エアロダインのビジネスモデルは「オンリーワン」
――エアロダインのビジネスモデルとはどのようなものでしょうか?
伊藤 ドローンによるインフラ点検や現場モニタリングの社会実装が、マレーシアでいち早く進んだのは、ドローン飛行に関する規制が緩かったことと、変化に対する対応が早かったからです。これは発展途上国のメリットです。
日本に限らず、先進国になればなるほど、規制や既得権益が存在するので、難しくなります。シリコンバレーでもムリです。いきなりAIによる解析はできないので、人手に頼らざるをえないわけですが、シリコンバレーは人件費が高いからです。ドローン点検サービスは、発展途上国ならではのビジネスモデルです。

現場モニタリングのプラットフォームについて説明する伊藤さん。
これはある会社の現場モニタリングのプラットフォームの画像ですが、緑の部分がドローンのアイコンです。ここをクリックすると、定点観測されたデータが出てきます。オフィスから出ることなく、現場状況を確認することができます。日本にいながら、海外の現場を確認することもできます。
日本のゼネコンには、海外の現場を持っている会社もあります。海外の現場を遠隔モニタリングするのに、日本からエンジニアが現地に飛ぶと、それだけでかなりのコストがかかります。エアロダインには、世界各国にスタッフが常駐しているので、スタッフが現地でドローンを飛ばし、オンラインでデータを送ることができます。これは「オンリーワンのサービス」だと自負しています。
「JIWが前で、エアロダインが後ろ」
――JIWとの関係は?
伊藤 われわれは一昨年10月に「CEATEC」に出展しました。そこで、当時NTT西日本の社員で、現在ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)代表取締役社長CEOである柴田巧さんに初めてお会いしました。そのときは偶然でした。彼はそのころ、NTT西日本としてインフラを点検する新しい会社を立ち上げる準備段階で、具体的なサービスを模索しているところでした。
柴田さんにとっては、エアロダインと組めば具体的なドローンサービスが手に入る。私にとっても、自前インフラを持つ会社と組みたいと考えていたので、お互いのニーズが合致したわけです。展示会場で40分ぐらい立ち話をして、その場で「一緒にやろう」という話になったんです。
その翌週、打ち合わせのため、大阪の柴田さんを訪ねました。そこで、NTTのインフラだけでなく、電力やガス、橋梁などの「日本全体のインフラ点検がしたい」という話を聞きました。私は非常に共感を覚えました。早速、マレーシアのHQに「この会社と組むべきだ」と伝えました。ただ、本業務提携は、新会社がエアロダインジャパンと独占的な関係を構築するような内容だったので、最初はだいぶ揉めました。
JIWと業務提携を結んだのは、その9ヶ月後の昨年7月です。JIWと組むというのは、私の腹では決まっていたのですが、絶対的な確証があったわけではなかったので、エアロダインが業務提携を認めてくれるのかはギャンブルでした。

エアロダインの伊藤社長(右)とJIWの柴田社長
われわれの業務提携の中身を一言でいうと、「JIWが前、エアロダインが後ろ」です。表向きは基本的にすべてJIWとして事業展開していきます。私が名刺交換する際は、JIWのエヴァンジェリストの名刺を使います。ただ、世界的な知名度はエアロダインのほうがはるかに高いので、海外での会議や交渉の場などでは、エアロダインの名前を前に出します。
世界ではすでに、「ドローンを使うと、未来はこうなる」という明確なビジョンを持って、ドローンサービスが展開されていますが、日本はまだそこまで到達していません。私はドローン点検のエヴァンジェリストとして、ドローンによってどのような未来が訪れるのかについて伝えるため、日本国内で講演活動を行っています。