職人との信頼関係の構築
――困難なハードルが山積する現場において、現場を指揮する監督は職人たちとどのように連携を図られているのでしょうか。
澤村氏 どのプロジェクトにおいても初期段階は、工程管理や品質管理の前に、まずは日々のコミュニケーションを通じて信頼関係を築いていくことに意識を置いて取り組んでいます。
――とくに木造の中大規模木造建築となると、職人にとっては未経験であるケースも多く、納まりが理解しづらいこともあるのではないでしょうか。
澤村氏 普段は公共工事やS造などをメインに施工される職人さんにとって、当社が手掛ける中大規模木造建築は新しい取組みとなります。そのため、進め方を丁寧に共有していくことが重要だと考えています。複雑な納まりを曖昧なまま進めてしまうと、品質の低下や、思わぬトラブルに直結しかねないからです。
そこで、「ここはこういう納まりにする」という具体的な図解や3Dのスケッチを自ら描き、現場に持ち込んで視覚的に共有します。職人さんが迷いなく手を動かせる環境を整えること。技術的に高度な要求をするからこそ、コミュニケーションの解像度を極限まで高め、対話を重ねることで円滑な現場運営につなげています。
――そうした対話は現場運営にどのような影響をもたらしていますか。
澤村氏 コミュニケーションを重ねながら関係性を深めることは重要ですが一方で、品質や安全を担保する為には一定の緊張感も欠かせません。そのバランスを意識して現場運営を行うことで、互いに信頼しながら役割を果たす、安定したチームとしてプロジェクトを進めることができたと感じています。
中大規模木造建築のさらなる普及を目指して
――酒蔵が地域にもたらす価値は大きいと思いますか。
佐藤氏 330年以上という由緒ある歴史を持つ酒蔵を、地域の皆様にどう受け入れていただけるか。周辺の風景や地形といった歴史的コンテクスト(文脈)を残しつつ、現代の中大規模木造建築の技術をいかに融合させていくか。何より、お施主様の想いをどう具現化するかを大切に、様々な試行錯誤と新たな試みを組み入れていきました。
完成した建築を見たお施主様が心から喜んでくださり、地域の方々が誇りに思ってくださる姿を見たとき、我々が提供しているのは単なる「ハコモノ」ではないのだと強く実感しました。
この酒蔵が将来、地域の方々の交流の場となり、あるいは国内外からの日本酒ファンの観光拠点として地域に深く根ざしていくことを想像すると、ものづくりに携わる者としてこれに勝る喜びはありません。
――建築事業部ではどのような人材を求めていますか?
佐藤氏 第一に、木造建築に対して強い関心と挑戦心を持っている方です。従来、S造やRC造のみを専門に扱ってきたからといって木造を敬遠してしまうのではなく、「新たな可能性にチャレンジしたい」という意欲を持つ方を強く求めています。
現場の職人とも緊密にコミュニケーションを図り、協調性を持って前向きに取り組める人財が理想ですね。 現在、当事業部は急速に拡大しており、多くのゼネコン出身者が即戦力として入社し、現場の最前線で活躍しています。
今後は木造と他構造を組み合わせた「ハイブリッド建築」の需要がさらに高まっていきますが、これらを成立させるには、S造やRC造における高度な知見が不可欠です。既存の構造に関する確かな技術力をベースに持ちつつ、木造への深い探究心を併せ持つような、幅広い視野を持った人財と共に、これからの市場を切り拓いていきたいと考えています。
――中大規模木造建築の分野において、御社は今後どのような方向を目指していくのでしょうか。
佐藤氏 今後の事業展望として強調しておきたいのは、ターゲットや用途を限定するつもりはないという点です。私たちは「中高層の木造マンション」や「特定の商業施設」といった枠にとどまることなく、中大規模木造建築の可能性を追求し続けます。
今回のような酒蔵のリニューアルはもとより、教育施設や福祉施設、宿泊施設に至るまで、純木造・ハイブリッド建築を問わず、多様な用途に対して当社の知見をフル活用し、幅広く挑戦していく方針です。
あらゆるプロジェクトから得られる知見を蓄積し、フィードバックしていくことこそが、次世代の建築事業部を形作る力となります。今回の「佐嘉酒造」で得た経験も、我々の重要な財産として次の現場へ確実に継承していきます。建築事業部内では、各チームが互いに刺激し合いながら、高いモチベーションを持って新たな領域の開拓を楽しんでいる、そんな活気に満ちた風土が育まれています。
私たちが目指すのは、ただ建築を建てることではありません。これからも木造建築の可能性を切り拓いてまいります。
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