住宅向け太陽光発電・蓄電システムの販売、施工、維持管理を手掛ける株式会社トラーチは、人材確保にSNSを積極活用し成功している。とくに若者から人気のあるTikTokやInstagramなどを駆使しながら、営業や施工のノウハウを分かりやすく紹介し、若手を中心とした採用活動を強化した。自社発信のSNS が話題を呼び、TikTokやInstagramの総フォロワー数4万6,000人を突破したことで、月に1、2 件未満の応募から今では月120件近い応募が集まるようになり、若い世代の職人の担い手確保・育成にも成功した好事例だ。
国土交通省の調査によると建設業就労者は、1997年のピーク時には685万人であったが、2021年には約30%減の485万人となり、建設業の人材不足は慢性的な課題となっている。しかも建設業就業者は、55歳以上が35.9%、29歳以下が11.7%と高齢化が進行し、次世代への技術承継が大きな課題といえる。これからの建設業を支える若年層の採用・育成が業界全体で取り組むべき問題だ。
施工の神様では前回、「わずか2年で年商10億円を達成した”稲場ツインズ” 元警察官が興した施工会社が猛スピードで成長中」で取材したが、今回は株式会社トラーチの活動の中でも担い手確保・育成などを中心に稲場基泰社長に話を聞いた。
東京都に続き川崎市も太陽光発電義務化のインパクト
――いまの太陽光発電業界の動向はいかがですか?
稲場基泰氏(以下、稲場社長) 東京都は、2025年4月から住宅を含む延床面積2,000m2未満の中小規模の新築建物を対象に太陽光発電の設置を義務化しました。このインパクトは大きく、神奈川県・川崎市も歩調を合わせ、同時期に義務化します。また、各地方自治体でも太陽光発電の補助金を付与する動きがあり、とくに太陽光発電+蓄電池をセットにすれば補助金を出す流れになっていることは注目すべき点です。政府は自給自足のできるご家庭をなるべく増やしたいという意向ですから、太陽光発電と蓄電池のセットでの仕事の受注が大変増えています。
これから、大手ハウスメーカーや有力ビルダーを中心に、住宅建築とともに太陽光発電と蓄電池をセットで販売するケースがより増えていくでしょうし、すでに実例も多くなっています。「電気を買わない住宅」が大きなブランドになっているので、各社ともこの流れに沿っていくでしょう。今、日本は火力発電が7割以上を占めています。その火力発電の原材料がロシアによるウクライナ侵攻の長期化で火力発電の原料価格が上昇し、電気代が上がる傾向は止まりません。そこで太陽光発電と蓄電池のセットにした住宅に注目が集まっているわけです。

リフォーム会社の倒産が過去最悪ペース / 出典:東京商工リサーチ調査
――一方で、太陽光発電を設置する業務にも関係する「リフォーム工事業の倒産」が増えているとのデータがあります。業界全体の需要があるにも関わらず倒産が増えているのはどのような理由があるのでしょうか。
稲場社長 円安で輸入商品が軒並み物価高になり、資機材の仕入れ価格が高騰しています。なおかつ職人が高齢化し、人手不足が続いています。そのダブルパンチで多くのリフォーム工事業が悲鳴を上げています。また、人件費を上げないと職人は離職しますから、利益率も減少します。さらに「ゼロゼロ融資」の返済もスタートし、自転車操業を続けてきた会社は経営が悪化します。体力があって儲かっているところは賃上げができても、そうでない会社は無理なので、負のスパイラルに入っています。人手不足についても、採用戦略を持ってうまくいっている会社もありますが、様々な採用媒体に出稿してもお金を出さなければ上位に表示してもらえませんから、目立たない場所に置かれて見てもらえない、結果採用に繋がっていません。
素晴らしい。これぞ令和の建設業だと思います。