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【対談】図面通りに仕事したらいかん!「真の土木技術者」の条件とは何か?

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公開日:2018.06.27
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同じ土木でも、土と構造では世界が違う

――土木の世界にも、ホワイトカラー、ブルーカラーという線引きはあるのですか?

原 私にはそういう見方はないですけどね。

宮内 職種にもよるかもしれませんね。構造系にはそういう線引きをする人がおるかもしれません。私のような、主に土を相手にしてきた人間にはそういうのはあまりないんじゃないでしょうか。

原 土は非線形で複雑な構造を持つので、机上の検討が難しい部分があります。土質は地形などによって千差万別で、性状も全然違います。結局はすべて現場が教えてくれる学問ですね。

――同じ土木でも、土と構造で世界が違うのですか。面白いですね。

宮内 私は、いつの間にか土工、しかも危険分野を担当することが多くなりました。岩盤や土をずっと相手にしてきました。一方で、コンクリート構造物や鋼構造がメインの現場もあるわけですが、主要な相手が土や岩である私は、いつも「地球を相手に仕事をしているんだ」ということを強く感じています。

原 われわれ学問の世界でも、土と構造の学者は少し毛色が違いますね。土の学者はどうしても自然を相手にしないといけませんので、フィールドワークを好む方が多い気がします。

宮内 土には、人智を超えた部分があるんです。何十年も地面を相手にしてきて、まだまだわけのわからないことが起こります。ほんの小さなことが生死を分ける場合もあります。だから、面白くもあるんですけどね。

原 土質と構造、両方知った上で仕事をするようになれば鉄壁です。考え方も違ってくるのではないでしょうか。

土木技術者には、オープンマインドが必要だ

――技術者にとって必要な素養を一つだけ挙げよ、となると?

宮内 私の場合は「感性」ですね。

――「感性」を磨く方法は?

宮内 常に「オープンマインド」でいることです。

――オープンマインドとは?(笑)

宮内 (笑)。直訳すると「心を開け」とでもなるんでしょう。でも、先日、私の村に住むアメリカ人に訊くと、ちょっと違う言葉が返ってきました。それが、私が言うところのオープンマインドにより近い意味かもしれません。彼の回答は「いつも新しいことにチャレンジする、みたいな意味かな」でした。「心を開く」とばかり思っていたので、その返事は意外だったのですが、私が考える「感性を磨く」にピッタリな言葉だと感じたので、最近どっちも使うようにしています。

私は、いろいろなところにアンテナを張って、吸収し、実地体験をしようと日々心がけています。その積み重ねが感性を磨く上で、一番大切なことじゃないかと考えています。実地体験をしないと、失敗することもできません。失敗から学べるかどうかはその人次第とはいえ、やはり失敗から学ぶことは多いですから。

どんなに優れた人がいたとしても、誰でもがその人から何かを学べるとは限りません。それは学ぶ人次第です。たとえ、たいした人からじゃなくても、学ぶ気持ちがあれば、必ず何かを学びとれます。どちらがより大切かというと、学ぼうとする側の姿勢です。私が言うところの、感性を磨くとかオープンマインドというのは、そういうことを指しているのです。

原 同感です。私がゼミなどでいろいろな人にお話しいただく目的の一つは、新しいことを吸収するチャンスを広げることにあります。そういう知恵を出し合う学びの場がないと、技術の研鑽も滞ります。オープンマインドという言葉をおっしゃいましたが、私の研究室のホームページの研究に関する基本方針には「社会に開かれた研究室」と書いています。まさに宮内さんのおっしゃる通りで「閉じた自分の中」だけで研究するのではなく、いろいろな人の意見を伺い評価いただきながら進めていくと、学生自身も気づきがあると考えています。

宮内 学生時代にそれに気づくことができれば、すごく幸せですね。

原 在学中に気づくのはなかなか難しいことではありますが(笑)。

――土木構造物に手がけた人間の人間性が反映されるということはありますか?

宮内 一般の人にはわからないでしょう。ただ、同業者が見たらわかるということはあります。私も丁寧にやった仕事は、パッと見たら分かります。例えば、土佐弁で目が行き届いた仕事のことを「手のたった仕事」と言うのですが、おそらくその工事を担当したチームの誰かが「手のたった仕事」をしているのでしょう。完成した工事でもそれはわかりますが、施工中の現場だと一目瞭然です。

原 先日、JICAの「草の根技術協力事業」の一環で、ネパールで蛇籠の擁壁を現地の人間と一緒に積み終わったのですが、3か所目の現場が一番きれいでした。昨年施工した2つの現場に比べ、経験を重ねながら各国の技術者、研究者が意見を出し合い、皆が真剣に設計・施工に取り組んだからです。皆がお互いを信頼し暗黙のチーム力が生まれたことで、同じことに取り組んでいるのに出来栄えが明らかに変わりました。

宮内 蛇籠という構造物は、シンプルなのでよけい出来栄えが分かやすいでしょうね。私はああいう構造物が好きですね。

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この記事を書いた人

大石 恭正
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ただのもの書きです。
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コメント(1)

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  • - 2018/07/02 11:42

    若者は考える力はなくなってるかもしれないけど、その代わりに別の能力が伸びてるんだよな。
    IT技術を使う力とか、相手を平等に扱う力とかね。

    2+
    返信する 通報する

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