“1円を争う世界”で、心痛が絶えない日々
「僕ら、おたくらからそんなにお金もらってないですよ。悪いけど、今回の見積依頼は無かったことにして下さい。ただでさえ時間がないのに、そんな細かい所まで見きれません。」
――これは、中小ゼネコンの見積部で働いていた際、官公庁の入札案件の見積を依頼していた業者が期日までに見積書を送ってこなかったため、業者に催促の電話をした時にとあるメーカーの見積担当者に言われた言葉である。
取り付く島もないとは、まさしくこのことだろう。積算・見積期日が短い中で、細かく算出していくことが求められるので、担当者のイライラが募る気持ちも分かるのだが…。
一方的な交渉決裂に泣きそうになりながらも、恐る恐る上司に相談することに。斜め向かいの席に座っていた上司は、私が電話を切るなり、状況を察して苦笑しながらこう言った。
「ああ、いいよいいよ。うちの見積部とあの会社の担当者、大昔にやり合ったことがあるからね。元々高い業者だし、気にしなくて良いよ。悪かったね。」
「いえ、、、こちらこそ、お役に立てず申し訳ありません、、、。」
実は、ゼネコンで見積業務をしていると、こういうことはあまり珍しくない。
1円でもコストを下げて見積金額を算出し、工事を受注したい我々ゼネコンサイドと、できればライバル業者よりも安い見積金額を提出して採用されたいが、同時にこれ以上は見積金額を落としたくない業者サイド。常に”1円を争う世界”だ。
おまけに、こちらで苦労してやっとの思いで積み上げた見積は、査定会議でお偉いさんから時として叩かれる。業者にあまり強く出られない私のようなタイプの人間は、常に心痛が絶えない仕事だ。
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頑張りたい気持ちとは裏腹に、取引先から心配の声
当時勤めていた中小ゼネコンの会社は、元々、官公庁案件にはあまり強くなかった。大手ゼネコンの一式業者として請け負うことが多かったからだ。
仮に、自社で運良く落札できても、赤か黒かで言うと、竣工段階にはほぼ赤に近い結果になることがほとんどだった。
「○○さん(当時勤めていた会社名)、今回は無理しないほうが良いんじゃないですかね。頑張りたい気持ちはそりゃ分かるけど、、、しんどいだけですよ。」
非常にお世話になっていた住設の代理店担当者が、心配してこんなことを言ってくることもあった。
当時の私は、「ありがとうございます。でも、やはり貴社のためにも、弊社が絶対に受注するつもりで全力で見積を出させていただきます!」と返答するのが精一杯だった。
メーカーには勝てないね。
あと、施工が赤字になるのは役所の単価が低いから。
奴隷の世界だよね。
近年特に役所単価と実勢単価に乖離がある。
私は積算、購買部で、1円単位で切詰めてほしくない。