建設現場に従事する者なら、ほぼ全員が現場で何かしらの写真を撮ったことがあるだろう。最近は誰もがスマホを持ち歩いており、いつでもどこでも撮影ができる。しかし、それが「建設現場の正式な記録写真」となると話は別だ。相応の神経と配慮がなければ、真に役に立つ工事写真は撮れない。
エラそうなことを言っている私も、工事写真では何度も失敗を経験してきた。おそらく、建築現場の工事写真で一度も失敗したことがない人など、この世にほとんどいないのではないか。それほどまでに”文句の付けようのない完璧な一枚”を収めるのは難しい。
そもそも、なにが難しいのか。どんな工事写真が「失敗」なのか。その意味を掴めていない若手もいるかもしれない。今回、改めて工事写真について書こうと思ったのは、ある現場での出来事がきっかけだった。
散乱する「使えない」工事写真たち
2週間ほど前、新しい現場に着任した。施工管理を担当しながら、生コン打設の立ち会いと並行して、サブコンから提出された過去の工事写真の整理・確認を任された。
ところが、資料を見はじめて愕然とした。工事写真と添えられた情報が、あまりにも稚拙なのだ。全体がまるで風景写真のようで何を撮っているのか判別不能なもの。メジャーを当てているが数値が読み取れないもの。ほかにも説明文が間違っていたり、情報が不足していたり…。
ほとんどの工事写真にコンサルタントが立ち会っているため、「コンサルが認めているから」と言い訳はできるかもしれない。しかし、肝心の氏名や所属が明記されていない資料がほとんどだった。これは一枚ずつ確認者を明確にしておかなければ、後々大きな問題になる。
書類の体裁もバラバラで、統一感がない。何より、これを受け取っていながら長い間放置していた我が社(元請け)の不手際も指摘せざるを得ず、「どうしたものか…」と頭を抱えてしまった。
要求レベルの基準となる「標準ひな型」さえ存在しない組織だったため、まずは疑問点や間違いを改めた資料を付け加え、とりあえず合格点が取れるレベルまで引き上げることからはじめた。過去の工事写真を撮り直すことはできないため、どうしても不適切な工事写真は削除し、説明文の修正と追記を中心に作業を進めている。
「強い工事写真」を撮るための心得
修正作業をしながら、私は改めて痛感した。そもそも、撮る段階で勝負は決まっているのだ、と。
後から説明文で言い訳をしなくても済む「強い工事写真」を残すには、どうすればよかったのか。
私の経験を踏まえ、「工事写真の心得」を記しておきたい。
【心得1】撮影者の知識が「質」を決める
工事写真を撮る大前提は、撮影対象が「正しく施工されていること」だ。 正しく作業が進んでいるかを確認するのは施工管理者の役目だが、工事写真を撮る人間にもそれと同等、あるいはそれ以上の知識が求められる。
たとえば、鉄筋の配筋写真を撮る際、特記仕様書や標準仕様書の内容が頭に入っていなければ、現場で「正しくできているか」の判断さえつかない。昨今は機械式継手や定着金物、圧接、溶接なども細かく区分され、事前の技能検査さえ求められる。
使用する鋼材の種類や、部位別の生コン強度が継手・定着長にどう影響するか。それを理解していなければ、撮影場所の選定すらおぼつかない。「ここならどこを撮っても大丈夫だ」と自信を持って言える場所を探し、必要であれば前日に職人へ指示して修正してもらう。工事写真は、シャッターを押す前の準備で勝負が決まるのだ。
【心得2】余計なものは一切排除せよ
一言で言えば、「写したい対象に可能な限り近づき、余計なものを一切写さない」ことに尽きる。 ツッコミを入れられる隙を徹底的に排除することが大事だ。
とくに対象物の背景には最大限の注意を払わなければならない。周囲の床に資材が散乱していないか。整理整頓はなされているか。関係のない作業員が写り込んでいないか。必要であれば、看板を立てて隠すくらいの気配りも必要だ。
「たかが工事写真じゃないか」と、その重要性を理解していない人は多い。たしかに昔ほど細かい指摘を受けることは少なくなったかもしれないが、私には忘れられない思い出がある。
私が20代後半の頃、公共工事の写真を撮った際、看板の日付を間違えてしまったことがある。当時はまだフィルム(ネガ)の時代だ。驚いたことに、当時はネガを修正する専門の職人がいた。ルーペを覗き込み、ネガの表面をわずかに削って文字を書き直す。その仕上がりは周囲の文字と全く遜色がなく、これぞ職人技だと驚愕した。
デジタル化で便利になった今だからこそ、忘れてはならないことがある。現場の工事写真は、単なる事務作業ではない。そこには、現場を預かる者の執念と奥深さが詰まっている。
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