サントリー山崎蒸溜所など、民間建築工事で70年余の実績。目指すは「3大ソリューションのナンバーワンカンパニー」
三和建設株式会社は昭和22年に創業。大阪、東京に本店を構え、関西圏、首都圏を中心に、主に食品工場などの民間建築工事を手掛けてきた。同社のノウハウを凝縮した設計施工、保守を含めたトータルソリューションブランド「FACTAS®」は主力事業の一つだ。サントリー株式会社(サントリー山崎蒸溜所)は、ほぼ創業以来の顧客で、同社の会議室は「YAMAZAKI」「ROYAL」など縁の深いネーミングが用いられている。
食品工場と言っても、たんに画一化されたハコモノを建築すれば良わけではない。顧客のニーズ、工場の用途などを考慮し、緻密につくり上げる必要がある。とりわけ、空気や温度、湿度管理はシビアだ。「一般の建築物とは異なる高度な専門知識と経験が作り手には求められ、これらの経験を有している建設会社は決して多くはありません」と言う。
「一口に食品工場と言っても、その工場で生み出される製品の特性、製造方法、危害要因、販路などによってあるべき姿は多種多様です。その分、どうすれば、お客さまに新たな価値を届けられるか、使い勝手の良いものを提供できるかという点において、わが社のノウハウ、強みを発揮できる部分があるわけです」
三和建設の今後のビジョンはどういうものだろうか?
「わが社は、急激に会社の規模を大きくすることを考えていません。社員や協力会社、お客さまなど、関わるすべての人々のために永続することを重視しています。したがって、売上高よりも生産性の向上や未来への投資の原資となる利益を重視しています。現在の社員数は114名ですが、当面は150名体制に向けて緩やかな成長を志ざします。将来社員数が増えても、社員一人ひとりの顔が見える会社にしたいと考えています」
「われわれは、民間の仕事、食品工場(ファクタス®)や特殊倉庫(リソウコ)、長期にわたって価値を維持できるマンション(エスアイ)に特化し、その分野のトップカンパニーを目指していきます」
民間工事にこだわる理由はなんだろうか?
「お客さま様の声を直接感じたいからです。公共の仕事でも一定の感謝の言葉をいただけますが、民間のお客さまの方がよりダイレクトに『ありがとう!』と言っていただけます。時には厳しいお言葉もいただきますが、ツラいも嬉しいもダイレクトに感じられるのが、民間の仕事です。われわれのフィールドはあくまで民間です」
会社説明会に10数名の社員を投入し、数百名のエントリー学生を獲得
おおむね順調な経営を続けてきた三和建設だったが、平成12年以降、ベテラン社員の退職、職人不足などにより、人財不足問題が顕在化。新たに採用しようとしても、入社内定後の辞退者、入社後の離職者が少なくなく、思うように人材を確保できない状態に陥った。
危機感を抱いた三和建設は「つくるひとをつくる®」を経営理念として明確化。全社的に人財の採用、育成を強化する方針を打ち出した。「どういう戦略でいくか」「どういう人財が欲しいのか」などの骨格の部分を社内的に詰めていった。しかし、具体的にどうするかを決めるのは簡単ではなかった。
「最初はすべてが手探りで、なにをして良いのかわからなかった、というのが正直なところですね。例えば、会社ホームページなどの情報発信を充実させても、その辺の取り組みは他社と大差ないので、学生にそれほど訴求しませんから。そもそも情報が多すぎるんです。試行錯誤の後、『学生に共感してもらう』『考え抜いてもらう』ためにはどうすれば良いか、という方向性に沿って、物事を組み立てていくことになりました」
そこでまず、大阪、東京それぞれの合同会社説明会に積極的に社員を送り込むことにした。他社のブースには、人事担当者が1名程度しかいないところに、社員複数名を投入。人事担当だけではなく、現場の社員も送り込み、学生と積極的にコミュケーションをとるよう社員に徹底させた。
「現場の社員を送り込んだのは、限られた人事の社員と話しても、会社の雰囲気全体は学生には伝わらないから。説明会の雰囲気が会社の雰囲気になるよう、三和建設の等身大の姿を学生に見せたいという思いからでした」
複数名からの社員が学生に声をかけると、数十人の人だかりができる。「あれ?人がいっぱい集まっている。なんだろう」と思って、さらに集まる。人が集まる好循環づくりに成功した。その結果、従来方式のエントリー者数が数十人だったのに対し、数百人のエントリー者数を獲得した。