図面を見るのもイヤだったが、なんとか一級建築士をとった
――土木を卒業して、すぐに平岩建設に入社したのですか?
平岩さん いえ、平岩建設がお世話になっていた準大手のゼネコンに入社しました。ゼネコンの人から「家業が建築メインの会社なのだから、建築をやりなさい」と言われたので、建築職として採用されました。「有無を言わさず」という感じでしたね(笑)。入社後は、大阪支店配属になり、現場監督を3年ぐらいやりました。
その後東京支店に移り、積算部と技術部でそれぞれ1年ぐらいお世話になってから、平岩建設に入社しました。それが20年ぐらい前のことです。そのゼネコンにいた間に、図面を見るのはイヤだったのですが、一級建築士を取りました。結局建築から逃げられなかったということですね(笑)。
――よく一級建築士を取られましたね。
平岩さん とりあえず図面の試験は一回落ちました(笑)。2回目でなんとか通りました。
家業だったが、「社内で認めてもらいたい」という気持ちでやっていた
――平岩建設ではどのようなお仕事をしてきましたか。
平岩さん 前の会社で現場監督をやっていたとは言え、3年程度しか経験がなかったので、とりあえず、積算とかいろいろな仕事をしていました。周りは「変なヤツが入ってきた」と思っていたと思います(笑)。
積算と言っても、当時は、それなりに仕事はあったので、ガリガリ削るという感じではありませんでした、入社後しばらくして建築担当の役員になりましたが、役員といっても名ばかりで、やはり社員は「所長経験もないくせに」と思っていたと思います(笑)。このときはISO認証取得やCOHSMSの導入といった仕事を中心メンバーとしてやりました。この仕事をきっかけに、社内に自分の居場所が少しできた気がしましたね。
――現場所長経験がないと、後継ぎでも肩身が狭い思いがするんですね。
平岩さん 所長経験がないということは、現場仕事を極めたわけではないので、「やったことがない人間が経験者に偉そうなことを言うな」という雰囲気がありました。「社内で認めてもらわないといけない」という気持ちが強くありましたね。それもあって、建築関係の資格をたくさん取りました。
――たとえばどういう資格を取ったのですか。
平岩さん これまでに取った主な資格としては、こんな感じです。
- 一級建築士
- 一級建築施工管理技士
- 監理技術者
- ファイナンシャルプランナー
- コンクリート技士
- 建築積算士
- マンション管理士
- 宅地建物取引士
- 測量士補など
自分が資格を持っているので、社員の資格取得支援といったこともチカラを入れてきました。それがきっかけで資格を取った社員もいます。
元請けの仕事を増やすため、自ら営業で回った
――経営のほうはどうでしたか?
平岩さん 私が入社して数年経ったころから、市場が成熟してきて、公共の新築工事があまり出なくなってしまいました。そこで、民間の新築工事をとりに行くしかないということになったのですが、それまで公共工事と民間工事の下請けをメインでやってきていたので、当時はノウハウがありませんでしたし、コスト競争力もありませんでした。
そこで、ある建材メーカーが運営する土地活用賃貸マンションの建築を請け負うようになったんです。当時はこの仕事をかなりやっていました。下請けなので、そのメーカーの制服をウチの社員が着て、そのメーカーの社員かのように仕事をするんですけどね。その後は別の住宅会社の下請けにも入りました。こちらは今でもお付き合いがあります。やはり社員は住宅会社の制服を着て仕事をしています。ウチの社内会議をすると、出席者の6〜7割が他社の制服を着ていた時期がありました(笑)。
――「ここはどこの会社?」と思ってしまいそうですね(笑)。
平岩さん 当時は民間営業のノウハウがなかったので、「営業にテコ入れしたいな」と思っていたのですが、建築担当の役員なので、営業に手を突っ込むわけにはいきませんでした。そんなとき、社長から「営業もみろ」と言われました。そこから営業に口出しできるようになり、自分でも営業に出るようになりました。当時私がやろうとしたのは「元請の仕事を増やす」ことでした。社員には「制服の比率を変えるんだ」とよく言っていました。そういった感じで、少しずつ元請の仕事を増やしながらやってきたわけです。
元請けさんやデベロッパーさんとは今まで通りお付き合いは続けていきますが、われわれの意識としては、独自の民間営業に集中していこうとしています。そのおかけで、最近は設計施工によるデザインマンションといった付加価値のある仕事も取れるようになってきています。