総合建設機械レンタルの株式会社アクティオ(小沼直人社長)は、ソフトバンク株式会社(宮川潤一社長)と協業し、低軌道衛星ブロードバンドインターネットサービス「Starlink Business(スターリンクビジネス)」の機材レンタルを2024年5月22日から開始した。
「Starlink Business」は、法人や自治体のニーズに特化したサービス。オンライン会議やビデオ通話など大容量のデータ転送を伴う場面でも高品質なインターネット環境の確保を実現する。災害時などに通信の中断が起こった際でも、「Starlink」の衛星ネットワークを活用し、ビジネスの継続や迅速な通信回復の支援が可能だ。このサービス導入で、建設現場の「インターネットにつながらない」問題を解消できる。
今回の業務提携で、ソフトバンクの「Starlink Business」とアクティオのレンタル機械・資材をパッケージ化し展開。ソフトバンクの通信キャリアとしてのネットワークインフラの強みと、アクティオのレンタル会社としての顧客基盤の強みの双方を生かすことで、新たなビジネス展開を展望できる。
アクティオは、2024年12月11日~13日に開催した「JAPAN BUILD-建築の先端技術展-第4回 建設DX展 東京」に出展し、初日に営業本部 レンタルDX営業部主事の山岡久恵さんが「アクティオが創る未来、建設現場DXの革新事例」をテーマにセミナーを開いた。同セミナーでは、「Starlink Business」による通信インフラ整備をはじめ、パートナー企業とのアライアンス構築により、建設現場のDXを推進する内容を公開。就労者減少に対応する建設機械管理サービスなどを通じ、業界の競争力を強化する革新事例を紹介した。
レンタル+コンサルティングの「レンサルティング®」を展開

アクティオ営業本部レンタルDX営業部主事の山岡久恵さんが「アクティオが創る未来、建設現場DXの革新事例」をテーマにセミナーを開催
山岡さんは、大学卒業後、建設業界のレンタルビジネスに関わり、2021年4月に株式会社アクティオに入社。エンジニアリング事業部通信計測部での機械手配・事務業務を経て、建設業界向けのレンタルサービスの経験を活かすべく、2024年1月より営業本部に新設されたレンタルDX営業部に異動。新設部署は、最新の技術を活用できるサービスの構築、建設業界でのDX推進窓口の一本化を図ることが目的だ。現在、建設業界向けのDXサービスの企画、立案やプロダクト業務に携わるほか、最新技術を活用できるサービスの構築・販促活動を行っている。プライベートでは、週末に都心を散歩することが好きで、お酒をこよなく愛す一面も。
講演では、アクティオが取組むDXや顧客へのDXサービスの提案を紹介した。内容は、①会社紹介から建設業界の現状と課題②2024年問題で取組んでいるサービス概要③デジタルテクノロジーをいかに現場に導入していくか④昨今、生成AIのもたらす影響⑤インパクトが大きくなる中でアクティオの取組みについて⑥現場に導入したデジタルツールの紹介の6点のカテゴリーに分けて解説した。
アクティオは1967年1月に設立し、その歴史は1台の水中ポンプを修理し、修理期間中に代替の水中ポンプを顧客にレンタルしたことから始まった。2023年12月期の連結売上は3,400億円を越え、2025年1月時点では、国内のグループ会社は36社を、国内421ヶ所の営業拠点を持ち、工場やセンターは150ヶ所を有する。海外拠点では、アジア・太平洋地域にアクティオタイランドを始め、7拠点を設置している。

