週休2日工事に成功した日鋪建設の現場代理人
「週休2日制確保モデル工事」の取り組みを拡大している東京都建設局。同第二建設事務所が発注した「野川河床整備工事(その10)」では、受注者である日鋪建設が見事に工事中の週休2日を確保することに成功しました。
そこで同工事の現場代理人兼監理技術者を担当した藤嶋延尚さん(日鋪建設関東支店首都圏出張所専門所長)に、建設現場で週休2日を確保できた理由や、週休2日実現のための課題、改善点などについて話を聞いてきました。
「週休2日制確保モデル工事」を成功させた方法
施工の神様(以下、施工):担当した「週休2日制確保モデル工事」はどんな工事でしたか?
藤嶋延尚(以下、藤嶋):「野川河床整備工事(その10)」という工事で、多摩川の支川である野川について、1時間あたり50㎜の降雨にも対応できるようにする工事でした。河床の土砂を取り除き、既設緑化ブロック保護のため両岸に石積み護岸工を施しました。河床は現況の澪筋を尊重し、植生の早期回復を目指しました。また「野川河床整備計画」に基づいて野川を昔風に戻し、憩いの場とする工事でもありました。
施工:工事開始時に正直、週休2日は可能と思いましたか?
藤嶋:この野川河床整備工事は、その6-2工事から担当していたので、工期面から見ても週休2日の確保はキツいと予想していました。
施工:どうやって週休2日を確保しました?
藤嶋:日曜日を完全休日として、それ以外の1日をフレックス休日として設定しました。そして現場工程表を作成し、週休2日を確保できるように人員配置しました。これに伴い現場技術者の増員も行いました。
施工:稼働人数は何名?
藤嶋:現場全体では20名で、技術社員3名が常駐していました。
施工:雨の影響で工期は遅れなかった?
藤嶋:降雨で増水した場合、下流からポンプで水をくみ出しますが、それで1日の工事中断を余儀なくされます。そこはウェザーニュースなどの天気サイトを活用し、降雨による現場への影響を最小限にとどめる対策も講じました。降雨になると作業員は完全に休みになります。
「野川河床整備工事(その10)」の工事概要
■工事施工:L270m
■河川土工:掘削6530m3、土砂運搬6730m3、基面整正311m2、護岸工コンクリートブロック護岸408m2、石積護岸993m2、平場784m2
■構造物撤去:構造物取りこわし52m3、かごマット撤去258.8m
■工事区間:東京都世田谷区成城3丁目~喜多見8丁目
■工期:2016年10月17日から2017年3月14日
技能者の高齢化・人手不足も課題
施工:週休2日を確保する上での課題は何でしたか?
藤嶋:やはり降雨による工期の遅れは心配材料でした。住民都合による家屋調査の日程調整で工事着手が遅れたことも課題です。また、自然石をハンマーで割って積み上げていく石積み特殊技能者が高齢化し、年々人数が減ってきているので、その人員確保にも苦労しました。
施工:他の現場との間で、特殊技能者の奪い合いが起きる?
藤嶋:「野川河床整備工事」は野川をより自然に戻すための工事だったので、石積み技能者を増員できれば、週休2日を確保する上でも望ましいと考えましたが、人手不足で難しい面もありました。
施工:「週休2日制確保モデル工事」に対する下請業者の反応は?
藤嶋:下請業者には「週休2日制確保モデル工事」であることを説明していたのでご理解いただけましたが、建設職人は日給月給のため、やはり日曜日以外が休日になると収入面で厳しいと言う意見はありました。建設職人は個人事業主が多く、請負で仕事をしている方も多いので、収入確保と週休2日を両立する難しさを実感しました。ただし、ゆくゆくは週休2日が定着すればいいと思っています。
施工:藤嶋さんは監理技術者としてお忙しいでしょうが、週休2日ですか?
藤嶋:はい。週休2日です。会社としても働き方改革の推進で工夫して、週休2日制の確保と残業を減らす方向で進んでいます。工事全体では週休2日は工夫次第でできると思いますので、今後も「週休2日制確保モデル工事」があれば、ぜひチャレンジしていきたいです。
施工:一部の大手ゼネコンはプレミアムフライデーを実施していますが、御社はいかがですか?
藤嶋:そこまではさすがに難しいですね。
「東京都河川局長表彰」を受けた「野川河床整備工事(その8)」
施工:藤嶋さんが土木施工管理技士になった動機は?
藤嶋:大学の造園学科を卒業したので、土木や造園など土に関わる仕事に携わりたいという思いから、北海道の土木工事会社に入社しました。その会社は「土木施工管理技士を増やしたい」という意向だったので、私も土木施工管理技士の資格を取得することになりました。
施工:土木業界のイメージは悪くなかったですか?
藤嶋:たしかに世間的には良くなかったですが、つくったものが残るという喜びには変えがたいと思いました。
施工:北海道の会社から転職し、今は東京で日鋪建設に勤務しているわけですが。
藤嶋:北海道の土木工事会社に勤務しているときから、降雪期には日鋪建設へ応援に行くことが多く、その後、北海道は不景気になってきたため、転職してお世話になることにしました。
施工:これまでの施工管理人生で何か失敗したことはありますか?
藤嶋:旭川の旭山動物園につながる道路工事で失敗しました。道路延長はそれほど長くない現場でしたが、工程管理が甘く、水道工事会社やガス工事会社との段取りが上手くいかず、工程に遅れが出てしまいました。最後は残業で工期の遅れを取り返しましたが、みなさんに迷惑をかけたことがあります。
施工:これまでの施工管理人生で忘れがたい工事は?
藤嶋:この「野川河床整備工事」ですね。その6-2〜10工事を担当したので、自分にとっても思い入れのある工事です。その8工事では、平成27年度東京都河川局長表彰を受けました。工期的にはぎりぎりでヒヤヒヤしましたが、表彰されたのは嬉しかったです。日鋪建設は環境保全工事分野でよりよい環境づくりを目指しているので、「野川河床整備工事」は日鋪建設の代表作品の1つでもあり、その工事に現場代理人・監理技術者として携わることができて誇りに思っています。「野川河床整備工事」は、さらに延伸して工事が進められます。
若手技術者には優しく指導
施工:日鋪建設はどのような建設会社ですか?
藤嶋:河川、砂防、道路などの公共事業を中心に、土木施工を専門としている会社です。最近は、民間の宅地造成や、マンション、工場、物流センターの周辺工事、土地改良などの環境保全工事なども幅広く手がけています。
施工:株式会社NIPPOと関係ありますか?
藤嶋:株式会社NIPPOの子会社です。
施工:女性の新入社員は増えていますか?
藤嶋:昨年は1名、今年は3名の技術者が入社しています。「野川河床整備工事(その10)」は担い手育成の工事でもあり、若手社員を指導する現場でもありました。
施工:若手技術者の指導で心がけていることは?
藤嶋:親子ほど歳が違いますので、手探り状態というのが本音です。
施工:若手に望んでいることは?
藤嶋:すべての工事に言えることですが、安全は何よりも優先します。同時に、施主が決めた工期内で工事を終わらせるため、粛々と1つ1つ丁寧にこなしていくことが良き施工管理技士だと思います。派手さは決して必要ありませんが、仕事に対しては誠実に向き合って欲しいと願っています。
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