愛知県小牧市に本社を置く建設専門工事業者の株式会社キョウエイ(河野誠二社長)は、陸上男子100mの矢橋寛明選手が入社。矢橋選手は広報部に所属することとなった。
建設業界ではかねてから、イメージアップとともに、担い手確保・育成を目的とした広報部門の強化が叫ばれてきた。河野社長は、陸上だけではなく、YouTuberとしても活躍する矢橋選手に注目。同氏は、「バシくんTV 100m走る人」というチャンネルを持ち、登録者数は約3万人。キョウエイでは入社後、広報室に配属。キョウエイのYouTubeチャンネルなどで広報活動を展開中だ。
キョウエイは、2023年9月に陸上競技部を設置、陸上業界や地域での知名度もアップするなど、広報の強化は大きな成果が見られると河野社長は胸を張る。
これからの建設会社の広報の新機軸と離職防止の次の一手についてキョウエイの河野社長に話を聞いた。
“バシくんTV”の驚きの広報力
――現在の人材の過不足感は?
河野誠二社長(以下、河野社長) 2024年度では新卒4名、キャリア採用14名、合計18名採用しました。人材面で不足感は少ないため、2025年度は本当に優秀な人材を求め、一定程度人材採用を絞る計画です。
――建設業界では人材の確保が難しいですが、確保できている理由はどこにありますか。
河野社長 ひとつは、他社と比較して福利厚生がしっかりしているところだと思います。採用サイトに求人情報を掲載するとき、求職者向けの検索項目に「年間休日が120日以上」にチェックがあります。求職者は年間休日が119日以下の会社はその時点でふるいに落とすことが多いので、休日の設定は重要なポイントです。
また、求職者は会社の雰囲気も注視しているので、当社でもSNSを通じて会社の雰囲気が見える発信を心がけています。、会社の知名度を上げるためには、SNSなどのネット活用へのシフトが重要です。求人雑誌での掲載に留めていては、人材確保や知名度向上の視点ではなかなか難しいと思います。
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――「バシくんTV 100m走る人」のYouTubeアカウントを持つ、陸上男子100mの矢橋寛明選手が入社し、広報部に配属されたとのことですが、矢橋選手の情報発信の効果はいかがですか。
河野社長 3万人の登録者数を持つ媒体からの情報発信力は大きいですね。1本の動画あたり、5000~1万、多いと2万再生しますから。それだけの人々にキョウエイという会社を知ってもらえるわけです。そこから求人情報や会社のSNSも見てもらうことに繋がります。実際に、高校新卒の方はYouTubeでキョウエイを知り、わざわざ引っ越しをして入社しています。

陸上男子100mの矢橋寛明選手
陸上大会があると私にもみなさん気軽に声をかけていただけます。先日も高校1年生の生徒本人がキョウエイに入社したいと直接私にお願いされ、一緒にいた親御さんからも「よろしくおねがいします」と声をかけていただいたこともありましたね。
――キョウエイのYouTubeチャンネルではどのような動画を上げていますか?
河野社長 私をメンバーに加えた4人で、キョウエイ陸上部として初めて「4×100リレー」に出場するという企画を行いました。10月6日には、国立競技場でリレー競技に出場したのですが、とっても良かったですね。前日から東京に入り、合計3チームが走りました。終わったあとはみんなでお疲れさま会も開催して、陸上部に対する理解、スポーツの楽しさを知ってもらえたと思います。
【魂の走り!】リレフェス初参戦!陸上部と社長が国立競技場で爆走してきましたwwwww / YouTube(キョウエイTV)
――河野社長自身も走ってみていかがでしたか?
河野社長 リレー競技への参加を決めたあとから生活は一変しましたね。10月6日まで禁酒しましたし、今でも身体づくりのために週3のペースでジムに通って、坂ダッシュやトレーニングをこなしています。最近はやり過ぎて肉離れを起こしました。2025年のマスターズ陸上への出場を目標に、M50クラスで社長というカテゴリでは”日本一速い社長”を目指しています(笑)。

