学生に会社を選んでもらう「理念共感と成長」型の採用選考を導入
エントリー後の新卒採用の選考方法もガラリと変えた。「履歴書を見て、この子良いんじゃない?」という「会社が学生を選ぶ」従来方式から脱却。学生に会社を選んでもらう「理念、価値観共有方式」に転換した。書類選考、ペーパー試験もなし。学歴も重要視していない。
その一方、2週間に及ぶ職場体験などを実施。学生に自己アピールさせて、評価するのではなく、「学生に自分の人生を考えさせる」「三和建設の価値観を知ってもらう」「入社後10年後をイメージしてもらう」などのグループワークなど中心に、「学生の決断を支援し、信頼する選考」に徹した。
「従来型の採用選考では、学生とはせいぜい1〜2時間程度の関わりしか持てません。そんなわずかな時間で、学生が会社のことを知るのは不可能です。入社しても、お互いに『こんなはずじゃなかった』と別れざるを得ないことになりかねません」
「その点、三和建設では、一人の学生が内定までに会社と関わる時間は、約138時間に及びます。社員の関与人数は延べ772人、社長の出動日数は延べ23日間、ひとの関わりが多い分、コストもかかりますが、営業活動と違って、採用は投入したエネルギーに見合う結果が必ず得られます」
「人を採用したいなら、時間とエネルギーをかけるべし」というわけだ。ド正論だと思う。ただ、不思議なのは、この当たり前のことをしないで、「人が来ない」と嘆く建設会社経営者が少なくないということだ。もしかしたら、「時間もエネルギーもかけないでも、良い人が来る」と夢想しているのかもしれない。だとしたら、良い人材こそ、そんな会社には寄り付かないだろう、と容易に想像できるわけだが。
三和建設が採用選考で最も重視しているポイントについて、聞いてみた。
「採用で一番大事なことは、内定ではなく、会社の理念や価値観を共有して、学生個人が三和建設に入社して成長、活躍できると確信してもらうことです」
「わが社としては、社員というより、家族の一員として迎え入れています。以前に比べ、会社に対する帰属意識が高い社員が増えていると感じています。少々仕事で辛いことがあっても、上司や仲間と一緒に働きたいという意識が強いですね。そのおかげもあって、入社後の離職者はほとんどいません」
投入したエネルギーに見合う結果が得られているようだ。
「過剰な熱意を持った人たち」に強い印象を受けた三和建設の新人社員
三和建設に入社した新人社員は、採用選考などについて、どう受け止めているのだろうか?新人社員の六嶋瞬さんに話を聞いてみた。
「三和建設の第一印象は、『過剰な熱意を持った人たち』でした。説明会の会場で、学生が反り返るほどの熱気で接する姿には、強い印象を受けたことを覚えています。正直なところ、就職活動が始まるまでは、どんな業界でもどの職種でも就職できればいいや、と考えていました。というのも、今後40年をかけて成し遂げたいことが明確になっていなかったからです」(三和建設株式会社 大阪本店工事グループ 六嶋瞬さん)
「そんな将来の軸がフラフラの中、就職活動にぶち当たり、自分が何をやりたいのか、人生で何を残していきたいのかを話すことができませんでした。就職活動とは、今後の40年を決めるものだと気づいたのもその時でした。悩みました。すごく自分の今までを否定された気がしました」
「それをきっかけに、考え方を変えようと思いました。これまでの自分を否定することになるかもしれませんが、そうでなければ真にマッチングした会社と出会うことができない、と選考会を通じてわかったからです」
「これは自分にとって、大きな選択でした。楽して生きていく道もありましたが、それではダメだと気づけました。その気づき、選択のおかげか、後悔したことはありません。選考会で得たものは、今自分の軸となり、あるべき方向を指し示すものとなっていると実感しています」
入社後、会社の雰囲気に対して、どう感じたか?
「ギャップは感じませんでした。説明会や選考会で感じた「熱意、熱気」という印象と、入社してからの印象に大きな差はなかったからです。相変わらずの熱量で仕事をこなし、プライベートを楽しむ姿には大変影響を受けています」