施工管理技士などの建設技術者を積極的に確保
施工管理技士は全国的に不足している。さまざまな取材で見えてきているのは、施工管理技士の引き抜き合戦の仁義なき戦いが全国で行なわれているということだ。確実に施工管理技士の人材を確保するためには、建築分野に強い松村組の施工管理技士の人材は魅力的に映ったのではないだろうか。
パナソニック広報は、施工管理技士の確保についてはこのようにコメントした。
「技術者の確保は、当社のリソースも活用しながら、今後積極的に行ってまいりたいと思っています。」
今や施工管理技士は、ゼネコンのみならず、IT企業などさまざまな業界から「欲しい人材」となっているのが実情だ。
「パナホームと松村組の連携」について質問したところ、「パナホームに限らず、グループの中で松村組のリソースを有効活用したいと考えています」との回答があったが、どのような活用方法があるかは不明だ。住宅部門だけではなく、他部門にも活用することも示唆している意味は大きいが、今後の方向性を追う必要がある。それだけゼネコンが抱えている施工管理技士という人材リソースには、期待が集まっていると言えるのではないだろうか。
ヤマダ電機、コニシも、ゼネコンや住宅会社を買収
しかし、こうした異業種によるゼネコンや住宅会社買収は、パナソニックがはじめてではない。
今年6月には、ヤマダ電機が創業の地である群馬県前橋市に、家電とモデルハウスやリフォーム、生活雑貨や家具の三位一体型に特化した「インテリアリフォームYAMADA 前橋店」をオープンした。
ヤマダ電機は2011年に注文住宅メーカーのエス・バイ・エル(現ヤマダ・エスバイエルホーム)を買収し、2013年にはスマートハウスを低価格で提供するメーカーのヤマダ・ウッドハウスを設立。金融面ではヤマダファイナンスサービスが住宅ローンの取り扱いも行い、さらに、これらのサービス実現の核となるヤマダ不動産を6月に設立し、賃貸物件や不動産売買の仲介に乗り出した。家電量販店から家まるごとのサービスをスタートさせようとしている。
また、別のケースでは、ボンド総合メーカーで有名なコニシも、東海地域に商圏を持つ地域建設企業の角丸建設の全株式を取得して子会社化した。コニシは土木建設事業を成長戦略の柱に位置付けており、買収を機に、主力の接着剤事業と補修改修工事によるシナジー効果を発揮させて、収益を拡大するのが狙いだ。
施工管理技士の人材引抜きよりも、ゼネコンを丸ごと買収
パナソニック、ヤマダ電機、コニシが、ゼネコンや住宅会社を買収した背景には、いずれも建設・住宅部門を成長産業として位置づけているという共通点がある。しかも本業とのシナジー効果が高いと考え、買収などに踏み切っている。
こう考えれば異業種はシナジー効果を狙い、ゼネコンや住宅会社の買収や業務提携に踏み切るケースが増えてくる可能性も見えてきた。ゼネコンの財産は、施工管理技士などの資格保有者、豊富な経験を持つ現場代理人などの「人材」だ。その人材を獲得し、本業との連携をはかることにより、はかりしれないシナジー効果があると一部の異業種は考えている。
個別の施工管理技士を引き抜くよりもノウハウ全体獲得するには、ゼネコンや住宅会社をまるごと買収した方が効果は大きい。
パナソニックの松村組買収劇の影には、はからずも異業種がゼネコンの人材とノウハウを渇望している背景があることが明るみに出た事例とも言える。今後、異業種の建設業界への買収や協業には注目していく必要がある。