カシメ屋は雨が大嫌い!
「カシメ屋は、朝、一粒でも雨が降ると出てこない」と、よく鳶が言っていました。
確かに、カシメ作業の途中から雨になると、せっかく打ったリベットの母材のすき間から雨が侵入して、リベット自体を緩めてしまう可能性があるのです。
せっかく苦労して打ったのに、後から作業のやり直しをさせられては、たまらないので、雨が降り出したら、即刻、カシメ作業は中止となります。
また、鳶さんが言うように、朝の6時や7時ころに小雨が降ると、現場には出てきません。それで8時ころには薄日がさしてきたりすると、これは大変で、現場の監督官や元請けのGC(ゼネコン)から、早く作業しろと矢の催促になります。特に、工程が遅れていたりすると、どんどんエスカレートしてゆきます。
素人にカシメ作業は無理!
ある国鉄(当時)の駅舎の大改造工事で、橋と鉄骨の両方の工事がありました。
そこで上述のように朝から小雨が降り、カシメ屋がやってこない状況がありました。そのとき、カシメの親方と元鍛冶屋の親方が会社の番頭役で事務所におり、そのほかに事務員兼現場の片付け役の若者もいたので、4人でカシメをやるか、ということになりました。
カシメの親方は、昔取った杵柄でリベットを焼きます。しかし、さすがに投げるのは感が働かないということで、若者がホゾのところまで行って焼いたリベットを受取り、継手位置まで足場の上を運んでリベット穴に差し込みます。
当て盤は私の役、打ち手は鍛冶屋の親方です。音だけさせておけば、みんな納得するだろうということで、カシメのまねごとをやりましたが、小一時間もすると、全員力尽きました。
そのうち、曇り空から、また雨がパラパラ落ちてきたので、これ幸いと作業を切り上げました。後にも先にも、建設現場でこんなに緊張し、体が凝ってしまったことはありませんでした。
次の日、本職のカシメ屋からは、「こんな余計なことをしてくれて、手間が増えるではないか!」と、さんざんお叱りを受けて、素人カシメは終了しました。
(つづく)
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