「JAPAN BUILD-建築の先端技術展-第4回 建設DX展 東京」でのアクティオのブース
今や建設業界へはレンタル業務に留まらず、コンサル業務も展開中で、両者の業務を合わせた造語で「レンサルティング®」を推進している。社会的課題の対応の一つとして、現在、全国441市区町村(2025年1月末時点)の自治体と災害協定を締結。災害時に迅速かつ安定的な機材の供給ができるよう、地方自治体と関係づくりを構築中だ。
そんな中、日本は急速に人口が減少し、少子高齢化が進み若手の担い手確保が厳しい情勢にある。建設業界だけではなく多くの業界で就労者が不足。建設現場の就労者でみると、2023年には55歳以上が36%で、29歳以下が12%となり、全産業と比較し高齢化が著しく高い状況だ。これから10~20年の間に、多くの熟練作業員が引退を迎えるため、労働力の供給がさらに厳しくなる情勢だ。
建設業界が持続可能に発展していくためには、デジタル技術を活用した効率化が肝要だ。近年、インフラの老朽化対策や都市再開発の需要も高まることから建設業界の就労者減少は多大な影響を及ぼすことで対策が急務だ。テクノロジーの進化で、労働環境が変化しつつある中、労働者が安心して働ける環境づくりと持続可能な建設業の実現に向け、アクティオはさまざまなデジタルツールを提供中だ。
さらに2024年4月には働き方改革関連法案が建設業にも適用し、労働者の残業時間の規制や休日の取得ルールを整備。いわゆる「建設業の2024年問題」が本格的にスタートし、現場での作業量を全体的に減らす義務が生じ、同じ作業員数では現場を回すことが困難になり、人材補充とスケジュールを調整する必要性が生じた。特に建設現場での作業はデジタル化が難しく、他産業と比較し、遅れている面もある。その分、参入障壁が築かれており、アクティオのようなレンタル会社が建設現場にマッチするデジタルサービスの導入のチャンスでもあった。
土木・建築工事向けに「Starlink Business」の機材レンタルサービス開始

ソフトバンクと協業し、「Starlink Business」の機材レンタルサービス開始
建設現場では多くのデジタルツールの活用が進んでいるが、手軽に迅速に構築するための手段として、法人向けの低軌道衛星ブロードバンドインターネットサービス「Starlink Business」(スターリンク ビジネス)」をレンタル採用した。「Starlink Business」のメリットは、携帯電波が届かない山岳や港湾地帯、建設中の高層ビルの上層部にインターネット環境の構築が可能になる。衛星通信は非地上系ネットワークNTN(Non Terrestrial Network)と呼ぶ。地上に設置したアンテナが低軌道通信により、高速で大容量の通信を実現する。地上系ネットワークの携帯電話は電波エリア内のみの使用に限定されているが、「Starlink Business」では空が開かれ、電源があればWi-Fiを使ったインターネット通信が行える。
衛生通信サービスは災害時のネットワーク環境構築にも威力を発揮している。2024年1月の能登半島地震では大手キャリア会社は無償でStarlinkを貸出した。震災により地上のネットワークインフラが破壊され、能登半島ではネット通信が困難になったが、Starlinkの使用で重要な情報インフラがいち早く復旧した。非地上系ネットワークの実現により、地方自治体に限らず、地域住民の貴重な情報源としても活用できた。現在でも地方自治体の中ではバックアップシステムとして、Starlinkを設置するケースが多いようだ。
アクティオでも主要な物流センター、工場にStarlinkアンテナを設置し、非常時の通信手段として活用されるようなインフラづくりを展開中だ。災害発生時や非常時にアクティオの営業拠点に立ち寄れば、情報通信が利用可能になり、アクティオも災害時のBCP(事業継続計画)としてStarlinkを活用できる。通信の遮断により、業務オペレーションが滞ることが想定されるが、Starlinkにより通信を確保すれば、災害時でも必要な機材の素早い手配も可能だ。たとえば関東の災害で、アクティオの拠点がダメージを受けたとしても、その状況を社内システムで関西に送り、日常業務と変わらないオペレーションで、必要機材の手配ができる段取りとなる。
法人向けの「Starlink Business」は、優先データといわれるサービスが標準となっており、標準やモバイル通信が混雑している時に、通信スピードがダウンまたは切断するのに対して、優先データは接続が保証される。ビジネスで提供されるパブリックIT機能はアクティオもチャレンジしている遠隔施工にも活用できる可能性がある。「Starlink Business」を活用したサービスを模索しているが、ネットワークにある基本的な機能を使用できることは拡張性に富む。通信サービスは無限には利用できず、契約するプランにより月間の通信料で決まる。ビジネスタイプは月内の上限に達した場合、通信スピードの低下は発生するものの、引き続き使用できる。現在、アンテナはアクティオと顧客のレンタルになるが、通信サービスは協業先であるソフトバンクと顧客との契約になる。

