地元のビックプロジェクトでも大手ゼネコン単体での応札も
渡邊副会長の発言に続いて、同じく東京都中小建設業協会の細沼順人副会長も、西多摩地域での実情を露わにした。細沼副会長は三多摩建設連合会の会長も兼務している。
「梅ヶ谷トンネル(仮称)整備工事(西−梅ヶ谷の2)は、地元が要望してきたメモリアル工事と言えるビックプロジェクトで、応札者は26者。入札制度が変わって、地元建設企業がJVで参加できたのは4者だったが、半数はゼネコン単体だった。地域中小企業から、大手ゼネコンに対して、JVを結成しましょうとお願いすることはできない。大手ゼネコンから地域建設企業にJVを組むかと言われてはじめて参加できる。
財務局、出先の建設事務所は、われわれをパートナーと呼び、先日の大雪でも出動した。 都議会の自民党、公明党、都民ファーストの会の先生もわれわれを理解していただいているが、それなのになぜ、入札制度改革でわれわれの声が届かないのか。このままだと中小・零細建設企業潰しになると思っている。
以前、ある先生が「JV結成義務の撤廃」で中小企業にも受注機会が増えた、との評価が得られたと発言していたが、評価対象にした中小建設企業35者のうち、東京都中小建設業協会の会員は2者しかない。しかも2者は自力で経営できる能力がある会社だ。
東京都中小建設業協会の会員企業は、このJV結成義務の撤廃についてはまったく評価していない。そのことはわかって欲しい。」(東京都中小建設業協会・細沼順人副会長)
これに対して東京都側は「多摩の事例も含め、すべてJV結成の義務を撤回できるか申し上げることは出来ないが、今後の検討の中で進める」と答えた。
楠茂樹部会長は「地元の工事は地元にということは公共工事では大事な論点だ」とした上で、「JV結成義務だけではなく、地域要件や地元貢献度の点数を高くするなど、いろいろな方法が考えられる。さまざまな組み合わせを考え、総合的に議論し、都民が納得できる手法を考えることが大切な視点だ」とコメントした。
安全衛生経費の確保も求めた東京都中小建設業協会
「安全衛生経費の確保」についても、東京都中小建設業協会は東京都に求めた。
建設業において、安全は何よりも優先されるべきだが、適切な労働災害防止対策を講ずることは、無料では出来ない。建設業界は年々減少傾向にあるが、死亡労働災害がもっとも多い業種であり、年間約300人近くの労働者が命を落としている。
しかも、一人親方は労働者にカウントされないため、より多くの建設業従事者が現場で死亡しているのが実態である。「安全衛生経費の確保」について、元請である都中建が発注者に求めたことは特筆すべきことだ。
入札監視委員会制度部会の委員からは「東京都は丁寧な対応が必要」との意見も出た。仲田裕一委員は「平準化や工期の設定など、東京都は丁寧な対応が必要だ。やはり、お互いが新しい制度設計を実現するためには、意見交換は大切。」との感想を漏らした。
小澤一雅委員は東京都中小建設業協会に対して「大手ゼネコンと中小建設企業の仕事の仕方や体制はどのように違うのか」と確認を求めた。東京都中小建設業協会の回答はこうだ。
「末端で仕事をしているのはわれわれ中小。直接作業員や多能工を雇用している。作業ヤードも機械も自社で保有して、仕事を通じて地域の安全・安心を守っている自負があるのが地域中小建設企業」(東京都中小建設業協会)
最後に小室一人・東京都財務局経理部長は「中小建設企業の皆様から現場目線で厳しい意見をいただいた。みなさんからの意見をもとに東京都入札制度改革の検証を進めたい」と締めた。
今後のスケジュールだが、今回のヒアリングや傾向分析などを踏まえ、入札監査委員会制度部会が検証結果をとりまとめるのが遅くとも3月中旬。入札監視委員会が報告をとりまとめるのが3月下旬を予定。2018年度から再度、検証結果を基に、意見交換を開催。それらを踏まえ、今度は都政改革本部会議で検討し、必要に応じて入札制度を見直すこともある。これら一連の作業が完了後、入札制度改革は本格実施に移行する。