台風に見舞われ、大型重機が水没した
――とくに印象に残っている現場はありますか?
加藤さん いろいろあるので絞りにくいのですが、強いて挙げるなら、2つ目に入った新東名の額田トンネルの現場です。この現場は、トンネルが4本あって、延長のトータルが5,500mある、かなりとびっきりの現場でした。社員も常時30人ほどいました。強烈な印象を受けた現場でした。
――規模の大きさが印象に残ったということですか?
加藤さん そうですね。のべ社員数も100人を超えていましたから。現場を管理する立場としては、それ自体がある意味大変でした(笑)。
あと、岩手のトンネルの現場も印象が強いですね。現場が動いているときに台風に遭ったんです。2本のトンネルを掘っていたのですが、ジャンボという大型機械が水没しました。ケーソンの現場もやっていたのですが、60tのクローラークレーンが海に沈みました。360tクレーンを持ってきて、水中ダイバーを入れて引き揚げました。動いている現場があるのに、災害復旧もやったということで、工事に遅れが出たりして、かなりシンドかったですね。
――ケーソンの現場もやっていたというのはどういうことですか?
加藤さん トンネルの現場なのですが、工種がたくさんあって、その中にケーソンで橋脚をつくる工事もあったんで、なかなかのボリュームでした(笑)。
自分のこだわりを押し付けない
――所長として、現場を束ねる上で心がけていることはありますか?
加藤さん この現場には戸田建設の社員が8名いますが、その中には若い社員をはじめ、さまざまな社員がいます。さきほども言いましたが、所長として、それぞれの社員に合わせたもの言いをしないと、その人の能力を活かすことはできません。その辺をいかに見極めて対応するよう心がけています。たとえば、この人には丁寧に言う、この人には強めに言うということですね(笑)。
――現場管理する上でこだわっていることはありますか?
加藤さん 自分のこだわりを押し付けるようなことはしたくないと思っています。自分がこだわってしまうと、人によってはイヤな気持ちになることがあるからです。なにが正解かはわからないところがある限り、他人に強要しすぎるのは良くないと思っています。もちろん自分だけで楽しむ分には良いとは思いますけどね。
――それはそれで大変そうですが?
加藤さん ええ、大変ですよ(笑)。でも、そういうのもアリかなと思っています。
全員で「貫通」という目標に向かって取り組むのが魅力
――加藤さんにとって、戸田建設の魅力はなんですか?
加藤さん なかなか難しい質問ですが、入社してからここまで来れたのには、戸田建設になにか魅力があるんでしょうね(笑)。会社を辞めたいと思ったことは何回もありましたが(笑)。
――トンネルの魅力はなんですか?
加藤さん 24時間休むことなく貫通まで突き進む工事は、トンネルぐらいだろうと思うんです。いろいろな人々が貫通という大きな目標に向かって同じ方向を向いて取り組んでいくのが、トンネルの魅力だと考えています。途中で途切れることなく掘削し続けていって、貫通の瞬間を迎える。そこに達成感を感じています。
至って温厚で、これまでと異質な所長

下河さん
――下河さんにとって、加藤さんはどのような所長ですか?
下河さん 私は入社してまだ9年ぐらいなので、下についた所長も4人ぐらいしかいません。その中での比較になりますが、加藤所長は、過去の所長とは明らかに異質です。加藤さんは至って温厚なんです。たとえば、私がなにか説明すると、ちゃんと聞いてくれるんです(笑)。
――以前の所長さんはどうでしたか?
下河さん かなり怖い方もいらっしゃいました(笑)。スゴく良い人なんですが、常に目が据わっているというか(笑)。べつに理不尽なことを言われたことはありませんが、オーラがスゴいので、とにかくコワかったですね。
――加藤さん、どうお感じになりましたか?
加藤さん 私自身いろいろな所長と付き合ってきました。中にはかなり個性の強い所長もいましたが、そういう人を反面教師にしてきたということはあるかもしれません(笑)。
下河さん 下の人間にしてみれば、自分の想いが伝わるのはありがたいことです(笑)。
――下河さんは現在、どのような仕事をしているのですか?
下河さん 現場代理人という肩書きですが、全体を統括する加藤作業所長をフォローする立場です。事務的な仕事のほか、安全衛生管理のため現場を回ったりとか、どちらかと言えば裏方的な仕事をしています。
――最初の現場はどうでしたか?
下河さん 香川と徳島の県境にある高速道路の大坂トンネルでした。2車線を4車線にする工事でした。
――いわゆるトンネル屋さんですか?
下河さん いえ、トンネル以外にもいろいろな現場に行きました。「四国で受注した現場に行く」という感じですね。四国支店は人が少ないので、基本的にどんな工種でもやるわけです。橋梁下部工の現場などにも入りました。