山岳地での送電線鉄塔基礎工事では…
山岳地での基礎コンクリート打設は、トラック運搬による横付け打設、索道(単独・連続)を使った打設、ヘリの空輸による打設の3パターンになりますが、私の従事した山岳地での現場では、ヘリによる空輸でのコンクリート打設がメインでした。
構築する基礎の中でも、山岳地での主流である深礎基礎(円形柱体基礎)の場合には、基礎開口部に受けホッパーを据えて、そこにヘリで吊った鋼製のバケット(0.8m3)を上手く載せて、操縦士が油圧操作でバケットを開口し、中のコンクリートをホッパーに落とし込んで打設します。
通常、ヘリでのコンクリート打設を行う場合には、河川敷等に設置したヘリポートでコンクリートを受け取り、2機のヘリで交互にコンクリートを運搬・打設します。コンクリート打設を始めたら、一定のコンクリートを打設するまで、ヘリが飛び続けますから、現場の作業員の人達も目処がつくまでは、ゆっくり休息できず、ヘリとヘリが飛んでくる合間にささやかな小休止を取りながら作業を行っていました。
山頂全体にガスがかかり、視野が最悪の中、しかも強風や風向きの変化が激しい中で、ヘリを自由自在に操る戦闘機乗りであった運航部長さんなどベテラン操縦士の方々の技量の高さには何度となく驚かされました。
コンクリート打設は安全と時間との戦い
私が経験した深礎基礎工事では、外形がΦ3000~3500の円形の基礎の中に、同じく円形に鉄筋を組立て、それにフープ筋をかまして鉄筋を組んで行きます(道路下部構造準ずる円形柱体構造のため)。
基礎コンクリート施工は、躯体部(地中)と柱体(地上)とがあり、躯体のコンクリート打設時には、作業班が2班入ります。まず、円形状に組立てた躯体部の主筋の中へコンクリート打設作業メンバーが入り、バイブレーターを使いながら締固め作業を行います。
もう1班は、コンクリート打設に合わせて、躯体部の主筋外側と山留め(鋼製波板と円形に組んだL形支保工を鋼製の埋込み杭で上下を固定)の間に入り、コンクリートの打ち上がり状況を確認しながら、山留めを取り外して行きます。山岳地に設置する場所はほとんどが岩盤になりますが、風化の激しい場所、発破をかけて地山が緩んでいる場所は、一つ間違えると作業中に山が崩壊して、作業員の人達が埋まる危険性もあります。
そのため、掘削段階から地山の状況を把握しながら、支保工を据えてそこに鋼製波板を円周状に噛ませながら掘り進め、床付け作業を完了させました。
コンクリート打設時は、バイブローターをかける作業員の人達はフープ筋を足場にしながら、安全帯のフックを主筋に掛けて作業を進めます。円周上に設置した山留材の撤去作業を進める作業員の人達も同じくフープ筋を足場にしながら、地山の状況を確認して速やかに波板を1枚ずつ抜き取りながら、あらかじめ緩めておいた支保工の固定ボルトを外し、開口部に待機している作業員の人達と連係して搬出作業を進めました。現場作業は安全と時間との戦いでもあったわけです。
地山の悪い場所は、鋼製波板または支保工材も併せて残置しながら、コンクリート打設を進めて行きました。その後、安全性・施工性を考えてライナープレートによる山留に移行して行きました。ライナープレートを使用した地山の悪い場所は、円周状にライナープレートを残置して、ガスで背面空洞部の場所を切断し、窓を数ヶ所開けて、そこからコンクリートを充填する方法をとりました。
話を戻しますが、ヘリが受けホッパーにコンクリートバケットを上手く据えられれば問題ないのですが、風向きによってバケット位置がホッパーから少しでもズレた時には、基礎の穴の中にコンクリートが落下して、作業員の人達と共にコンクリートまみれになることもありました。また、事務所に帰れば先輩達に笑われたものです。