「国土交通省 政策ベンチャー2030」を設立した理由
――若手の官僚が中心となった国土交通行政の政策提言「政策ベンチャー2030」の取り組みは極めて異例です。どのような経緯で設立したのでしょう?
越智成基(以下、越智) 私は「政策ベンチャー2030」の事務局を担当しましたので、その立場から説明します。国土交通省は2016年から生産性革命に取り組んでおり、省内に「国土交通省生産性革命本部」を設置しています。「小さなインプットでもできるだけ大きなアウトプットを生み出す」という考え方を基礎に生産性向上に取り組んでいます。
この生産性革命本部の第6回会合の場(2017年8月31日)で石井啓一国土交通大臣から、「中堅・若手による中長期的な国土交通行政のあり方に関する政策議論の場を設置」するよう指示がありました。
――大臣指示ですね、メンバーはどのように選定されましたか?
越智 総合政策局政策課が事務局になり、各関係部局の中堅・若手に募集をかけたところ、募集人数を大きく上回る応募があり、その中から、本省に所属する34名、地方支分部局等に所属する103名がメンバーとして決定されました。コンセプトは「未来の兆しをつかみ、社会と徹底的に対話する、2030年に中核を担う世代の政策立案プロジェクト」です。
2017年10月26日に発足し、“1,000人行脚”と題して170超の識者や団体にヒアリングを実施しました。堀江貴文氏や地方の書店の方からも話を伺いました。石井大臣からは役所の中に閉じこもることなく、是非どんどん外に出て、色々な人の考えも聞いてきてほしいという期待の声がありました。
そして、2018年7月30日に「国土交通省 政策ベンチャー2030」最終報告会を開催し、中堅・若手のナマの政策提言として大臣に説明しました。
「国土交通省 政策ベンチャー2030」の提案は、下記の21施策です。
◎たまっていた「宿題」を片付ける
【戦略的な撤退による地方行政経営の健全化】
1.人口減少を前提とした財政需要モデルに基づく予算・税制の見直し
2.インフラ老朽化の度合や経済データ等のオープン化
3.完全自治に基づくゼロからの規制づくり(ゼロベースエリア)
4.立地の観点を踏まえた住宅・土地税制等のメリハリ化
5.中心部のタワーマンションの円滑な更新等の公的位置づけの明確化【定住外国人の日本社会への包摂のための受入環境整備】
6.外国人の居住等の場面における規約条件の緩和促進
7.日本語学習等支援の抜本的強化◎これからの未来を「先取り」する
【「都市交通ビッグバン」への対応】
8.大都市における課税による交通需要制御と公共交通の機能強化
9.都市遊休空間を活用した立体交通拠点(CTS)
10.自動運転の世界に先駆けた普及と効果最大化のための空間整備【新技術のポテンシャルを最大限に発揮】
11.近未来生活総合実現プロジェクト
12.X-Prize型技術開発によるインフラ維持管理の完全自動化
13.インフラ老朽化対策のための専門技術部隊の直営化・機能強化【世界と戦える「質の高い集積」の形成】
14.世界と戦える「質の高い集積」の形成
【公共と個のファジー化】
15.デジタル世代の社会参画機会確保による帰郷機運の醸成
16.全ての世代に向けた都市生活コンテンツへの投資の加速
17.ギグエコノミーによる個人の自由な意思に基づく公共貢献◎「変わり続ける力」を身につける
【挑戦の成功を妄信せず、謙虚に「学習」】
18.キャッチアップ型から失敗を前提とした探索・検証型政策立案へ
19.効果的な危機管理対応のためのアジャイル文化の組み込み
20.実効性を担保したアジャイル組織の創設
21.アジャイルな政策立案を効果的に行うための人材の育成・活用
――最終報告ということは、これでおしまいですか?
越智 これで立ち止まることはなく、新たな政策ベンチャーを立ち上げます。9月下旬に新たなメンバーの募集を開始しました。前回は、中堅・若手がメンバーでしたが、今度は企画官級をメンター(指導役)につけて、更には「政策ベンチャー2030」のメンバーも交えながら、新たなメンバーに政策議論の場を提供したいと考えています。
現場を所管している各課等を巻き込みながら、具体的な政策提言を進めてもらえればと考えております。
衝撃的な「7つの未来シナリオ」
――「政策ベンチャー2030」にはタブーがありません。現役官僚がこれまで踏み込みにくかったテーマにも躊躇せず切り込む大胆さがありました。「未来シナリオ」という提言も示しましたが、こちらは何ですか?
中根達人(以下、中根) 「政策ベンチャー2030」では、具体的なアクションプランを語る前に、「恐らくこういう社会が到来するだろう」もしくは「こういう社会になったらいいな」といった現状や将来に対する認識を述べた「未来シナリオ」を示しました。
【7つの未来シナリオ】
1.「消耗戦による衰退」から「戦略的な撤退」へ
2.「国際観光による外国人との交流促進」から「定住外国人増加への備え」へ
3.「“絶対安全”信仰」から「脱“絶対安全”」へ
4.「デジタルな孤立」から「デジタルによる連帯」へ
5.「(不完全な)見えざる手」から「技術による全体最適」へ
6.「組織における肩書き」から「個人としての信用」へ
7.「後追いの政策」から「アジャイル開発する政策」へ
物凄く良記事
>現役世代である私たちが”何もせずに静観する”ことは罪深い行為であると感じています
この業界に携わっている身として非常に耳が痛い
初耳。
なんでこういうのニュースでやらないの?重要でしょ。
率直にいいんじゃないでしょうか。
まぁまだ具体的なところまでいっていないのでなんとも言えないですが、確かに静観しているのは死んでいるのと同じですね。
ぜひ机の上の想定ではなく現実を踏まえて検討していってほしい。
期待しています。
国交省見直しました
いいね、国交省。市をどうにかしてほしいです。