国立競技場で「4×100リレー」に出場(左が河野社長)
――InstagramやYouTubeとさまざまなSNSでの広報展開をされてきました。業界紙や求人雑誌などの紙媒体に依存している建設会社も多いですが、助言をいただければと思います。
河野社長 新聞や雑誌、テレビなどの情報の信ぴょう性は高いと思います。お子さんを持つ親御さんへの影響力もいまだに大きいです。ただ、どの会社に入社するかを決めるのは本人です。Z世代はSNSから情報を取っているので、採用という点で見ると、SNSで情報を発信していかないと情報が届かないんです。もちろん、公式HPだけでは広報効果は生まれません。広報や情報発信は、目的とターゲットを決めて、受け取る方々が何を情報収集のインフラとしているのかを考え、フォーカスして広告費を投入しないとムダ金になってしまいます。
その上で、予算に都合が付けば、親御さんやお客さま向けに新聞やテレビ、雑誌などの従来からのメディアに広告費を割くことは考えられると思います。ただ、手軽に駆使できるのがSNSですから、キョウエイでもYouTubeとInstagramがメインでの広報展開を進めています。とくにInstagramを通じて、面接の問い合わせが多いですね
若手の意見を取り入れる「Z世代イノベーションプロジェクト」
――話は変わりますが、Z世代の離職率は高いのではないかという意見もあります。
河野社長 いつの時代でも「近頃の若い者は・・・」と嘆く風潮がありますが、結局は若い世代の考えを理解することがポイントです。
たとえば、今は転職をすることがキャリアアップであるような風潮になりつつありますが、いい会社であれば長く続けること自体はまったく問題はないという声を若手社員からは多く聞きます。それに、Z世代だからといって優しくしすぎた結果、キャリアアップできないからと退職してしまうことも問題視されていますよね。これらの問題は、いずれも相手のことをちゃんと理解できていないことに起因するので、対話が大事だと思います。
会社や社会人はこうあるべきと当てはめようとすると、外れる人も出てくるので、Z世代のいいところを取り入れていけば、Z世代の離職は少なくなっていきます。
――キョウエイでは、若手が会社を作る「Z世代イノベーションプロジェクト」を始動しましたが、どのようなプロジェクトですか?
河野社長 Z世代が働きやすい環境を整えることと、今お話したように彼らの考えを理解していくことが今後、若手を採用するに当たりとても重要なヒントになります。そこでまずはZ世代や新入社員を集めて、「どんな仕組みや制度があったら働きやすいか」との理想を語ってもらい、それを具体的に提案してもらいました。狙いとしてZ世代は、「会社は変わらない」とあきらめる気持ちを排除したかったんです。会社はみんなでつくっていくものだから、みんなが意見を伝えてくれないと、正直会社は変わらないし、気が付かないことも話しました。7月に提案してもらった内容を8月に幹部会議で検討し、10案を採用して9月から実践しました。

「Z世代イノベーションプロジェクト」での会議
自分たちの意見を聞いて実行してくれる会社はそうそうありませんから、安心感にもつながると思います。会社に不満を抱くことはよくあることですが、思いを伝えることで会社は変わることが分かると、社員は希望を抱くようにもなります。このプロジェクトは毎年開催する予定です。
2040年で日本一の福利厚生を目指す
――建設会社は一般的に高齢者の権限が強いイメージがあり、若手への権限移譲を大胆に進めていることに驚きがあります。
河野社長 担い手の育成と自主性を育むことは大切です。責任を与えていかないと、人材は育たないので。人は任せられるとそれに応える気持ちが生まれます。何かを実現したときには、「よくやってくれたね」と称賛されれば、その人の貢献欲求も満たされるので、それがやる気にも繋がります。なので、権限委譲していくことはその人の自主性とやる気を生み出していく意味で重要な手段です。
私は18歳に創業しましたが、周囲の方から任せてくれたことがやる気に繋がりましたし、仕事もすごく楽しかったですね。その経験からいろんなことを任せて責任もって行動してもらうことで、自分もこの会社の一員だというエンゲージメントが高まっていきます。
――今後の会社経営の方針は。
河野社長 1993年創業以来、「共に支え合い、共に成長し、共に栄える」の経営理念を進めてきました。「2040年までに、日本一の福利厚生を目指す」という2040年ビジョンに向けて、全社員がこのビジョンの実現に向けてつとめていますし、そのために必要な売上、利益などの数字を達成していきます。それに対していかに、自分の人生が良かったと思ってもらうことが重要なので、そのために全員で理想の会社をつくる全員経営で臨む方針です。
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