石垣に使う石は、人力で割る
まずは、協議会の市川さんに石垣修復の流れについて話を聞いた。
研修では、石垣修復に必要な3つの伝統技法を教えるという。石を割って加工する技法、石を割るための道具を作る技法、そして石を積む技法だ。
「簡単な修復の流れとしては、まず崩れた石に番号を付けます。次に石垣照合システム(熊本大学が開発したコンピュータビジョン技術と、凸版印刷所有の崩落前の熊本城のデータを使い、石材の位置を推定するシステム)で石の位置を特定し、石垣の図面を作ります。
その図面をもとに、石工さんが現場で確認しながら積んでいきます。元の石が無い場合は現場で作ります」

石垣修復の図面
石垣に使う石はかなり大きいが、人間の力だけでどうやって割るのだろうか。
「ノミを使って石に矢穴と呼ばれる穴を掘り、その穴に鉄で作った矢(クサビ)を入れます。そこを玄能(大型の金づち)で何度も叩いて割る。そうすると、最低限の力で割ることができるんです。安土桃山時代にお城の石垣づくりに導入され、熊本城にも採用されたようです」

矢穴を掘っている様子

穴に矢を入れる

石を割る様子
現代の土木では、石材を割るときは機械を使う。伝統的なノミや矢は売られていないので、石工が自分で作る必要があるという。
「熊本城の石垣の石一つ一つに、矢で割った跡がたくさん残っています。もしドリルで石に穴をあけてしまうと、まっすぐな穴ができ、現代技術で作ったことが一目でわかってしまうんです。
伝統的な道具は鉄の棒を熱して柔らかくして、叩いて作ります。刃物を作るときと同じ要領で、かなりの時間がかかります」

石を割る道具を作っている
文化財石垣保存技術協議会は、各地の城で同様の研修を行っているという。今回は、なぜ熊本城で研修をすることになったのか。
「被災現場を実際に見ながら研修ができるからです。前回は姫路城で行ったんですが、他の城だとここまで壊れていないので、修復がすぐに終わってしまうんですね。
熊本城なら修復まで20年はかかるので、目の前で被災状況を見られます。昨年からここでやりたいと、熊本城にお願いしていました」
研修では、熊本城二の丸北側にある”百間石垣”の一部を二の丸広場に持ち込み、修復するという。
「元は高さ10mくらいの石垣です。2006年度の時点でかなり膨らんできていて、このままでは崩れると、一度解体して積み直したようです。熊本地震でそこがまた崩れてしまい、現在はこれ以上崩壊しないように、モルタルで吹き付けをして保護しています」

保護された百間石垣
修復した石垣は今後どうなるのか。
「二の丸広場にこのまま置いておき、模型として一般公開する予定です。普段、石垣の裏側や側面は見られませんが、これだと全て見られますから。この石垣の修復をするのは修復計画の後半なので、最後にこの模型の箇所を修復するときに、石垣の中に戻します」
石工のお仕事に関して以前より興味を持って関連の記事を見ていました。熊本城の修復に関しての記事も興味深く拝読いたしました。
というのは、うちは大阪ですが、家も周りも石垣で囲まれていて、今でも前ほどではないですが、残っています。
今回近所からのプレッシャーで完全に取り壊す事になり、新しいフェンスにすることになりました。
非常に残念です。また、何よりも石を捨ててしまうのが勿体なく、修復現場などで使うことはできないかとネットで探していたら、記事に出会いました。