施工管理技士・現場監督の仕事とは?
施工管理とは、施工計画に基づいて、工事を計画通りに施工するための管理業務のことです。建設業界では、コンクリート、鉄筋、型枠、配管、建設塗装、鳶、土工など、さまざまな分野の技能者・技術者たちが協力して、現場でひとつの建物・構造物を作り上げていきます。
そのため、建設現場の作業を円滑に進めるには、現場全体を統率し、工程や品質などを管理する現場監督が必須となります。そうした重要な役割を担う技術者が、施工管理技士と呼ばれる国家資格者(建設業法第27条)です。
施工管理業務を行うことができる施工管理技士の国家資格者は、建設工事の責任者として各現場に必ず配置される必要がありますが、東日本大震災以降、施工管理技士の人材不足が全国的に深刻化しています。そのため、ゼネコンや工務店は、こぞって優秀な施工管理技士を獲得しようと採用競争を繰り広げています。
施工管理技士の収入が高額となっている背景には、施工管理技士の人材不足という建設業界全体の問題があります。施工管理技士の人材不足は、建設会社だけでなく国も憂慮しており、施工管理技士を増やすためのさまざまな対策が講じられています。
これから施工管理技士を目指そうとしている方々の参考になるように、実際の施工管理技士は一体どんな現場で仕事をしているのか、施工管理技士の仕事内容と、施工管理技士の資格の種類、資格を取得する方法、資格試験の合格率などを、施工管理技士に関する基本的な情報を簡単に分かりやすくまとめてみました。
施工管理の仕事内容
施工管理技士の主な仕事内容としては、工程管理、品質管理、出来形管理、安全管理、原価管理などといった「管理業務」が挙げられます。
建築物や構造物を作る際は、料理と同じように、品質を良くすれば原価が高くなり、工程を早くすると品質が低下する傾向があります。工事コストの原価を最も安くするための工期を「最適工期」と呼びますが、それより工程が早くても遅くても原価は高くなります。そのため、施工管理では、工程、品質、原価を三位一体的に管理することが求められます。
建設工事を計画的に進め、品質の高い建物・構造物を早く、安く、安全に作るため現場を監督する仕事が施工管理です。この施工管理業務を行う国家資格者が施工管理技士と呼ばれ、建物・構造物の施工全体を管理しています。施工管理技士の具体的な業務内容としては、発注者との打ち合わせや、現場で働く作業員・技術者などへの指導監督などがあります。
施工管理の仕事「工程管理」とは?
施工管理技士は発注者との契約条件に基づき、決められた工期内に工事を完成させなければなりません。そのため、工事の各段階における施工手順や施工速度などといった工程を、上手に計画・管理する必要があります。
現場の安全性の確保はもちろんですが、生産性や会社の利潤も考慮して、総合的に現場の工事を管理することこそ、施工管理技士が行う業務の一つ工程管理です。
施工管理技士が行う「工程管理」では、次のようなPDCAサイクルを回し、工期までに工事を完成させることが求められます。
◎工程管理のPDCA
計画(P) | 工程表の作成など |
実施(D) | 工事の指示監督、作業員の教育 |
検討(C) | 手配、作業量の進捗度チェック |
処置(A) | 施工方法の改善、計画修正 |
施工管理の仕事「品質管理」とは?
施工管理技士が行う品質管理の目的は、品質規格を満足させながら、その範囲内で最も経済的に工事を完了させることです。工事現場で使用する材料の規格や部材の寸法、適用工法などをチェックし、もし計画とズレている場合は修正していきます。
不注意、事故などの異常原因によるバラツキを除去することが、施工管理技士が行う品質管理の重要なポイントになります。
施工管理技士の種類と建設業界内の位置づけ
施工管理技士には、土木施工管理技士、建築施工管理技士、管工事施工管理技士、電気工事施工管理技士、造園工管理技士、建設機械施工技士など6つの種類があり、それぞれに1級と2級があります。
施工管理技士の資格を取得すると、「専任技術者」や「主任技術者」「監理技術者」「現場代理人(現場監督)」になることができます。
施工管理技士と専任技術者の関係
施工管理技士の有資格者になると、「専任技術者」の資格要件を満たすことができます。建設会社が知事や国土交通大臣から建設業許可を受けるためには、営業所に常勤の専任技術者を配置することが必須条件となっています。専任技術者が不在となった会社は、建設業を営むことができなくなるため、施工管理技士の有資格者は転職に有利になります。
1級施工管理技士であれば、特定建設業と一般建設業のどちらの建設業許可を受けるための専任技術者にもなれます。一方、2級施工管理技士は、一般建設業の建設業許可を受けるための専任技術者にはなれますが、特定建設業の建設業許可を受けるための専任技術者にはなれません。専任技術者は営業所に常勤し、建設工事の請負契約や、注文者への対応などを行います。
施工管理技士と監理技術者の関係
1級施工管理技士は、「監理技術者」として建設現場で活躍することができます。
監理技術者とは、大きな建設現場(下請契約の請負代金総額4,500万円以上※建築一式工事なら7,000万円以上)において、一定の技術水準を保つために配置しなければならない資格者です。大きな建設工事現場において必ず必要であり、ニーズがあるにも関わらず、有資格者の数が少ないので、転職に有利な資格であると言えます。
建設業法上、全ての建設現場に「主任技術者」を配置しなければなりませんが、この主任技術者の上位技術者として位置づけられているのが監理技術者です。監理技術者である1級施工管理技士は、主任技術者としての業務のほか、下請人の指導や監督なども行います。
※1級土木施工管理技士は、土木、とび・土工、石工事、鋼構造物、舗装工事、浚渫、塗装工事の職種で監理技術者として活躍できます。
施工管理技士と主任技術者の関係
施工管理技士は1級でも2級でも「主任技術者」になることができます。しかし2級施工管理技士は、監理技術者(土木、建築、管、電気、造園、鋼構造物、舗装)にはなれません。
ざっくり表現すると、1級施工管理技士が監理技術者、2級施工管理技士が主任技術者、となります。つまり、1級施工管理技士の資格者のほうが、2級施工管理技士よりも大規模の現場で活躍できる、ということです。
なお、主任技術者や監理技術者は、工事を請け負った建設会社と直接的かつ恒常的な雇用関係が必要です。在籍出向社員や派遣社員、工事期間のみの短期雇用などは、主任技術者や監理技術者としては認められていません。
施工管理技士と現場代理人と統括安全衛生責任者の関係
「現場代理人」は、主任技術者や監理技術者との兼務が可能なため、施工管理技士がなる場合が多いです。
現場代理人とは、建設工事の請負契約における受注者(請負人)に代わって、工程管理、安全管理、発注者との交渉などを行う、いわゆる現場監督のことです。現場代理人は法律上、設置や常駐の義務はありませんが、契約約款や社内規定によって、ほとんどの建設現場で設置・常駐が求められます。
特に公共工事等では、公共工事標準請負契約約款によって、現場代理人の設置、工事現場への常駐が求められます。現場代理人の常駐義務については緩和措置もあり、また施工管理技士の人材不足から2現場の現場代理人を兼務できる場合もあります。いかに現場代理人、施工管理技士の人材が不足しているかお分かりになると思います。
現場代理人の主な仕事内容としては、工程管理、施工計画、安全管理、原価管理、施工図チェック、下請業者との打合せ、苦情対応、関係書類の作成・提出など、施工管理技士とほぼ同じ仕事内容です。現場代理人となった施工管理技士は、監理技術者(または主任技術者)のほか、統括安全衛生責任者を兼務する場合も多いです。