子育て中の主婦が「土木の求人」に応募した理由とは?
「土木のお仕事。写真管理などの書類仕事もあります」――株式会社井上組の求人にはこう書かれていた。安達登志子さんは「それならできるかな」という軽い気持ちで応募。土木仕事の経験はまったくなかったが、子育て中の主婦が土木技術者見習いとなる。平成27年2月のことだ。
テレビで、新米女性現場監督の映像を見たことがあった。多くの男性作業員を束ねる女性の姿に「えー、女性がいてるんや。カッコエイなあ」と憧れのような感情を抱いたことはある。しかし、その数年後、自分が土木の仕事につくことになるとは「想像もしていなかった」と言う。
「井上組には、安達の前にも女性の技術者がいたが、平成26年5月にことぶき退社したので、募集をかけた。土木の経験がないことは問題ではなかった。チャレンジしたい人はすべて受け入れる。今回も本人のやる気を買った」(柏尾悦子・株式会社井上組経理部長)と採用の内情を明かす。
それにしても、いくら「やる気」があるとしても、素人がいきなり飛び込んで、なんとかなる世界なのかという疑問が湧く。「なんとかならない。厳しい世界だった」と安達さんは振り返る。最初に行った現場は、急傾斜工事の現場。「現場にある道具一つとっても、それが何をするものなのかがわからない」現実に直面する。「とにかく早く現場になじんで、仕事を覚えなければ」。3ヶ月間の研修は、あっという間に過ぎていった。

安達さんが現場監督を務めた河川護岸工事でのパラペット擁壁の現場(施工前)

安達さんが現場監督を務めた河川護岸工事でのパラペット擁壁の現場(施工後)
河川護岸工事のパラペット擁壁で喜びを知り、土木の資格取得にチャレンジ!
いくつかの現場で写真整理、書類づくりなどに携わった後、現在は、国土交通省四国地方整備局発注の河川の維持工事の現場監督などを任されている。この間、苦労もあっただろうが、「現場監督をやるようになったのは、自然の流れ」(安達)と恬淡としたもの。会社からも「この業務をやれということはなかった」(井上惣介・株式会社井上組代表取締役社長)そうで、スムーズにことは進行したようだ。
思い出に残る仕事は、昨年現場監督として、河川護岸工事でパラペット擁壁を施工したこと。「はじめてものづくりができた」(安達)という実感を得られた現場だった。ものづくりの喜びを知った後、「土木の資格をとって、技術者として頑張りたい」と考えるまで、そんなに時間はかからなかった。現在、仕事や育児の時間をぬって、資格試験の勉強を続けている。「わずか2年で、一つのハードルを越えようとしている。その努力にはビックリする」(井上社長)。
記事を拝見し、子育て中の主婦が現場の仕事に挑戦することの大変さに共感しました。
同時に、子育てが終わった人や子育てが終わりそうな人と、絶賛子育て中の女性を分けて考えなくてもいいとも思いました。子育てが終わった人や子育てが終わりそうな人も、何かしら抱えている事情があるかもしれません。
例えば、子供が発達障害で成長しても安心できない、自身の更年期障害や親の介護など。同時に重なっている人もいると思います。
日本は男性よりも女性の負担がまだまだ多いです。偏見かもしれませんが、この世代の女性の配偶者の男性の多くは、妻の更年期症状に理解がない、介護は配偶者の女性任せの方が多いのではないでしょうか。子育てが終わりそうな世代の場合だと、そこに子供の世話が加わる。
その世代の男性が多い職場だと、上手く仕事と家庭を両立できず悩んでいる人もいると思います。
実際に私も更年期症状のため薬を服用していますが、仕事がなかなか休めず、薬を飲みきってなくなってしまうまで休めず、何とか仕事を調整して平日に休むことになったら、会社から現場を放り投げるなと電話が来たり。
対策を考えようにも、同じ世代の女性技術者が近くにおらず、相談もできない。
今後も女性技術者の現実をもっと取り上げていただき、声を上げられずにいる状況を改善するきっかけを作っていただけたらと思います。