土木と人文社会科学を融合した「新しい土木」の追求へ
――大学で土木の先生をされているわけですが、「土木の勉強はつまらなかった」というお話とどうつながるのですか?
藤井聡 僕が大学で学んだ土木は、先人たちがつくった土木です。だから僕は、「土木の学問の内容を、僕がおもしろいと思うものに拡張しよう!」と思たんです。
子供の頃から慣れ親しんだ哲学や経済学、社会学、民俗学などを取り入れた土木を提唱して、今、そういう領域の土木の教授をやっているわけです。だから今は僕は「土木入って良かった」と、心の底から思てます。
なぜなら、土木が取り扱う対象が森羅万象だからです。地域全体、国家全体が対象じゃないですか。これが電気や機械、建築とかとの大きな違い。しかも、「役に立つ」ってことをまじめに考える。
そんな世界全体を対象とした学問である土木に、もっともっと「役に立つ」ための人文社会科学を注入する、っていうのが僕が今、やろうとしていることで、「こんなチャレンジングな仕事はないんじゃないか」と思てます。
――そういう考えに至ったのはいつ頃ですか?
藤井聡 学位をとってからですね。30才ぐらいのときです。
学位論文をとるまでは、まずは、先人達が作り上げた学問体系である土木工学で認められる必要がありますから。それを学んで、先人たちから認められる研究業績を上げる必要がありますよね。
当時の研究は、正直言って、僕にとっては退屈なものだったですけれども、一人前になるためには、一生懸命勉強して、研究したわけです。
12年間土木を学んで研究して、おかげさまで、土木学会から若手の賞もいただいたりしました。指導教授のおかげもあって、世界的にも認められるいくつかの研究成果を挙げることもできました。
こうした学界的な是認は、僕にとっては受験勉強に合格するのと同じことで、好むと好まざるとにかかわらず、それをクリアしなければ次のステップに進むことができなくなる、当たり前のハードルだったわけです。
だから、学位をとって、学者として、一応学会から一人前だと認められるまでは、先人から「立派だね」とほめてもらえるよう頑張りました。
でも、学位をとった直後に、指導教授に相談の上、スウェーデンのイエテボリ大学の心理学科に留学しました。本当にやりたかった人文社会学の一つである心理学の研究をするためです。
そっから、土木とその他の学問の融合という、新しい学問、僕のアプローチに基づく土木の学問の探求が始まったんです。
――それはどのような学問でしょうか?
藤井聡 通常の土木は、自然科学の応用としての土木工学というイメージだと思うんです。土木工学の基本にあるのは力学で、それをベースに土木構造物をつくるのが土木工学だと。
ただ、実はこの、構造物をつくるのだけが土木工学だっていう認識は、土木学会設立当初の時点で、すでに否定されていたんです。
――そうなんですか?
藤井聡 土木学会初代会長に古市公威先生という方がいました。フランスに留学して、東京大学の教授になって、土木学会の初代会長になった方です。その古市先生が100年前に行った会長就任演説が残っています。
古市先生は、その演説の中でまず、「当時工学会から電気などいろいろな学会が抜けていったが、土木学会だけは、森羅万象を扱う学問なので、工学会から抜ける必要がなかったんだ、だから独自の学会をつくらなかったんだ」「むしろ、将に将たる者が土木工学者であって、すべての学問をやるのが土木工学者だ」と言いました。

古市公威(ふるいち・こうい)土木学会初代会長 / 土木学会 http://jsce100.com/furuichi/fulltext01.html
そして、「土木が『人』に関わる学問である以上、行政学や経済学といった人文系の学問もやらなければならない、今の段階で、どれだけのことをやれば良いのかはわからないけれども、ありとあらゆる人に関わる学問、つまり、様々な人文系の学問も導入していかなければならない」という趣旨のことを、会長就任演説で声高々に主張したのです(古市公威 土木学会会長就任演説全文(土木学会HPより))。
僕の研究はまさに、「これ」なんです。
僕が今、京都大学の土木工学教室の中でやろうとしているのは、古市先生が「どれだけのことをやらないといけないのかわからないけど、とにかく、人文系の学問も徹底的に導入していかねばならない」と主張したことを字義通り受け取って、まじめに引き継ごうとしている、という話なわけです。
現代の土木には、「土木計画学」というがあり、一応、ここで文系的な学問をやってきたという流れがあります。
ただ、これまで先人たちがやってきた土木計画学の学問範囲は、古市先生の宣言した学問の範囲と比べると、ずいぶんと狭いものでした。
人文社会科学には、経済学があり、その中には、典型的な土木計画学の理論であるB/Cなどの費用便益分析以外にも様々なものが存在するし、社会学、心理学、民俗学、歴史学など、ありとあらゆる学問があります。哲学だってベースにしなければなりません。大学で教える人文社会科学の中で、「土木に関係のない学問は一つもない」と言って良い。
そういうパースペクティブが古市先生にはあったんです。僕が今、やろうと思っている学問のイメージはそこなんです。
――古市先生のパースペクティブは、その後失われていったのですか?
