土木が面白くなる建設会社のインターンシップ
その女子学生は休憩時以外、職員と一緒にずっと現場に出ていた。作業員が何をやっているのか、現場管理とはどういうものなのかを、できるだけ包み隠さず見せた。測量作業も体験させた。実地では測量はどうやっているのか、学校の実習が現場でどう役立っているのかを体験できる良い機会だ。
暑い夏の日差しの下、ずっと屋外で現場管理をするのは思っている以上に大変だと体感しただろう。測量では自分で現場を歩き回り、器械を据え付け、計測する。一ヶ所終わったらすぐに次、次と移動する。結構キツいものだが、そういう面もできるだけ学生に体験させた。しかし、その女子学生は活き活きとして、こちらが思っている以上に精力的に動き回っていた。屋外での仕事が好きなのかもしれない。
もちろん、土木の現場には、楽しい面もたくさんある。モノが少しずつ形になり、出来上がっていく様は、他の業種ではなかなかお目にかかれない。土木の現場ではそれを実際に眺めることができる。
また、学校での座学が現場でどう使われているのか、コンクリートはどうやって打つのか、学校で勉強した実験は実際の現場ではどうなっているのか、構造力学や土質工学などは現場でどんなことに役立つのか、などがわかってくると、土木はどんどん面白くなってくるものだ。
建設業にマイナスのインターンシップ
しかし、企業は学生に対して、とにかく良いところとか楽しそうなところを中心に見て欲しいと考えがちである。会社とか業界が発信する情報は、キラキラしたものや光が当たっているところがとても多い。人手不足の折で、建設業界では「猫の手も借りたい」という状況を各所で実感できるようになっているので、そういう面を見せたい気持ちはよくわかる。
一方で、学生はバカじゃない。私たちが思っている以上に賢い。私が考えている以上に周りを、世の中を見ている。ネガティブな面を隠そうとしたって、すぐバレる。キラキラしたところをたくさん見せたって、「そんなことばかりじゃないよね」ってなるのである。
先ほどのような事故とかトラブルなんて、見せたくないだろう。会社に対してイメージダウンにつながりかねないからだ。だからこそ、見せるべきだということも言えるのではないだろうか。
インターンシップは、実は至高の情報発信だ。言葉だけでなく、実際に自分の目で見て、耳で聞いて、そして考えながら接することができるからである。学生はなぜ、インターシップに来るのかというと、建設業の良い面だけじゃなく、良くない面も見たいからじゃないか、と私は考えている。実際に就職した際、「こんなはずじゃなかった」という想いを抱くのを嫌っているように思うのだ。
どの業界、どの会社であろうが、良い面があれば悪い面もある。光があれば影があるように、必ずしも「それってチョット」って感じることはいくつもあるものだ。それを隠してしまうのはとてももったいないことだし、それが建設業界の情報発信に表れているように思える。
それは会社のホームページや建設専門紙を見てもわかると思う。わが社はこれだけ女性技術者を採用してます!福利厚生、これだけ充実してます!男女平等に育児休暇制度、導入してます!というアピールはよく見られるが、実際に行動に起こしている人がどれくらいいるか。制度だけあって活用はさせない!なんてことになっていないか、現場管理ってほんとに女性でもできるのか、というのは、そこに飛び込まないとわからないことだ。