「コンクリートの締固めを竹を使ってやったことも」
私が入社した当時、大型送電線(275KvA以上)鉄塔の基礎工事に関しては、建設要員の土木技術者が担当していました。具体的には、現場ルート調査、保安林解除申請の対応、地質調査、基礎設計、工事費算出、予算管理(土木工事費関係)、電気事業法に基づく資源エネルギー庁や通産省への土木関係の基礎安定計算資料作成等です。
また、環境アセスメントに関わる業務も土木技術者が対応していました。土木のメインイベントになる、コンクリート施工の品質管理に関しても、建設要員の土木技術者が厳しく管理していました。
電力会社の場合、昔は水力発電のダム建設に土木技術者を配置して管理していたため、コンクリートの品質管理については独自のノウハウを蓄積していました。その後、ダム建設が縮小すると、ダム建設に従事していた土木技術者の人達はその経験を生かして、都市土木(シールド工事等)、大形架空送電鉄塔建設、変電所建設、火力発電所建設、原子力発電所建設、土木設備保守などの土木職場へ配置替えとなり、職域拡大を図っていました。
私が会社に入った頃にはまだ、ダム建設経験者の方々が現役で業務に従事していて、工事管理・品質管理等に厳しい目を注いでいました。私が入社する前には建設中の送電鉄塔が倒壊する事故もあり、基礎工事に対する設計指針・品質管理もかなり厳しくなっていました。
新入社員の時に席を並べたていたダム建設を経験された土木技術者の先輩からは、コンクリートの締固め用バイブレーターが調子悪い時や足りない時には竹を切り出して、竹の節を利用してコンクリートの締固めをしたことも教えてもらいました。
コンクリート打設に立ち会う現場管理の必要性
架空送電線鉄塔基礎工事が落ち着いた頃、建設本部より「既設引き込み設備の増強工事の管理対応してほしい」という依頼がありました。独立基礎の一部(4ヶ所)をはつり、一体化構造のベタ基礎として安定化の向上を図る工事です。
実際に基礎の一部をはつり始めたところ、作業員さんが「監督さん、この基礎のコンクリートへピックを差し込むと、ピックが気持ち良く食い込んでコンクリートがはつれますね」と教えてくれました。おそらく施工管理に土木技術者が関わっていなかったか、もしくは十分な現場管理が出来ていなかったのでしょう。
しかし、基礎はつりをしても構造物の安全上には問題がないように十分な安全対策(支線補強等)はしてありましたので、問題なく補強工事を竣工することが出来ました。
私は現場に出てみて、土木技術者による現場管理の重要性を強く感じました。この経験から、その後従事した建設現場(山岳地)では、現場コンクリート打設前の施工段取りは当然ですが、コンクリートの取り出し状況、バイブレーター等の締固め作業も必ず自分の目で確認するようになりました。
また、仕様書等に定めるものが本当に適切なものであるか、仕様書が現場に適合した内容のものであるかを確認する意味からも、作業員の人達と一緒にバイブレーターを使った締固め作業もさせてもらいました。