IT&外注による橋梁点検業務の効率化
橋梁点検は建設コンサルタントの仕事だが、実際の点検業務は中小企業が請け負うケースが多い。現地点検と書類作成、写真整理などの内業を1人の担当者が行うケースがほとんどで、深夜に及ぶ長時間労働が常態化している。
現場での点検作業はいまだに、損傷箇所を見つけ、野帳に手書きで記入した後、オフィスでCAD化などの作業を行うのが一般的だ。「実際は現場より内業の方が仕事量が多い。仕事量を時間換算すると、1日16時間働かないと、終わらない計算になる」と言う。人手不足が元凶になっている。
オングリットが提案するのは、IT&アウトソーシングによる橋梁点検業務の効率化。独自開発した画像解析システムによる現場点検の半自動化、クラウドによる点検データの共有、内業のアウトソーシング化を行うことで、人手不足を補う。
オングリットのシステムは、写真までは既存のやり方と同じだが、写真などのデータをクラウドに上げれば、残りの作業からは解放される。つまり、仕事量はほぼ半減する計算になる。
残りの作業は、アウトソーシングする。外注先はシングルマザーなどの就職弱者だ。土木知識もなく、CAD経験もない素人に内業を担当させる。普通はありえない外注先だが、独自開発のCADアプリがそれを可能にする。
歩さんは、全国の橋梁損傷要領をデータベース化した「CADアプリ」を開発。春菜さん協力のもと、経験ゼロでもCAD図面を作成、納品できるものに仕上げた。「アプリ操作は簡単そのもの。線をなぞるだけの作業で、CAD図面にできる」と胸を張る。
アプリをパソコンにダウンロードすれば、全国どこでも作業できるシステムも構築。セキュリティも施した。昨年には、CADアプリで福岡市内の163橋の点検図面を作成。作成したのは留学生。「通常の図面作成よりも高い評価をいただいた」と言う。
この点、橋梁を専門とする建設コンサルタント技術者は「(オングリットのサービスは)現時点では、付加価値や利益率の高いビジネスとは見ていない。ただ、内業に手が回らない点検業者、例えば大手コンサルには救いの手になるはず。これからは技術力のある会社が、大手の受注力のある会社を支える場合が増えていくだろう」などと指摘する。