施工の神様 powered by 施工管理求人ナビ
  • 施工の神様とは?
  • 記事掲載・取材をご希望の方へ
  • キャリアを考える
  • インタビュー
  • 失敗を生かす
  • 技術を知る
  • エトセトラ
  • 資格を取る
  • 建設用語

資材搬送は人力からロボットへ。港大橋・揖斐長良大橋で実証された、川田工業の現場特化型AGVの実力

  • インタビュー
  • 技術を知る
公開日:2026.02.10
  • シェア
  • Tweet
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0 コメント
  • メールで共有

交通規制を「100%削減」。揖斐長良大橋での実績

EGmobileの実力は、港大橋に先駆けて導入された国土交通省近畿地方整備局の「揖斐長良大橋」(三重県桑名市)の補修補強工事で、すでに実証されている。揖斐長良大橋は三重県桑名市に位置し、国道23号(名四国道)の一部として、揖斐川と長良川に架かる橋梁である。長さは1,039.9m、14連の単純平行弦下路鋼ワーレントラス橋という構造だ。

この工事での課題は、国内有数の交通量があるため交通規制の影響が大きいこと、そして橋長約1kmの並列2橋という長大な施工延長において、約3.2万m2の吊り足場材や150kgの補強部材196個といった大量の資機材を運搬する必要があったことだ。

国道23号揖斐長良大橋の補修補強工事

国道23号揖斐長良大橋の補修補強工事

従来の橋梁への資機材運搬は、橋面からクレーンで荷下ろしを行う方式であったが、同工事のケースでは延べ100日間の交通規制が必要となり、吊り足場上を人力で長距離運搬する場合、推定約1,200人日の労働力が必要となる試算だった。そのため、実工事では橋面の交通規制が不要な荷取りの方式を採用。荷取りステージを設け、吊り足場上で橋梁全長の資機材搬送を実施することにした。

吊り足場の中に荷取りステージを設けた

吊り足場の中に荷取りステージを設けた

そこで「搭乗運搬台車」と「自動運搬台車」の2機種の自走運搬台車を自社で開発し、模擬足場上で段差、養生シート上や登坂などにおける積載走行性能を検証した上で実用化した。これがEGmobileの”初号機”であった。

搭乗運搬台車は、電動カートに平台車を連結したもので、最大積載量は500kgに達する。搭乗操縦とタブレット操作による遠隔操作が可能で、最大10枚(重量420kg・床面積31m2に相当)のパネル式足場の床材を搬送した。

搭乗運搬台車

搭乗運搬台車

一方、自動運搬台車は、前後各1対の電動クローラで操舵する最大積載160kgの平台車型AGVである。工事の補強部材を載せて足場上を走行し、足場吊りチェーン間や空頭650mmの既設桁下を通過できる低床かつコンパクトな車体で、リモコン操作と磁気テープ誘導による自動走行を実現した。

自律運搬台車

自律運搬台車

自走運搬台車2機の導入効果は劇的であった。社会環境面への効果として、橋面の交通規制を100%削減した点が挙げられる。公開情報に基づき社会環境や交通価値を推計したところ、渋滞車両約57.1万台、渋滞車両のCO2排出量約1,700tを回避したことになる。また、交通渋滞による経済損失の試算では約6.4億円の抑制効果が確認された。

生産性も大幅に向上した。交通規制を抑制した年度末の1ヶ月間に資機材供給を継続できたことで、作業可能月数は7ヶ月間から8ヶ月間に増加し、換算すると稼働率が14.3%も向上した。同路線の隣接工事と相互の工程に左右されることなく稼働率を維持でき、さらに交通規制および解除作業に費やしていた合計150時間の作業待機も削減された。また、従来の手押し台車による搬送では、積載150kgの台車の段差を乗り越える際の補助や、前輪の横滑りを軌道修正するための搬送補助者が必要で、搬送速度も相対的に遅かった。一方、搭乗運搬台車は操作者1人で搬送が可能で積載量も大きいため、搬送効率は約400%向上した。これにより、作業人員は約90%省人化された。なお、現在の運用では積載数量は最大積載荷重の70%程度であり、満積載に近付けて運用すればさらなる効果向上が見込まれる。

安全性については、橋面から主構外側へ荷取りする基本計画では、トラス斜材間にクレーンブームを挿し込む必要があったが、自走運搬台車の導入によりこれを回避できた。その結果、斜材への接触、重機転倒や隣車線の走行車両との接触事故のリスクが解消された。さらに、互いに死角となる橋面と吊り足場上との間で行っていた荷取り作業も減少し、施工の安全性が向上した。また、従来の手押し台車では、台車に隠れた前方床面が見えず、補助者も後ずさりで台車を引くため、つまずきによる転倒や接触災害のリスクがあった。これに対して自走運搬台車ではこれらのリスクがなく、台車を押し歩く身体的負担も解消されるといったメリットがあった。

