アンカーボルトの再緊結をどうするか?
それよりもこの工事の肝は、
- 梁を突いて持ち揚げた際に、土台の存在しないH鋼の柱がUFOキャッチャーのクレーンのように内側に狭まってしまわないように細工すること
- 解体した基礎の中に存在するアンカーボルトの再緊結をどう行うか?
この2点を現調した瞬間に、どんな方法で出来るか?を自分の引き出しの中から出せるかで、その職人の技量が測れます。
まず1ですが、これは足元を曳家の要領でH鋼と専用の金具で結ぶことで固定します。
ただ勘違いしてはいけないのは、このH鋼で建物を持ち揚げるわけではありません。このプレート上で結ばれたH鋼は仮の土台のように見えますし、実際、そのように使えば大量の枕木を持ち込まず、もっと簡単に作業が出来るかも?な誘惑に駆られます。
ですが、実際にはシャッターの枠や2階に上がるための階段など様々な障害物があります。
これらを出来る限り、解体しないで再利用できる方法を採ること。さらには、スラブが2階、3階(屋根)に乗った上部が重いものを揺らさないように持ち揚げることを考えて、この足固めのようにつないだH鋼には負荷はかけないようにします。
そして、施工中、ご家族がお家を使用されることが決まっていましたので、万が一の地震などが来た時に耐えられる細工をしておかなくてはなりません。
2のアンカーボルトの再緊結は、これはもしハートが弱い?あるいは儲けに走っている親方であれば簡単に溶接してしまいます。
そうですよね。溶接は万能ですし、すごく便利です。でも、ここで中ほどで切断したアンカーボルトにダイスでネジ山を斬って造って、長ナットで緊結した方が「せん断力」も含めてはるかに強いと思いませんか?
いや思いますよね。でも、実際には枕木を組みまくった基礎下を這って行って、そこで画像を見ていただくと判りますが、直径18mmほどのボルトにダイスを充ててネジ斬りをする大変さ、手間を考えると、建築士さんとかが介在してない(もしくは居ても、施工不可能)現場であれば、普通はこれをやろうとは考えないと思います。
実際、このアンカーボルトの再緊結(柱6本、ボルト12本)に4人工+材料代2万円、ダイスと長ナットの取り寄せのために3日待機したり手間をかけました。
それでも、この悪条件の中でネジ斬りをするのはラチェットが斜めになってしまったりして、簡単には斬れませんでした。
マジメな施工が評価されるように
で、今回の記事で一番強く言いたい部分ですが、このお家は道路側に向かって最大40mmの沈下をしていたんです。
建物は持ち揚げると早く揚がったほうに何ミリか動きます!すると、プレート穴から落とし込む新たな緊結用の全ネジボルトと既存のアンカーボルトをずれることなくぴったり「繋ぐ」ことは相当、難易度が高いです(たぶん)。
でも、これはコンクリートで巻かれてしまうと見えなくなる部分ですし、ここでこうして解説しなければほとんどの方に気がついていただけない手間です。
自分はHPの冒頭の挨拶文にも書いてありますが…かなり不器用です。なので、自分が知る範囲で「こうしたほうがより良い工事になるよな」と思うことは出来る限り施工させていただきたいです。
Facebookと連動して読んでくださっている方の中には、「曳家岡本は漫画にも出て、建築業界の著名人を集めての懇親会とかも元気にやっているなー」と思ってくださっているかも知れません。
でもそれは、月額30万円ものweb広告費を打てるような利益も無く、トラックのドアに貼っていた屋号を書いたマグネットシールがどこかで落ちてしまってもまだ再注文できる余裕の無い零細事業者の小さな努力です。
真面目に施工していくことがきちんと評価していただけるように今年も頑張ります!
どうぞよろしくお願いいたします。
H網ではなく、H鋼ですよね?
あー本当ですね。
恥ずかしいです。汗。
編集の方も気が付いてくれよう(^^)
昼休み中に恥ずかしくて、汗出てます。
ありがとうございます。