企業別i-Construction施策の検討
i-Construction施策を検討するにあたって、建設業者をゼネコン、サブコン、地場建設会社の3つに分類した。ここでは分かりやすくゼネコン、サブコン等という名称を利用しているが、この分類は多重下請け構造の概念をもとに特徴付けを行った(詳細は後述する)。よって、個別の企業がどの分類に属するのかは後述する分類にしたがって検討してもらいたい。
結論から先に述べると、各企業が取り組むべき施策は以下のようになる。
1.ゼネコンが取り組むべき施策
・デジタルプラットフォームの構築
・社内運用体制の強化
2.サブコンが取り組むべき施策
・指示、連絡体制のデジタル化
・専門領域におけるデジタル技術採用
3.地場建設会社が取り組むべき施策
・デジタル機器の利用方法とノウハウの蓄積
・専門機材の導入方法の検討
まずはじめに、今回の提言を上述の3つに分類した理由について説明する。
建設業の発注者と受注者の関係、受注者から施工者までの関係を簡略化すると図1のようになる。
この図は、受注生産産業における契約体制に基づいて描かれている(そのため現場の肌感と一致しない部分もある)。
建設業のように労働集約型、受注生産の場合、建物を建てたい発注者と建物を建てる受注者は、基本的には1対1の関係で契約される(ただし、JVや分離発注などのケースではこれを満たさない)。
次に、受注者は生産を開始するために専門業者に分離発注を行う。この発注先がTier1(一次下請け)となり、一般にサブコンと呼ばれる。サブコンは各領域の専門性を持ちながら、同時に各地の建設会社に施工の発注を行う。この場合、施工者は複数に及ぶこともあるため、1対多の契約となる。
これらの関係性を描いたものが図1である。ここで注目してもらいたい点は、各業種の左右にある双方向の矢印である。ゼネコンは発注者とTier1にそれぞれ赤と青の矢印がある。同様にTier1は青と緑、施工者は緑となる。この色の違いは連携の違いを表すもので、それぞれ異なる情報がやりとりされていることを示している。
例を挙げると、発注者からはRFP(提案依頼書)が提示され、ゼネコンからは基本設計書が送られる。ゼネコンはサブコンに設計協力を依頼し、サブコンは詳細設計図を提供する。また現場ではゼネコンは施工図をサブコンに、サブコンは詳細図を地場建設会社に提供する…といった関係性である。
ここで、連携される情報が異なる点に注目して、受注者以降を3つに分類した。名称は混乱を避けるため、現場で用いられる名称を採用している。
この図に載っていない事業者もあるが、重要なのはゼネコン、サブコンといった名称ではなく、やりとりされる情報の連携体制にある。個々の事業者がどの分類に属するかは、連携体制を考慮し決めてもらいたい。
ゼネコンはまず「デジタルプラットフォーム」から構築すべき
ゼネコンは、その特性から発注者から施工者まで一貫して連携を進めなければならない。そこで、i-Constructionを進めるためにまずゼネコンが取り組むべき施策としては「デジタルプラットフォームの構築」が挙げられる。
デジタルプラットフォームとは、高度な情報をやりとりするための基盤となるものだ。これまでITインフラといえば、インターネット回線、社内サーバーといった物理的なものが主であったが、今後デジタル情報を連携させていく上で必要なのは、システムやサービスとの連携である。
だが、恐らく多くの人にとって、こういった名称はイメージがしにくいものだろう。そこで、デジタルプラットフォームをイメージするために、現場事務所の中央に置かれた大きな共有テーブルを思い浮かべてほしい。
そのテーブルの上には工事に必要な資料が全て置いてあり、工事に関わる人全員がそのテーブルを見ることができる。そこには施工図もあれば、書き上げ中の竣工図もある。完成イメージの模型までも置いてある。それを見る人もいれば、それを書き直している人もいる。また新たな資料を書いている人もいる。
つまり、全ての情報がこのテーブルにあるということである。これを一元管理という。誰かが別の場所で違う資料を作ったり、テーブルの上の資料を持ち出したりしてはいけない。このようなテーブルがあれば、全ての情報が一箇所にあることになる。しかも、修正や変更も全てそのテーブルで行われているため、テーブルにあるものはいつも最新のものである。
だが、実際にこのようなテーブルを用意すれば、テーブルの上はごちゃごちゃになり、何がどこにあるのかわかりにくいだろう。しかも、書いている人と見ている人が同時に存在することも考えられる。テーブルの周りは人に溢れて、とても仕事にならない。だからこそ、これをコンピュータ上で作るのである。
非常に参考になる記事だと思います。
発注者側は何をすべきかにも言及してもらえれば尚良かったです。
結局工事は発注者と受注者の二人三脚で行うものですから。
著者です。
ご意見ありがとうございます。
実は私もその点について考えておりました。
一方で発注者と元請け(ゼネコン)の関係性は複雑で、その点の分析が容易に出来ませんでした。私の知識と力不足が原因です。
この点につきましては順に考えをまとめていきたいと思っておりますので、今しばらくお待ち頂けますと幸いです。
長いだけで中身が無さすぎる。
著者です。ご理解頂けなかったようで申し訳ございません。
人には好みというものがございますから、相性が合わなかったということでご理解頂きたく思います。
原価償却とか会計のこと少しは分かってる?
著者です。減価償却と会計については一通り学んでおります。一応、そいういうビジネスもしておりますゆえ、必須でございます。
分かってると聞かれているということは、分かっていない部分があるということと存じます。
よければ、その箇所をご指摘頂けますれば、読者の皆様にもご参考になりますかと思いますのでよろしくお願い申し上げます。
わり、誤字。減価償却
「受注者は生産を開始するために専門業者に分離発注を行う。この発注先がTier1(一次下請け)となり、一般にサブコンと呼ばれると」ありますが、建設業界では設備業者のことを一般的にサブコンと言いますね。
一般的には協力会社、下請けと呼んでます。
それと、ゼネコンが負担せよみたいな記事ですが、ゼネコンはボランティアなのでしょうか?