石の積み方に、石工の個性が現れる
気が遠くなりそうなほど地道な作業だが、意外にも現場では石工同士お喋りしながら、和気あいあいと作業しているという。
「正直きついときはあるんですけど、一歩一歩進めていかないと復旧が最後まで行きつかないので。時間がかかっても丁寧にやることを大事にしています。ちょっとでも高さが違うと下からやり直しとかになるんですよ。何回も一回はめてばらして、またはめてという感じで。ただ、僕は地道な作業が好きなんですよ。最終的に積み上がったら、『おお~』となりますね」
休日は日曜日くらいだが、体は慣れているという。
「腰は痛いですけどね。重いもの抱えたり、ちょっとしたことでひねったりすることも。なったらなったでしょうがないけど、体に気を付けて作業はしています」
石工の仕事の楽しさは何だろうか。
「自分の個性が現れるところじゃないですかね。石を積むにしても、人それぞれ積み方が違うと思うんですよ。これ、あの人の積んだ石じゃないの?みたいな。
普段は河川のブロック積み工事とか、建築ブロックなどの二次製品を積んでいく仕事をしています。普通は切るより積むほうが多いですね。石だと自分で加工しないといけないですが、自分で作れたほうがやりがいがあります。自分の作った石が扱えるわけですから、ブロック塀より石垣のほうが、それはもう全然嬉しいです」
熊本城の今後の修復に向けて、石を加工する技術を高めたかったという中尾さん。研修はどうだったのか。
「慣れてる石工さんはノミとセットウ(小型の金づち)の使い方が本当にすごいんです。石は慣れていないとなかなか割れないんですが、慣れてる人が叩けばぽんぽん割れる。割れた石を平らにして、角をとるのも速いです。もちろん積み方のノウハウも学べました」
20年以上掛かっても、全部の石垣を修復したい
熊本で生まれ育ち、ずっと熊本で石工をしてきた中尾さんには、熊本城の修復には並々ならぬ思いがある。
「今回、熊本城の修復の仕事ができたのは、熊本城に前から携わっていた自営仲間が誘ってくれたからです。熊本城の修復をしてるって言うと、やっぱり周りに応援されますね。この先ずっと残るので、恥ずかしくないようにやっていきたい。
天守閣修復の仕事が終わって、今は別の仕事をしてるけど、熊本城の仕事が始まればまたやりたいです。次は飯田丸あたりの修復があるんじゃないですかね。
今の状況だと、20年以上かかるんじゃないかと思います。けど、最終的には全部の石垣を修復できたらいいなと思います」
復元された大天守の外観は、10月5日から特別公開が開始されている。
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石工のお仕事に関して以前より興味を持って関連の記事を見ていました。熊本城の修復に関しての記事も興味深く拝読いたしました。
というのは、うちは大阪ですが、家も周りも石垣で囲まれていて、今でも前ほどではないですが、残っています。
今回近所からのプレッシャーで完全に取り壊す事になり、新しいフェンスにすることになりました。
非常に残念です。また、何よりも石を捨ててしまうのが勿体なく、修復現場などで使うことはできないかとネットで探していたら、記事に出会いました。