スーパーゼネコンの忖度。豊洲市場追加工事の最後は大成建設か?
豊洲市場の追加工事は結局、入札不調のリスクを避けるため、事前公表に踏み切り、9件のうち、8件の落札者が決定した。 残りの1件は、7街区(水産卸売場棟)の地下空間床面工事だが、すでに小池都知事は「特命随意契約に切替える」と表明している。年内にも見積り合わせを行う予定で、見積り合わせ後に経過調書として公表していく予定だ。
では、どのゼネコンと特命随意契約を行うのか?
スーパーゼネコンの社員は、このように忖度(?)する。
「これは大成建設さんにやってもらうしかありませんね。水産卸売場棟は323億円で大成建設さんが落札したのですから、東京都もまっさきに話をもっていくでしょう。 しかし、この工事はスカイツリーなどの象徴的なビックプロジェクトでもなく、東京都の次の工事でも面倒を見てくれる工事でもないので、スーパーゼネコンとしての矜持がある一方、営業的にそうそうメリットがないので困っていると思いますよ。
工事担当者の責任は重大ですな。でもゼネコンの工事部門は、最後まで工事に責任を持つという誇り、そして政治の道具にされたらたまらないという嫌悪感、その両方を持っていますよ」
あくまで忖度(?)なので、実際に大成建設が契約するかは不明だが、そもそも、豊洲市場の追加工事について「1者入札の禁止」「予定価格の事後公表」を全面に出したことには無理があった。
豊洲市場の追加工事は例外、入札予定価格の事後公表は続行?
一部マスコミは「ゼネコンvs小池都知事」の構造を演出し、小池都知事がゼネコンに屈服した形で、入札予定価格の事後公表や特命随意契約に変更したのではないかとの報道もあった。 しかし、記者会見での小池都知事は強気だ。
「(小池都知事が進める)入札制度改革では、予定価格の事前公表を事後公表に変更する試行をおこなっていますが、豊洲市場の追加工事では、ほかの何万件の工事入札と様相が異なります。そもそも本体工事の元請に発注すべきと言う意見もありました。そこで途中から事前公表に切替え、事前公表された予定価格を見て、それぞれの企業が判断し、入札が決まったと判断しております。豊洲市場の追加工事は、特殊な環境におかれた工事であり、早期に工事を進めるためには特別な措置でした」
あくまで豊洲市場の追加工事は例外ということだ。今後、他の工事の入札予定価格についても、事後公表から事前公表に戻すかどうかは、建設業界の注目するところだが、小池都知事は明言を避けている。今後も「事後公表」を維持していく方針ではないか、というのが多くのゼネコン関係者の見立てだ。
しかし、都議会自民党はこのように指摘する。
「1月に建設業界とのヒアリングを実施すると聞いていますが、早期に実情を聞き届け、間違った制度変更であったと認識すべきです。公共工事においては、競争性や透明性、品質確保などを担保することは当然のことですが、東京都内の中小企業育成という観点もあわせ持つことも都の責務です。
問題が多い変更は速やかに元に戻し、委託契約における最低制限価格の設定等、新たに進めるべきほかの改革にこそ着手すべきと考えます。かつて豊洲市場整備工事の契約で1者入札や特命随意契約をあれだけ批判していた小池知事が、結局、同じ道をたどることは誠に皮肉と言わざるを得ません。入札制度改革の失敗は明白で、その悪影響は都全体に広がりかねません」