデータをすぐ見せられるのが、良かったですね。
――ソフトウェアはどのように選びましたか?
小俣さん 土木系のソフトウェア会社、システム会社としては、2つの会社が有名ですが、金杉建設はもともと、工事などを管理するソフトとして、K社のソフトを使っていました。ICT施工するに際しては、F社のソフトを使うことにしました。選択の余地はほぼなかったですね。F社のソフトのほうが、機能面で明らかに上だったからです。
その結果、金杉建設では現在、K社とF社のソフトが混在して動いている状態です。社員によって、使うソフトが違っている感じです。私は、工事をやらないので、F社のソフトを使っています。会社ごと、ソフトごとに優れている点が違うので、どっちのソフトが良いとは一概には言えません。2社両方のソフトが使えるのは、私は良いと思っています。
――ソフトは統一したほうが効率は良さげですけど。
小俣さん それはそうかもしれません。ただ、拡張子を変えれば、ソフト間のデータ移行もできるので、とくに不都合を感じていません。
パソコンに関しては、正直詳しくない(笑)
――パソコンはどういうスペックのものを使っているのですか?
小俣さん 私はi-Construction推進室の室長という立場ですが、パソコンのスペックとかは、正直あまり詳しくないんです(笑)。なので、販売店さんと相談して、ススメられたものを買っているだけです。
――コスト的にはどんな感じですか?
小俣さん ノートパソコンだと50万円ぐらいのものを使っています。デスクトップだと、パソコン本体で75万円ぐらいですかね。扱うデータによっては、重すぎて途中で落ちちゃうこともあるので、これがベストなのかどうかはわかりません。毎年新しいものが出ているので、定期的に買い替えていったほうが良いのかなとは思っています。
個人的には、作業の生産性を上げるには、モニターを増やすのが良いと思っています。いちいち画面を切り替えるより、複数のモニターに同時表示するほうが、時短になるからです。
ICT施工のおかげで、会社のネームバリューが上がった
――内製化によって、どのような効果が出ましたか?
小俣さん たとえば、2億円ぐらいの工事があったとして、ICT活用工事で施工した場合と非ICT施工(標準施工)で施工した場合を比べると、ICT活用工事のほうが、設計変更でざっくり1000万円ぐらい増額します。週休2日の4週8休を達成すると、さらに1000万円増額し、トータル2000万円ほど請負金額が増額します。請負金額が1割増額するならやらない選択肢はなかったです。ICT施工なら、丁張りが不要なので、その分の費用、人員もいらなくなります。以前は受注した工事間で人員の移動がありましたが、丁張レスになったことにより、その人員移動がなくなり、余った人員でもう一本工事を受注することができます。
あと、他社に先駆けてICT施工を始めたおかげで、自分で言うのもなんですが、会社の名前がかなり売れました。広告宣伝費をかけずに、会社宣伝ができ、ネームバリューが上がったのは、スゴい効果だと考えています。
――ICT施工に関するノウハウを他社に伝授しているそうですね。
小俣さん そうですね。WEBセミナーなどを通じて、いろいろ情報発信しています。出せる情報はすべて出しています。主催者さんの話では、視聴者さんからの評判もけっこう良いそうです。
現場経験のない若手社員をICT担当にしても、うまくいかない
――ICT施工の内製化に取り組む会社も増えてそうですか?
小俣さん そこは微妙なところだと思っています。他社さんの取り組みを見ていると、ICT施工の専門部署をつくったとしても、20代の若手社員を担当者に置いているケースが多いんです。セミナーなどでお会いするICT担当者も、ほぼほぼ若手なんです。これだと、うまくいかないんじゃないかなという気がしています。
と言うのも、たとえば、私の場合、ICT施工をやる前に工事をやっていたし、積算などもやっていました。そういう経験があったからこそ、ICT施工をどんどん進めることができたと自負しています。
現場でバリバリやっているベテランの人がICT施工を担当するなら、うまくいく可能性が高いですが、経験の浅い若手社員だと、難しいんじゃないかなと感じるからです。経験がないと、どうやって仕事を受けるかといったことが、なかなかわからないからです。実際、直接話をすると、「どうすれば良いかわからない」という人もいます。ICTだけ詳しくなっても、ICT施工はできないんです。