「Starlink Business」の活用事例
そのほかにも、高層ビルの建築現場では、基地局の電波は下方向を向いているため、建築中の上層階になると電波が届かず、インターネットの使用ができなくなる。するとタブレットにある業務アプリケーションを使えなくなるため、作業効率が著しく悪化する。そこでタワークレーンに、Starlinkを設置し、上から下に向かってインターネット回線を構築する事例も増加している。StarlinkのLAN回線に無線LANアクセスポイントを下げ、ビル内ネットワークの構築を実現する。
また、山岳トンネル工事では外部にStarlinkを設置し、トンネル内にネットワーク回線を接続し、インターネットへと接続する。このように土木・建築工事問わず導入事例が増えた。アクティオでは無線LANのアクセスポイントのレンタルも行っており、こうした組み合わせにも対応可能だ。
現在、日本全国で高速道路のリニューアル工事が行われているが、その工事でマイクロバスもオフィスカーとしてレンタル展開している。高速道路工事は現場事務所から現場の距離が離れているケースが多く、工事区間中には仮設事務所を設置しづらい課題がある。そこで電源などが完備しているオフィスカーの導入も増えた。従来、山間地域ではインターネット環境は整備しづらかったが、Starlinkの採用で解決に至った。山岡さんは、建設業界も場所にとらわれない働き方の可能性を示唆するサービスと胸を張る。

太陽光パネル搭載「新型マイクロバスオフィスカー」
Starlinkの活用には電源が必要となるが、発電機、ポータルバッテリー、ソーラーパネル付きバッテリーもレンタルしている。発電のニーズはさまざまでStarlinkを使用する小型発電機もあれば、現場全体をまかなう大型発電を必要とする場合もあり、停電時の非常用発電として、制御装置を備えた発電機などのラインナップを揃える。
ソフトバンクとの協業では、「Starlink Business」に加えて建設業界での働き方を変革する取組みとして社内デジタル人材の育成も行っている。DXは幅が広く、モバイルアプリ、施工管理クラウドソフトウェアなど中核的なテクノロジーを始め、デジタルツイン、ブロックチェーン、AIのような高度で専門的なテクノロジーまで、業務内容に際限がない点が特徴的だ。
最近ではレンタル品にクラウドサービスが付帯していることも増え、ハードとソフト、さらには通信に至るまでコールセンターで受付け、レンタル出荷するスキルが求められる。一見するとそれぞれのテクノロジーが孤立しているように見えるが、これらをサービステクノロジーとして、有機的に見られる人材、鳥瞰的にものを見られる人材、胆力を持つ人材の育成に注力する。
ただしこうしたスキルを身に着けることは一朝一夕には難しく、ソフトバンクなど外部の力を借りつつ、エンパワーメントしていく。そこでアクティオでは生成AIを活用してスキル不足を補完したり、外部向けサービス展開を模索し、チャレンジ中だ。
ソフトバンクとの協業でも生成AIの活用を進めているがまだ緒についたばかり。一例ではAIがより正確な判断を行うデータを取り、機械学習を始めることで、次のステージに備える。まずはソフトバンクのチャットボットを社内導入し、カスタマーサポートの効率化を図る。実際、一般的にも問い合わせ内容を入力すると、自動回答する例として業界を問わずチャットボットを導入する事例が増加している。
アクティオでは音声や映像データを含め、AIに学習させ、その内容を継承、将来に向けてのAIによる自動回答を目指す。重要な点はゴールをどこに設定するかにあり、今開始して1年後の回答率を50%、3年後に80%という具体的な出口戦略を持つことで、ゼロから運用にサービスとして乗せていく。

ソーラーパネルを備えた「太陽光パネル搭載オフグリッドオフィスカー」と「Starlink Business」のアンテナ
これから10年、ヒューマノイドロボットをはじめ、AIの浸透により人間が行っている作業にAIなどが入り込んでくることが予想される。アクティオもAIの力を使い、人口減少や少子高齢化により業務を行うメンバーが減っても、顧客に対して迷惑をかけないオペレーションサービスを構築し、チャレンジしていく。
アクティオでは、レンタル機械を貸し出すだけでなく、導入サポートとして、インストラクターによる現場指導、簡易マニュアルの提供など技術の定着化を促進している。デジタルツールの効果を最大化し、現場の負担を軽減するためには、現場作業員がデジタルスキルの習得しやすい支援が不可欠だ。そのために社内教育をはじめ、資格取得を推奨している。アクティオでは長年培ってきたレンタル業でのスキルと経験をベースに衛星通信サービスやAIなどのデジタルテクノロジーを展開し、顧客へのニーズに応えていく方針だ。
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Starlinkは良いですね!
もう少し安ければなお良い!
ヒューマノイドロボットは漫画の読みすぎw
工事に使うのなら人間型の必要はないでしょう。
建設業の今後を考えるとパトレイバーを読むと面白いかもしれませんw
昔の漫画ですが最初の映画がICT建機でテロが起きる様子を描いていますね。
真面目な話今後セキュリティが重要になっていくと思いますね。