病院建築や改修の見える化に挑むセントラルユニ
一方、セントラルユニは、マッシュアップスタジオを通じて病院づくりの見える化を展開中。ミッションに「大切ないのちを守る、環境づくりのお手伝い」を掲げ、手術室や集中治療室などの工事を行う特殊設備メーカーだ。マッシュアップスタジオを訪問する医療関係者は、新たな病院を建築・改修する人々が多い。そこで、マッシュアップスタジオを活用し、「こんな病院をつくりたい」「こんな手術室にしたい」との想いや課題を可視化し、気づいてもらい、納得してもらう過程を”見える化”している。
見える化が必要な理由は、基本構想、基本設計、実施設計、施工という建築プロセスのタイミングでさまざまな点を決定する必要がある。建築業界では図面を見ながら打ち合わせをするが、専門的な記号も多く、高さやスペース、空間的なイメージがつかみにくいなどの課題があり、完成した際に「こんなはずではなかった」と施主からクレームがくる場合もある。
そこでセントラルユニは認識のギャップを埋めるために見える化をするツールを通じて顧客の病院づくりをサポートする。マッシュアップスタジオは、3DやARを駆使してイメージの湧くシミュレーションを実現する「CYBER」、手術室やICUなど医療環境を実機で体感する「REAL」、ICTを駆使し、病院づくりに必要な「気づき」を演出する「NAVIGATION」という3つの機能を持つ。

マッシュアップスタジオのスクリーン
4階は、「CYBER」「NAVIGATION」の見える化のツールを用意し、特にスクリーンでは手術室やフロア全体を3Dで可視化している。3Dリアルタイムシミュレーションを活用し、手術室やICU、フロア全体の寸法や色、設備機器の種類や位置を原寸大で体験でき、病院建築のヒントになる情報を集約したICTブラウジングシステムを用意。セントラルユニが携わった病院であれば、事例の写真も見ることができる。
「ほかの病院の事例を知りたいという要望もあり、事例をたたき台として議論する場としても活用している」(西尾氏)
「REAL」にあたる1、2、5の各階は実機を体感できるフロアで、手術室、供給システムを展示。特に5階では、実際のスペースや機器、設備を体感し、確かめながらシミュレーションが可能だ。設計・施工のどの段階でも顧客の要望の最適化を目指す手術室システム「FLexDOCK」や輻射式手術室空調システム「コンフォート・コンダクター」を体感できる。

マッシュアップスタジオでの手術室
このほか2階にはグループ会社の山田医療照明株式会社のショウルームがあり、光の質を体感できる。現在のメイン事業は、手術室、ICU、医療ガスの3点だが、新たに次世代型病室リノベーションプロジェクトが加わり、強化する方針だ。

マッシュアップスタジオでの手術コーナーで解説する西尾氏
地域医療の病室のダウンサイジングで、個室化の流れは必然
現在の地域医療の病室は、人口減少に伴いダウンサイジングし、病院と病室が減少。コロナ禍では病室の個室化が再評価された。この医療業界の動きにも伴い、関係8社で次世代型病室リノベーションプロジェクトを推進することになったのである。
「病室でも個人の空間を尊重する傾向にあり、感染症対策が必要になった。加えて、単なる個室空間ではなく、IoTを駆使するのが今回のテーマであるため、これを含めた次世代型病室を形成していく。ポイントはIoT、感染化防止、BIMや3Dによる検討、コストに合わせたグレードの選択の4点に絞られる」(西尾氏)
IoTを活用した次世代型病室の紹介 / YouTube(野原グループ株式会社)
ところで先般、野原グループでは、地域の健康拠点の増築工事に、先進建築手法とデジタル技術を採用し工期短縮の内容をリリースし、施工の神様でも取材した。在来工法と比較し、約2ヶ月の工期短縮と35%の省人化を実現するなどの効果を発揮。今後、CFS建築とBIMとの組合せは注目される。
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今後、野原グループは医療施設の分野を強化していくのだろうか。
「医療分野は今後、既存の建物用途の領域を超えた対応が必要と考えている。医療施設の在り方が更に変化し、病院・病室での治療はより高度化・短期化され、施設自体はダウンサイジングとなる一方で、治療後の療養施設の拡充や、退院後は最寄りのクリニックでのサポート、自宅からの遠隔診療など、目的に応じた施設と機能分散されていく。例えば、住宅やマンションといった建物でも、医療を意識した機能が重要になってくる。今回の共同プロジェクトをきっかけとし、さらに医療分野での対応領域を増やしていきたい」(東氏)
「野原グループが参画することは、フロントローディングできる立場で市場性を踏まえた情報を入手できるメリットがある。単に建材を販売するだけでなく、BIMを軸とした空間づくりを通じて、共にプロデュースしていく関係性を築いていきたい。医療はどの業態にも関わるが、街づくりにおいても重要な役割を担っている。当社は、医療施設、クリニック、住宅建築、さらには公共建築向けに材料を供給しており、これらの仕事が相互に連結する効果を期待している。さらに、医療のトップ企業と連携することで、医療関連ビジネスを拡大していきたい」(久間氏)
今後の展開については、次世代型病室を導入してもらうよう普及活動を展開し、導入された病室についてどれだけの効果が出るのかの検証していく。
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