――開発は難しかった?
大林愼二 「帯塗くん」の開発には紆余曲折があり、一時は商品開発を断念せざるを得ない状況もありました。ですが、開発スタッフの根気と努力により、商品として日の目を見ることが出来ました。
大震災のたびに天井下地が強化されて、天井をどんどん重くしていくことは、万一の危険度合いを増すことにつながりかねません。そんな思いから、極力既存の天井を活かしながらの補強を目指したことが「帯塗くん」の開発につながっています。
――「帯塗くん」の概要は。
大林愼二 ワイヤ工法は天井面のボードジョイント部に繊維入り強化塗料を帯状に塗り、既存の吊りボルト位置にあわせ直径100mmの穴を1,800mmピッチで開けます。専用金具で吊りワイヤを既存吊りボルトにセットし、同じく専用金具で天井受けワイヤと緊結します。あとは専用カバーで穴を塞ぐだけで完成です。ちなみに繊維入り強化塗料の引張り強度は、通常の樹脂系塗料の3倍強です。
一方、ワイヤレス工法はオフィス・公共施設などのライン型システム天井に適用し、繊維入り強化塗料をシステム天井のボードを支えているTバーをまたいで、ボード間を帯状に塗ることで天井面を強化します。施工方法も簡単で、コスト、工期等多くの優位性があります。
――「帯塗くん」を導入するメリットは?
大林愼二 「帯塗くん」には次に示す6つのメリットがあります。
- ワイヤレスタイプは2~3日・ワイヤタイプで5~6日で作業が完了する短工期
- シンプルな工法のため、低コストの実現(天井面設備機器の移動は原則不要で更にコストダウン)
- 居ながら施工の実現(室内養生のみで工事を行えるため引っ越しの必要なし)
- 無臭無害の塗料による安全性の実現(気になるにおいは発生せず、有害物質を含まない無臭の水溶性を使用)
- 美観性の確保(透明な塗料のため見た目に影響せず、天井受けワイヤには天井ボードと同系色のコーティングワイヤーを使用)
- 技術性能証明を取得(一般財団法人日本建築総合試験所(GBRC)より「建築技術性能証明第17-27号」を取得)
一部は施工条件により異なりますが、従来工法よりもさまざまな優位性があります。
鴻池組、鴻池ビルテクノ、桐井製作所、日本樹脂施工協同組合で「CSFP工法協会」を設立
――「CSFP工法協会」の設立については?
大林愼二 開発者の鴻池組、鴻池ビルテクノ、桐井製作所、日本樹脂施工協同組合が参加しています。この塗料自体は、日本樹脂施工協同組合が開発したものです。桐井製作所は下地のメーカーですが、下地のプロに入ってもらう事で商品開発の実現性をより高める意味もありました。これら各部門の専門的知識を有する人材を糾合出来たことが「帯塗くん」の開発につながり、今後も更に進化させて行きたいと思っています。
開発に際しては、鴻池組の技術部門・施工部門・設計部門や桐井製作所の技術部門、日本樹脂施工協同組合の技術部門により、さまざまな実験や検証が行われ、GBRCからの性能証明の取得につなげ、商品として昇華されていきました。今後は鴻池組営業部門を中心として拡販に努めていきたいと思っています。
――「CSFP工法協会」に入りたいという会社もいるのでは?
大林愼二 基本的にこの4者で開発したので、これ以上の企業の加盟をお願いすることは考えていません。ちなみに、繊維入り強化塗料の塗布は、日本樹脂施工協同組合の会員で資格を取得した方に限っています。また専用金物関係は、桐井製作所の特許商品です。さらに、CSFP工法はGBRCから性能証明を受けている認定工法ですから、塗装工事や金物工事もしっかりと管理しなければならないからです。
――「帯塗くん」を導入すると補助金の対象にもなるようですね。
大林愼二 第三者機関の技術性能証明を取得しているため、補助金が認められやすいと思います。防災拠点施設や集会場であれば国土交通省から、学校施設関係であれば文部科学省から、病院や老健施設であれば厚生労働省から、それぞれ補助金の対象になります。また都道府県によって異なりますが、こちらも補助金が得られる場合もあります。
ただし、国が特定天井を補強することを指定し、補助金が得られるとしても、一気には対策は進みません。それはやはり、学校法人や企業でも多くは自己資金で賄わなければならないからです。
――「帯塗くん」への問い合わせは多いですか。
大林愼二 学校法人や工場からは非常に多くあります。学校法人は生徒の安全を第一に考えますから。そのため、施設の安全管理に様々な措置が行われていますが、一番多いのは「特定天井」の撤去です。

和洋学園南館食堂 天井落下防止処置工事
「帯塗くん」の発想は、「危険だからといって安易に撤去することのではなく、何とか既存天井を生かしながら、危険を回避できないか」が着想の根底にあります。こうした見地からも、学校等で安易に天井を撤去することは、教育環境や情操教育にも影響を与えかねないと思っています。
一方、工場においては東日本大震災で天井が落下したことで事業継続が困難となり、天井が復旧するまで操業できなかった事例が数多くありました。BC(事業継続)の観点からも、「帯塗くん」で天井の落下を防止し、まずは避難、さらには早い段階での操業再開を実現し、天井の復旧は段階的に行っていくことが重要であると思っています。この場合でも、地震保険の適用は可能であることも確認しています。
権力を振りかざす世間知らずの勘違い野郎どもは本当に消えていただきたいです。