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ただつくるだけでは生き残れない。地域ゼネコンが請負から脱却し、「まちづくり企業」へと進化すべき理由

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公開日:2026.03.12
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「PFIは大都市のもの」は過去の話。年間1,000件の巨大市場に

具体的には、PFI法に基づき民間資金を活用して公共施設を整備・運営する案件が急増しており、ここ数年は年間1,000件を超えている。「おそらく2025年度もこの1,000件ペースのトレンドは続くだろう」と矢部氏は予測する。

PFI事業の実施状況(内閣府)

PFI事業の実施状況(内閣府)

ここで重要なのが、「PFI/PPPは大規模自治体の話ではない」という点だ。矢部氏は内閣府のデータを基に、2013年度と2023年度のPFI案件の変化を比較した。人口20万人以上の市区町村では、実施団体数が52から76へ、件数は82件から215件へと格段に増加した。注目すべきは小規模自治体の伸び率だ。人口10万人~20万人の規模では実施団体が39から73へ、件数は52件から127件へ倍増。さらに人口10万人未満の小規模自治体においても、実施団体は90から256へ、件数は104件から297件へと約3倍の伸びを見せている。 今や、指定管理者制度やPFI手法を用いて民間の活力を導入することは、自治体の規模を問わず「時代の趨勢」となっているのだ。

また、地方自治体にとっても「まちづくりにおける公的不動産(PRE)」の活用は大きなテーマである。PREとは、国や自治体が所有する土地・建物を指す。PREを民間に開放することで地域の経済活動や人的交流が活発になる。「既存ストックの利活用とまちづくりはセットになっている」と矢部氏は指摘しつつ、「行政から指示されたとおりにつくる地域ゼネコンから脱皮して、自ら仕事を生み出すフィールドとして、PREの活用は可能性に満ちている。『ものづくり・運営・維持管理』のノウハウを持つ地域ゼネコンに新たなビジネスチャンスになる」と公的不動産の再活用には地域ゼネコンの挑戦が不可欠と語る。

「2030年問題」を解決するのは、官民の役割分担

地域建設業におけるもう一つの深刻な課題が、人材不足だ。長期的な投資減少と高齢化により就業者数は減少し続け、技術継承や災害対応力の低下が懸念されている。有効求人倍率は約5倍と全産業平均を大きく上回り、正社員の過不足状況を示す「正社員過不足判断D.I.」も高止まりが続く。

この状況は、2030年に向けてさらに加速する。パーソル総合研究所と中央大学の「労働市場の未来推計2030」によれば、2030年には7,073万人の労働需要に対し、供給は6,429万人にとどまり、「644万人もの人手不足」が発生すると予測されている。

2030年には644万人の労働者が不足すると推計 (パーソル総合研究所)

2030年には644万人の労働者が不足すると推計 (パーソル総合研究所)

矢部氏はこの危機に対し、視点を変える必要性を説く。 「今と同じ働き方を続けていては、圧倒的に人が足りなくなるは明らかだ。解決策は『やらなくていいことをやめる』、そして『自分でなくていい仕事は外注化する』ことだ。これは行政も同じだ。行政サービスの外注化が進む背景には、行政側の労働者不足もある。行政の業務を民間が引き受けることで、地域に新たな経済循環が生まれる。民間のサービスとして実施することで収益を生み、地域を元気にする」と、地域ゼネコンによる公民連携への挑戦が、地域の活性化につながると強調した。

地域に人を呼び込む、澤村・加和太建設の先行事例

続いて矢部氏は、地域ゼネコンが「若手から選ばれる産業」へと変貌するための具体的なモデルとして、先行する2社の事例を紹介した。

1社目は、滋賀県高島市の「株式会社澤村」だ。2025年9月期売上高68億円の同社は本社の近くで、地域産品や小売店を巻き込んだ「マルシェ(市場)」を立ち上げた。「暮らしをゆたかにする」をコンセプトに毎年10月に開催されるこのイベントは、単なる商業活動を超え、地域コミュニティ形成の場として定着している。建設会社が建物だけでなく「まちの賑わい」そのものをデザインした好例だ。この成功により、地域に活力を生み出す事業のオファーが舞い込むようになったほか、採用面でも劇的な変化が起きた。建設技術者だけでなく、地域づくりやコミュニティ運営に関心を持つ多様な人材が集まるようになり、「採用に困ったことがない」と言えるほどの人気企業となっている。

株式会社澤村のマルシェ

株式会社澤村のマルシェ

2社目は、静岡県三島市の「加和太建設株式会社」だ。「世界が注目する元気なまちをつくる」を目標に掲げ、建設業に加え、宅地開発、商業施設運営、公共施設整備など多角的に展開している。特筆すべきは、地元初のPFI事業として参入した「道の駅 伊豆ゲートウェイ函南」の運営だ。年間来場者数190万人を超える人気施設へと成長させた背景には、建設業の枠を超えた取組みがある。PFI参入にあたり、物販や飲食サービスを担う人材を自社で新たに雇用し、ソフト面も自前で展開したのだ。「提供されるサービスまで自社で作り上げ、成功させた点に大きな意義がある」と矢部氏は高く評価する。

加和太建設が運営する「道の駅 伊豆ゲートウェイ函南」

加和太建設が運営する「道の駅 伊豆ゲートウェイ函南」

「スモールコンセッション」が地域ゼネコンの未来を拓く

講演の総括として、矢部氏は国土交通省が推進する「スモールコンセッション」について解説した。これは、廃校や古民家など地方自治体が保有する小規模な遊休不動産を、民間事業者の創意工夫で再生させる官民連携事業だ。事業規模は数億円から10億円程度と小規模だが、PFI法の枠組みにとらわれず、あらゆる手法で空間を経済活動やコミュニティの場に変える取組みである。 矢部氏はこれを、経済学者シュンペーターが定義した「イノベーション(新結合)」になぞらえて評価する。

出典:第3回 スモールコンセッションの推進方策に関する検討会(2024年3月)

出典:第3回 スモールコンセッションの推進方策に関する検討会(2024年3月)

「利活用の新提案」や「官民の役割の逆転」という観点において、地域を知り尽くした地域ゼネコンや不動産業者こそが、最も強みを発揮できるプレイヤーである。こうした事業を通じて、街が元気になれば、地域ゼネコンの持続可能性も高まる。さらに、澤村や加和太建設の事例が示すように、地域課題の解決や未来創造に貢献するまちづくり事業は多様な人材を惹きつけ、採用難の解決にも直結するだけでなく、次の事業につながる好循環が生まれる。この2社は、まさに地域ゼネコンが目指す「新・建設業」を実践する企業と言える。

「地域ゼネコンが持続的に仕事を獲得するためには、公民連携や民間活用プロジェクトへの参画が肝要であり、それが人材採用という大きな果実にもつながる」。矢部氏はそう結論づけ、地域ゼネコンが新たな領域へ挑戦する重要性を強調した。

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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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コメント(1)

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  • - 2026/03/12 19:07

    税金が安くなるなら賛成!

    誰も利用しない施設でお金だけかかる物反対!

    騙されて倒産する地場ゼネコン

    騙されてお金を吸い上げられる市民

    必要なものに必要なお金を払うのならみんな幸せですねw

    順番を間違えると大変ですよ道がないところに建物立てたら困らない?
    後から道を作っていたら収益に差が出ませんか?

    返信する 通報する

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