藤井聡 失われていったんですよねえ。やっぱり技術ばかりに目がいってしまったのかも知れません。
ただ、そんな中で戦後、京都大学の先人たちも含めた何人かの先生方が中心となって、土木計画学という領域をつくり、土木に人文社会学を取り入れ、土木政策を考える学問が生まれました。経済学やオペレーションズ・リサーチなんかを取り入れた計画学なんですけどね。
ただ、それに加えて、例えば京都大学には佐々木綱先生の「風土工学」もありました。風土についての学問を土木に接続しようという試みです。風土工学は、土木の景観に関する分野につながっていきました。
そうやって、土木をフィールドにした人文社会科学の発展というのは、ほそぼそと続いていったわけです。ただそうは言っても、まだまだ拡張しなければならない余地が膨大に残されている。僕はその部分を学問の中心に据えて、土木をどんどん拡大しようとしているわけです。
すげえ!良い事言ってる!土木の本道を心に今日も汗かきます?
藤井教授は教科書に載るレベルのガチの学者ですよね。
倫理学も学ばれていたので、橋下徹のペテンにも気付いたのでしょう。
私も勉強すればするほど、細分化されていくのが嫌でした。
数学1,2やリーディング、ライティングなど…。
小学校の頃の国算理社が許容範囲だったので、大学も一つのジャンルしか学べ無いようで、嫌でした。
藤井教授の存在をもっと早く知っていればなぁと、残念でなりません。
学問とはこうあるべきだと考えさせられる
話は難しいけど、土木に携わる人間なら読んでほしい
土木関係のモノ書きなのに、築土坑木の思想って動画見たことないのかね?
土木マネジメントみたいな感じがした。
国土強靱化って、ただインフラの耐震性を上げることだと思ってたんですけど大間違いでしたね。中・長期的なインフラ整備計画は確かに必要と感じました。自分が定年を迎えたときに、今のインフラが健全な状態にあるとは思えない。
藤井先生のユーチューブ面白かったです。
あと①はもう少しちゃんと記事読んだほうがいい。
ほかの媒体でもちゃんと丁寧にいろいろ答えていますよ。
少し視野が狭いのではないでしょうか
災害復旧工事に携わり8年になろうかとしています。先日の台風19号で被災3県は沿岸ばかり工事したため内陸部の携帯基地局が次々に被害を受け、今もなお、夜間工事で傾いた電柱を修理しています。ある日突然水が出無くなったり、電気が止まる、何起きても公共インフラはおかしくありません。水道事業の民営化やもう少し議論する必要があるのではないでしょうか?
自分はとある官庁で20年ほど土木担当者として働いてきましたが、公共工事では単年度予算というのがネックでしたし、構造物を造る際には周囲の景観にマッチするとか、環境に優しい部材を使用するとか研修や会議では理想論で論じられますが、結局実際に設計する際には徹底的に経費削減を求められ、安全率ギリギリまで規模を削られたり、少しでも安い部材の使用を会計検査院に求められたりで、歯痒い思いばかりでした。
結局すべては予算が最優先で、いつもつまらない仕事をしてたという思いです。
将来どのようになっていくか自分には予測できませんが、もう少し担当者が自分の考えで色々付加価値を付け加えたり、アイデアを生かした設計ができるようになれば土木事業に携わることへのモチベーションが上がり、より良い日本を造ることへ繋がると思います。
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先進国並にやらないといけないと筆者は言っているのですが?
アメリカやヨーロッパがやってる事全否定ですか?