研究室の雰囲気とランドスケープ分野の魅力
――研究室の雰囲気について教えてください。
坂本さん 研究室は、都市工学の中でもみどりやランドスケープを扱うので、ちょっと独特な雰囲気があります。学生は都市公園や緑化を研究する人もいれば、私みたいに空き地や経済に寄る人もいて、幅広いんです。共通のキーワードは「空間」と「人」かな。
研究室には、先生の影響で「自分の言葉で話そう」っていう空気があります。私も学生に「教科書通りの答えじゃなくて、君がどう思うか教えて」って言うようにしてるんですけど、なかなか難しいみたいです(笑)。
――坂本さんが考える、ランドスケープの魅力はなんですか?
坂本さん ランドスケープは、空間と人間を広く捉えられるのが魅力です。社会学や経済学、地理学みたいな視点も取り込めるし、20代で方向性が定まってなくても「いろんな関心を持って良いよ」って許してくれる学問分野なんです。
私の中では、自然があって、その上で人間が暮らしてるっていう感覚が強い。都市工学だと、経済を生むために「なにを仕掛けるか」って発想になりがちですけど、ランドスケープは「すでにそこにあるものを使わせてもらう」って考え方ですね。それに気づける環境が、研究室にはあると思います。
たとえば、鳥取の空き地にみどりを置くとき、「ここになにを建てるか」じゃなくて、「ここでどんな暮らしが生まれるか」を考える。そういう視点が、ランドスケープの面白いところなんです。
――その思想を建設業界にどう活かせますか?
坂本さん 建設業界って、ビルやインフラをつくるのが中心ですけど、みどりや空間の価値を考える機会はまだ少ない気がします。でも、ゼネコンや建設コンサルが、公園や広場の設計で「自然と人間のつながり」を意識したら、もっと豊かな空間ができると思うんです。
国交省や自治体のプロジェクトでも、環境やみどりをただ「入れる」んじゃなくて、「どういう暮らしを支えるか」を考える。たとえば、地方都市の空き地に小さな緑地をつくるプロジェクトがあったら、ゼネコンさんが地元の人と一緒に「ここで子どもが遊べるようにしよう」って考える。そういうプロセスが、持続可能な都市をつくるカギになるんじゃないでしょうか。
建設業界には、技術力と実行力があるから、ランドスケープの思想を取り入れたら、すごい可能性が広がると思います。緑や空間を通じて、人が集まる場所をつくってほしいですね。
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研究の幅広さとジェネラリストの視点
――坂本さんの研究は多岐にわたっていますが、どんなテーマを扱ってきたんですか?
坂本さん 空き地や都市経済が私のコアですけど、研究室では、キャンプ場の研究とか、都市農業の6次産業化プロセスの研究とか、いろんなテーマを扱ってきました。ランドスケープって、建築や土木みたいに「これ!」って決まった枠がないから、ジェネラリスト的な視点が求められるんです。
たとえば、キャンプ場の研究では、空間の使い方や人の動きを分析しました。キャンプ場って、都市の公園とは全然違うけど、人が自然とどう関わるかを考える点では共通している。都市農業の6次産業化も、農地の保全や経営的な側面だけでなくて、豊かな都市空間やライフスタイルづくりにどう影響するかを考えるんです。
建設業界だと、ゼネコンや建設コンサルはいろんなプロジェクトに関わるから、こういう幅広い視点が役立つと思うんです。一つのテーマに絞るんじゃなくて、いろんな角度から空間を見てみる。そういう柔軟さが、ランドスケープの強みなんです。
――幅広い研究を続ける中で、大切にしていることはなんですか?
坂本さん いろんなテーマを扱う中で、「自分の言葉で考える」ことを大事にしてます。先生の影響もあるんですけど、教科書や誰かの意見をそのまま言うんじゃなくて、「自分はどう思うか」を突き詰めるんです。
研究って、正解がないから難しいんですけど、それがおもしろいところでもあって。建設業界の方にも、プロジェクトを進める中で「自分たちの現場でなにができるか」を考える時間を持ってほしいですね。ゼネコンや自治体の現場って、ルールや予算に縛られがちですけど、ちょっと立ち止まって「この空間でなにが生まれるか」を想像すると、新しいアイデアが出てくると思うんです。
未来の都市へ――坂本さんの挑戦
――今後、どんな研究やプロジェクトを進めたいですか?
坂本さん 動かせるみどりのプロジェクトはもっと広げたいですね。建設現場や再開発の仮設空間で、気軽にみどりを使えるようにしたい。地方都市の空き地を活かす研究も続けたいです。鳥取みたいな場所で、空き地に小さな公園やコミュニティスペースをつくれたら、地元の人が集まるきっかけになると思うんです。
研究室では学生を指導してるので、彼らが自分のテーマを見つける手助けもしたい。私のコアは空き地や都市経済ですけど、学生には自由に空間やみどりを考えてほしいですね。建設業界ともっとコラボできたら、たとえば、ゼネコンさんと一緒に空き地を使った実験的なプロジェクトをやってみたいです。
あと、個人的には、鳥取の空き地を歩きながら、地元の人と話す時間が好きなんです。そういう小さな対話から、新しいアイデアが生まれることが多い。建設業界の方にも、現場の声を聞いてほしいなって思います。
――建設業界の読者にメッセージをお願いします。
坂本さん 建設業界は、都市の未来をカタチづくる仕事です。ビルや道路だけじゃなくて、みどりや空間を通じて、人がどう暮らすかを考えるのも大事だと思うんです。地方都市の空き地も、都心の屋上も、全部「可能性の場」です。
ゼネコンや建設コンサル、国交省や自治体の方々と一緒に、みどりや空間を活かしたプロジェクトをやりたいですね。空き地にみどりを置いて、子どもが遊べる場所をつくったり、都心のビルに動かせるみどりを入れて、人がホッとできる空間をつくったり。一緒に人が集まる持続可能な都市をつくっていけたら嬉しいです。
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