「人の作業の省人化・効率化に効果があり、本来であれば通行規制により発生していた渋滞も回避できた」(池田氏)

このように、自走運搬台車を揖斐長良大橋の補修補強工事現場に導入したことで、社会的な環境・経済効果に加え、工事現場の生産性および安全性の向上効果を実証できた。ここでの自社開発と現場運用で得た経験が、港大橋で導入した「EGmobile」の開発につながったのである。

ちなみに、本現場での詳細内容については、土木学会の2024年度「全国大会第80回年次学術講演会」において、「自走運搬台車を用いた工事現場内の資機材搬送」というタイトルで発表された。

「力仕事はロボット、マネジメントは人間」の未来へ

開発を主導した3名は、実は土木系ではなくロボティクスの専門家である。もともとはグループのカワダロボティクスに在籍していたが、川田工業へ転籍し、池田氏が基本設計とマネジメント、三毛タッカー氏が電気系統、クリシュナムラ氏がソフトウェアを担当し、それぞれの専門性を生かしてプロトタイプを完成させた。

彼らが所属する「知能機械チーム」は、実用化を見据えた「製品開発チーム」や「事業支援チーム」とは異なり、未来を見据えた研究開発を担う部隊だ。今後は、自分たちだけで完結させるのではなく外部とも協業し、製品版の開発を加速させていくという。

「橋梁上での荷物の搬送は正直なところ、作業員にとって負担の大きい作業だが、誰かが担わなければならない。これからの建設現場は、力仕事はロボットに任せ、人間はそのマネジメントを担う。そんな役割分担ができる未来に向けて、開発を加速させていきます」(池田氏)

人材採用・企業PR・販促等を強力サポート!

「施工の神様」に取材してほしい企業・個人の方は、

こちらからお気軽にお問い合わせください。

«123
  • この記事をシェアする0
  • この記事をツイートする0
この記事のコメントを見る0
こちらも合わせてどうぞ!
甲子園球場が”選奨土木遺産”に! 2024年度は歴史を彩ってきた14件の施設が認定
甲子園球場が”選奨土木遺産”に! 2024年度は歴史を彩ってきた14件の施設が認定
(公社)土木学会(佐々木葉会長)は9月24日、2024年度「土木学会選奨土木遺産」として、「阪神甲子園球場・枝川橋梁」など14件を認定し発表した。これにより、選奨土木遺産は累計531件となった。 選奨土木遺産は、工学的機...
「”最も映える”橋梁写真ベスト5」 橋梁写真家が自ら、今年撮影した作品を選抜
「”最も映える”橋梁写真ベスト5」 橋梁写真家が自ら、今年撮影した作品を選抜
コロナ禍の1年間で撮影した作品の中から選ぶ「ベスト5」 以前、橋梁写真家の依田正広さんについて、『 「国内76万か所の橋を全部撮る」 土木素人が”橋梁写真”に魅せられたワケ 』という記事を書いた。 1年半ほど経ったあると...
「風化したDX」の再建。1日1〜2時間分も業務削減した安全書類DXの舞台裏とは
「風化したDX」の再建。1日1〜2時間分も業務削減した安全書類DXの舞台裏とは
『安全書類』にまつわる現場のストレスは極めて大きい [caption id="attachment_81706" align="alignleft" width="1200"] 中村建設の書庫。安全書類は、1現場だけでキ...
“全国でも類を見ない工事現場” 喜連瓜破高架橋架け替え工事の監理技術者に話を聞いてきた
“全国でも類を見ない工事現場” 喜連瓜破高架橋架け替え工事の監理技術者に話を聞いてきた
全国でも例がない工事現場。施工管理上のポイントとは? 前回、喜連瓜破高架橋架け替え工事について、阪神高速の現場監督員の大池岳人さんの記事を出した。今回は、施工業者(JV)の監理技術者である大成建設株式会社の藤本大輔さんに...

この記事を書いた人

長井 雄一朗
この著者の他の記事を見る
建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
資材搬送は人力からロボットへ。港大橋・揖斐長良大橋で実証された、川田工業の現場特化型AGVの実力 資材搬送は人力からロボットへ。港大橋・揖斐長良大橋で実証された、川田工業の現場特化型AGVの実力

施工の神様をフォローして
最新情報をチェック!

  • フォローする5388

現場で使える最新情報をお届けします。

  • 施工の神様
  • インタビュー
  • 資材搬送は人力からロボットへ。港大橋・揖斐長良大橋で実証された、川田工業の現場特化型AGVの実力
  • 施工の神様
  • 技術を知る
  • 資材搬送は人力からロボットへ。港大橋・揖斐長良大橋で実証された、川田工業の現場特化型AGVの実力

コメント(0)

コメントフォームへ

コメントする コメントをキャンセル


コメントガイドラインをお読みになった上で投稿してください。

email confirm*

post date*

あなたも施工の神様に記事を投稿してみませんか?
おすすめ記事
  • 【髙松建設】「古来の技術と新たな発想を融合する」世界最古の企業”金剛組”再生でベスト・プロデュース賞を受賞

