職人たちの前で私を怒鳴る大工
私が現場で出会った職人で、一番印象深かったのは、Iさんという大工職人だった。
私は大工職人Iさんから、大勢の職人たちの目の前で、これでもかというほど怒鳴られた。
「いい加減な図面描いてるんじゃねえぞ!」
「お前の書く一本一本の線を、オレたちがどれほど考えて、墨打って、木を切っているのか分かってんのか!」
「偉そうな理屈でオレたちを説得しようなんて100年早いぞ!分かってんのか!」
私が24~25歳ぐらいで、設計業務に専念していた時だ。
しかし不思議なことに、どんなに怒鳴られても、私は一度も大工職人Iさんと会うのがイヤだとは思わなかった。嫌いになるどころか、怒られるのが楽しみですらあった。
Iさんの言葉はどれもごもっともな内容で、私自身も納得することばっかりだったからだ。あれだけ真剣に怒ってくれる人は、ありがたいと思っていた。人柄も尊敬できた。
いい加減な図面描くんじゃねえぞ!
そして私は、何とかIさんに褒めてもらいたくて、毎日夜中まで図面を描いた。「文句を言われない図面を描いてやる!こん畜生!」と思いながら。
しかし、大工職人のIさんは、最後まで私を褒めてくれなかった。
「今日でお別れだな!その調子で頑張れや!じゃな」と握手して別れた。
ギュッと握られた手の感触と、「いい加減な図面描くんじゃねえぞ!」という教訓は、何十年経った今でも、昨日のように思い出す。
大工職人Iさんとは一度しか一緒に仕事をしていないが、私を確実に成長させてくれた恩人である。
恩人と思える職人に出会うことこそ、施工管理者や設計者として成長するための一番大きな武器となるだろう。
いい加減な施工するんじゃねえぞ!
コメントのほうがいい線いってるのは
何故