どんな技術者も創意工夫するが、発注者にアピールできない
取材当日、約束の時間の少し前に礒部組に行くと、高木軍団一行はすでに到着していた。礒部組の宮内部長は「いくつかの資料を作ってプレゼンするんだ」と説明していたところ。完成検査のプレゼン資料だ。「カンペキ社外秘やけどね」と言った。
「そんな文書、見せて良いのですか?」と聞くと、「高木建設さんは仲良しだから良い」と即答した。

宮内保人 有限会社礒部組技術部長
「完成検査のプレゼン」とはなんなのか。平たく言えば、完成検査の際、役所の検査員に対し、工事のポイント、苦労したことなどを説明することだ。
宮内部長がその存在を知ったのは、北海道の株式会社砂子組がきっかけ。「砂子組のプレゼンは、音楽入りの周到なもので、プレゼンを見た検査員が泣いたらしい」という噂を聞き、宮内部長の脳裏に衝撃が走る。
「発注者との信頼関係を深めるツールになるかもしれない」。そう考えた宮内部長は、ツテをたよって手に入れた断片的な資料を基にして、手探りでプレゼン資料の作成に取り掛かる。
宮内部長はプレゼンとの出会いについて、「基本的に完成検査は受動的なもの。現場で『こんな苦労をした』などの話は、こっちからどんどん説明しないと、検査員にはわかってもらえない。そして当時はそんな機会を与えてもらうことなどほとんどなく、もどかしい思いをしたこともよくあった。だから、こちらからアクションを起こすプレゼンには、我が意を得たりという思いがした」と振り返る。
完成検査のプレゼンで、工事評定点アップ?
プレゼンを始めた当初の検査員の反応は、「なんでそんなことするの?」という冷ややかなものだった。プレゼンを行う礒部組社員も「なんでこんな、こっ恥ずかしいことをやるの?」と半信半疑。そんな周囲の反応にもめげず、数年間にわたってプレゼンを続ける。すると、徐々に、プレゼンを待ってくれる検査員が現れるようになった。
「そうなればこっちのもの」。礒部組のプレゼンは、現在まで12年間続いている。プレゼンを課すことにより、社員が自分の現場を振り返り、見つめ直すようになったことも、「有意義だった」と笑みを浮かべる。
宮内部長は「プレゼンをしたからといって、工事評定点のアップに直接つながるわけではない」と言うが、礒部組の高知県優良建設工事施工者表彰12年連続受賞の軌跡がプレゼンを行ってきた期間とピッタリ符合するのは、偶然ではないだろう。
「検査員は結局のところ、工事のプロセスが見たい。だから書類、施工計画書などをチェックし、受け取ったものがプロセスにおいても文句をつけられないものかどうかを確認している。完成検査プレゼンは、彼らの検査の手助けになる」と語る。
「現場ではどんな技術者でも創意工夫する。それぞれの現場にある制約を克服するプロセスで、創意工夫は不可欠なものだ。でも、それを発注者にアピールできる技術者は少ない。それをどうアピールするか。『伝える力』がなければそれはできない。その一方で、日々の業務において地域住民や発注者に対して『伝える力』は、優れた土木技術者かそうでないかを分けるスキルのひとつだ。プレゼン、ストーリーづくりは、『伝える力」を磨く術でもある」と指摘する。
小さい建設会社のものです。私も教えて欲しいです。
叩けよ、さらば開かれん (^_^)
ワイにも教えて
北海道開発局では検査時のプレゼンはダメだということになりました;;
地元企業から中堅ゼネコンを経てスーパーゼネコンで勤めているものです。地元企業は受注するために必死ですね。良い工事評定を得るため技術者のCPDS、創意工夫、社会貢献、記事にあるような本来不必要なプレゼン。自分も地元企業の時は一生懸命やっていましたが、今になって振り返ってみると、稚拙だったなとおもいます。
これも技術者の業務の一環なのかもしれませんが、技術力と言えるものか疑わしいものです。
技術士やコンクリート診断士など高度な資格を取得してより良いものづくりをする方が発注者のためではと思えてなりません。
自分の感覚では、大手になればなるほど工事評定は気にしていないようです。
中堅ゼネコンの頃までは創意工夫やCPDSも会社ぐるみで必死にやっていましたが、今の会社では全く話題にもなりません。
そもそも受注する工事の規模が違うので重きを置くポイントが違うのでしょうが、、、
うちの会社では及第点でいいので設計変更をしっかり見てくれと言う声が聞こえます。
創意工夫などの加点にも力をいれません。
そんなことする暇があるなら休めと言われます。
プレゼンに力を入れるのもいいですが、技術士取得など自己研鑽に励んでは如何でしょうか?
2の方の情報の通り発注者はうわべだけの書類には興味をもっていません。
地元企業に良い点数付けてモチベーションあげないと地方のインフラ整備は誰もしなくなりますよね。どこの地整でも局長表彰取るのは大体地元企業です。それに地域の細々とした工事も地元企業がやってくれるから行政も助かってるわけで、お互い持ちつ持たれつでいい関係が築けてるから、点数を上げてるんだと思います。何千億と言う国家プロジェクトの実績や工学博士や技術士がザラにいるゼネコンが地元の会社に勝てないのですから、地元企業の実力は計り知れないです。