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企画・設計段階で病棟全体をBIMで可視化。次世代型病室リノベーションプロジェクト始動

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長井 雄一朗
公開日:2024.10.15
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左から、野原グループ株式会社のBuildApp事業統括本部 リノベーションカンパニー カンパニー長の東政宏氏、株式会社セントラルユニの事業モデル変革推進プロジェクト課長の西尾浩平氏

左から、野原グループ株式会社のBuildApp事業統括本部 リノベーションカンパニー カンパニー長の東政宏氏、株式会社セントラルユニの事業モデル変革推進プロジェクト課長の西尾浩平氏

目次
  1. IoTを駆使し、病棟を丸ごと最新の病室へ
  2. BIMで空間を見える化。費用計算や意思決定が容易に
  3. 増加見込みの病院リニューアル。更新の手法・発想を変革へ
  4. 病院建築や改修の見える化に挑むセントラルユニ
  5. 地域医療の病室のダウンサイジングで、個室化の流れは必然

BuildAppで建設DXに取り組む野原グループ株式会社(東京都新宿区)は、株式会社セントラルユニ(東京都千代田区)をはじめとする病院・診療所など建築に関連する合計8社と連携し、次世代型病室リノベーションプロジェクトを開始した。同プロジェクトでは、IoT技術を駆使しながら病室を個室化し、病室内のさまざまな機能・環境の向上を図る、新たな病室を目指す。

現在、デジタル技術やIoTを取り入れた病室コンセプトをまとめ、既存病棟の改修プランと3Dモデルをもとに「IoTを活用した次世代型病室の紹介」という動画をYouTube上で公開した。セントラルユニのショールーム「mashup studio(マッシュアップスタジオ)」(東京都文京区)では2024年4月下旬から次世代型病室を公開、一般見学を受け付けている。

次世代型病室リノベーションの主なコンセプトは、デジタル技術や3Dの活用で改修計画時での設計、施工の可視化と効率化、病室の個室化やIoT導入による非接触対応への実現で、患者、医療従事者双方に配慮していく。また、費用の可視化では、予算に合わせた病室グレードの選択も可能だ。

今回は、野原グループのBuildApp事業統括本部 リノベーションカンパニー カンパニー長の東政宏氏、同事業統括本部リノベーションカンパニーデジタル推進部エグゼクティブディレクターの久間利昭氏、セントラルユニの事業モデル変革推進プロジェクト課長の西尾浩平氏に、次世代型病室リノベーションプロジェクトの全体像を聞いた。

IoTを駆使し、病棟を丸ごと最新の病室へ

次世代型病室

次世代型病室

セントラルユニは、マッシュアップスタジオで次世代病室を設置し、病院関係者に公開。PRにつとめている。次世代病室の詳細な機能については、まず朝の起床時には電動カーテンでカーテンを開き、太陽光を取り入れることで自然な起床をサポートし、規則正しい生活をスタートさせる。患者はベッドで横になったままいつでもカーテンを操作可能だ。

病室にはディスプレイを備え、病院側から検査や診察で訪れる病棟や時間を通知し、患者自身でスケジュールを把握できる。ディスプレイは、通常のテレビ機能に加え、電子カルテに紐づく1日の治療計画の閲覧や医療従事者のオンライン診療・相談も行えるため、入院中の院内の往来頻度の減少も期待できる。さらに家族とのオンライン面会もでき、個室の利点を活かし、新たなコミュニケーションツールになる。ほかオンライン会議にも参加もでき、社会や会社との接点も維持できる点にも効果がある。

次世代病室のディスプレイ

次世代病室のディスプレイ

病室にはタブレットも備え、ナースコールへの発信にも使用でき、看護師が音声やカメラで患者の状態を把握し、事前に準備して対応可能だ。カメラの機能により病室への駆け付けが必要なナースコールかを判断できるため、医療従事者・患者双方にとってストレスの少ないコミュニケーションとなる。また、就寝前の家族のコミュニケーションツールとしても活用できるという。今後の構想として、例えば、ディスプレイ上のショッピングコーナーで院内コンビニでの買い物をオーダーすると、巡回ロボットが買い物を病室まで届けるなど身体に負担がなく病室で過ごせる環境の実現も視野にいれている。

このほか病室をより快適な空間とするため、空調と壁面設備を一体化した未来志向の病室ユニットを提案。照明では抗菌ダウンライトや快眠を促す間接照明を導入し、リラックスできる入院生活を過ごせるようになる。空調では個室のメリットを最大限に活用し、冷暖房を組み合わせて患者一人ひとりに合わせた空調を実現。設備パネルは医療従事者と患者用に明確に区別し、ストレスなくケアを受けられる。