    【髙松建設】「古来の技術と新たな発想を融合する」世界最古の企業”金剛組”再生でベスト・プロデュース賞を受賞

  • 点数稼ぎに走るのは「なんか違う」

    点数稼ぎに走るのは「なんか違う」

  • 「暗闇の先の光見て」コロナ禍の”希望のトンネル貫通写真”が心に響く

    「暗闇の先の光見て」コロナ禍の”希望のトンネル貫通写真”が心に響く

  • 「地元の人間の意地。ただ、それだけ」 家族を失ってもなお、愛する石巻の復興に命を懸けた現場監督

    「地元の人間の意地。ただ、それだけ」 家族を失ってもなお、愛する石巻の復興に命を懸けた現場監督

  • 建設業界をイヤになった主任技術者は”造園”へ急げ!

    建設業界をイヤになった主任技術者は”造園”へ急げ!

  • 人と機械はどう補完? これからの橋梁点検

    人と機械はどう補完? これからの橋梁点検

注目のコメント
  • 権力を振りかざす世間知らずの勘違い野郎どもは本当に消えていただきたいです。

    「○んでくれ」「くせーんだよ」 発注者からの脅迫・暴言集【実録】
  • 公務員なんて、甘ったれのわがまま人間の巣窟。特に、バブル世代にパワハラとかするのが多い気がする。

    「○んでくれ」「くせーんだよ」 発注者からの脅迫・暴言集【実録】
  • 34℃で湿度がどれくらいか判断出来ないが今日びの38℃超え猛暑に比べればまだまし。 皆が言う体調管理なんかで対応出来る範囲を超えている。 朝一番から警戒レベルMAXが普...

    最高気温36℃の”猛暑日”。舗装工事は中止すべきか?【熱中症対策】
  • 勝手に喫煙休憩するな→即飛び蹴り シュールなコントみたいだな

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 辞めていいんじゃねーか? 下請けの奴隷ならともかく、大手ゼネコンの現場監督ならやりたい奴いくらでもいるだろw

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 若くても無能なら要らない

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • そんな無能はやめた方が現場のためだよ

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 飛び蹴りは普通に罪にならないか?

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 休憩するなら水分取るだけで充分なのにねwタバコまで吸いに行き注意されると即飛び蹴りとはヤニ中毒は危険だな

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 結局本人の申告によるものでしかないので、無理がありますよ。 すべての作業員さんにカメラつけて録画でもするならば別ですが。 公共工事にしろ民間工事にしろ、昔からすれ...

    「チェックシートで熱中症を防ごう!」 それができたら誰も苦労しない
  • 熱中症チェックシートは本当に不毛。 挙句の果てに、それを書いていても熱中症が発生したら「管理が甘かったからだ!」といってチェック項目を増やしたり、記入内容の真偽を...

    「チェックシートで熱中症を防ごう!」 それができたら誰も苦労しない
  • 建設業界のパワハラと言うよりは特定の会社の特定の上司のパワハラ。

    元自衛官が建設業界に転職したら、”パワハラの巣窟”でした
  • 返信した人の日本語もわかりません。 やり直し

    元自衛官が建設業界に転職したら、”パワハラの巣窟”でした
  • 建設業界って 何処に業界のパワハラをかいてるの? やり直し

    元自衛官が建設業界に転職したら、”パワハラの巣窟”でした
  • 所長が部下の人間性を否定するような現場がうまく回るはずがない。 現場は信頼関係で成り立っている。 現場の雰囲気は主に所長がつくりあげあてしまう。そのような管理職が...

    65歳以上と外国人は、全員”安全弱者”のヘルメットバンドをつけろ!? 納得できない話
  • この著者は神様とは思えないです まず、職人は工程を縮めたいんじゃなく無駄が嫌いなんです。それは管理者もだと思いますよ。 無駄=損害ですからね。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • スーパーゼネコンの監督とは仲良くなれないな。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • まったく現場の事を理解していない! もっと色んな事を経験して、勉強して下さい。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • 不仲は横柄で生意気ななゼネコンのセコカンが原因だと思いますけどね。 舐められない様な教育受けているので仕方ない所もありますが。 職人さんも見栄えよりも工数へらして...

    「不仲説」 現場監督と職人
  •  不仲なら発注しない、請負わない。 お互い仕事できなくなればいい。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • キャリアを考える
  • インタビュー
  • 失敗を生かす
  • 技術を知る
  • エトセトラ
  • 資格を取る
  • 建設
    用語
【PR】施工管理技士の転職に特化した求人サイト
施工の神様ロゴ
  • 施工の神様とは?
  • 原稿募集
  • 取材ライター募集
  • 運営会社
  • PR・プレスリリース
  • プライバシーポリシー
  • 広告掲載について
  • お問い合わせ
Copyright © 2026 WILLOF CONSTRUCTION, Inc. All Rights Reserved  リンクフリー
施工の神様