このようにIoTを活用したユニット型次世代病室を活用することで、病棟を丸ごと最新の病室へと改修ができる点が次世代型病室リノベーションプロジェクトの大きな魅力だ。企画・設計段階では病棟全体をBIMで可視化し、病院にかかわるすべてのステークホルダーにとって導線や使いやすさでの検討が可能となる。

プロジェクトの立案は、株式会社システム環境研究所の竹原潤代表取締役社長。病室は意匠や機能も含めて30~40年前からあまり変化がなく、現代の環境にあった病室をつくるべきだと竹原社長は提起。まずはリノベーションの実施を目標に、医療設備やIoT分野に長けた業界のスペシャリストと集合体でプロジェクトを進めることとした。今後は、リノベーション施設に限らず新築案件にも適用できると考えている。

「BIMで毎回一品生産すると労力がかかるため、一定の企画化が肝要。病室は機能重視の空間なため、企画化により最先端の技術を導入し、従来と異なった病室をつくっていきたい。価格やイメージを早い段階から病院と合意形成をするためにBIMの導入は不可欠。患者目線、医療従事者目線、患者の家族目線とさまざまな角度から病室の価値を考えると、ICTやIoTの導入はコミュニケーションを深める点で重要になる。そこで野原グループとしてはBIMの企画を担当し、内装の建材商社の役割を果たし、建材もパッケージ化し、連携する8社とともに病室の企画化につとめる」(東氏)

BIMで空間を見える化。費用計算や意思決定が容易に

久間氏はプロジェクト開始の背景について、「システム環境研究所と野原グループの2社で約1年かけて病室に関する要求水準書をまとめた。これを実現していくために8社との連携が必要で、各社が力を合わせ、要求水準を満たす個室をつくり、プロジェクトをスタートした」と語る。

次世代型病室リノベーションプロジェクトで大きな役割を果たしていくのはBIMだ。

BIMを使った空間シミュレーション

BIMを使った空間シミュレーション

「BIMにより空間の見える化を実現でき、費用計算が容易になると、病院経営層の意思決定も早まる。3Dの空間では色や照明の位置を変え、具体的な空間での検証が可能になる点もメリットが大きい。医療従事者は図面を見たことがない方も多く、空間のイメージがしにくい。そこでBIMの活用により、希望する病室がイメージしやすくなる」(西尾氏)

「BIMによるパッケージ化もポイントだ。パッケージ化により、機能面と価格も含むランクの中から選択も従来よりも容易になる。次に病院建築の情報化の推進でカギとなるのもBIMだ。一度、建物を情報化し、BIMを活用していけば建物のどこになにを設置しているかのデータが明確になり、後々の建物管理も容易になる。現在のイニシャルコストだけではなく、ランニングコストも含めて可視化する点にBIMを活用する大きな意義がある」(東氏)

増加見込みの病院リニューアル。更新の手法・発想を変革へ

現在、医療施設には多くの課題がある。着工件数のうち、病院で多く採用される傾向にあるSRC造やRC造の着工件数のピークは1980年前後といわれているが、この時期に着工した建物が2020年以降に築40年を迎える。一般的には、築30~40年で病室の壁の汚れなどから建替えを検討し実行するケースが多く、病院建替えの需要は今後増加する見込みだが、建替用地の確保が難しく、現施設のリノベーションを希望する傾向が多い。

デジタル技術を活用した、改修プロセスの可視化・効率化を実現

デジタル技術を活用した、改修プロセスの可視化・効率化を実現

医療施設の病床数削減と国の方針を受け、多くの医療施設で病室の見直しが必要となる。加えて、昨今顕著なプライバシーの保護・感染予防・QOLの観点からの個室化ニーズが高まっている。医療施設建設の品質、費用、生産性の両立に向けたリノベーション手法・発想の切り替えと変革が急務といえる。

野原グループは「建設DXで、社会を変えていく」との新方針のもと、デジタルや先進建築手法を取り入れ、建設DX推進事業「BuildApp(ビルドアップ)」に注力。リノベーションカンパニーは、「BuildApp(ビルドアップ)」で維持管理のプロセス変革に挑戦中だ。そこで医療従事者・医療施設の利用者・医療法人のそれぞれにとって利点のある医療環境を実現するため、建設DXで医療施設建設のプロセスに変革を起こす方針だ。

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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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