建設業界の現状は「サスティナブルでない」
――日本の建設業界には「どんなに良いモノでも、ドラスティックに変えるのはダメ」という風潮があります。
伊藤 われわれは、「匠の技術」を否定するつもりはないんです。建設業界を見ると、若い人がドンドン減っています。IT業界など給料の良い業界に人が流れていくと、将来的にインフラを支える人が本当にいなくなる可能性があります。
そこで、我々は現在インフラ従事者が保有する「匠の技術」のデータ化(IT化)を促進していきたいと考えます。
――なぜ若い人が減っているのでしょうか?
伊藤 建設業界に従事する方は高度な技術や知識が求められる一方で、現場周り等の泥臭い仕事が非常に重要であるため、今の若い方は敬遠してしまうのだと思います。
日本人の若者が現場で集まらないのであれば、求める先は外国人労働者と考えるのは建設業界の現状からみると自然な流れに感じます。
別に、外国人労働者がダメだというわけではありません。シンガポールのインフラを支えているのは外国人です。日本もいずれそうなるかもしれません。今までのやり方を否定するつもりはありませんが、今のやり方がサスティナブルではないと言っているんです。
ただ、ITに置き換えられる仕事は置き換えるべき、というのが私の考えです。土木のプロの方々にはやるべき仕事がたくさんある。ドローンは、プロの方々が本来やるべき仕事をするための支援ツールなんです。
私の野望は「自治体が持つすべてのインフラのデジタル化」
――今後の目標は?
伊藤 JIWが設立されてからの半年ほどの間に、いろいろな自治体、民間企業とコラボして、様々なプロジェクトが始動しています。ただ、これらのプロジェクトの成果が出るのは、早くとも来年だと見ています。われわれには、ドローン飛行や画像解析をするノウハウはありますが、点検の対象物自体については、良くわからない部分があります。ドローンサービスには、事業者と一緒にやらなければなりません。その辺のすり合わせに時間がかかるんですよ。
ドローンはデータビジネスと言いましたが、日本の場合、現場で飛ばすだけのツールだと誤解しています。ある自治体からドローン点検を発注したいと言われたのですが、「それはDaaSなので、やめてください」と言ったことがあります。日本では、点検のツールの一つとして、ドローンを使うかどうかというのが現状です。われわれとしても「まずはそこから」と考えています。
われわれが最終的に目指すのは、DaaSだけでなく、ポテンシャルの高いSaaSを実現することです。SaaSによって、バックオフィスを含めた、企業のインフラにまつわるデジタルトランスフォーメーションが実現するんです。
私の個人的な野望は、自治体が持つすべてのインフラ、アセットのデジタル化です。今をデータ化して終わりではなく、その後も定期的にデータを蓄積します。それらのデータは、プラットフォームにすべて入っていて、例えば、マップ上の橋梁をクリックすると、橋梁に関するすべてのデジタルデータが出てくる。そういうシステムをつくりたいと思っています。
このシステムがあれば、大きな災害が起きたときに、「災害以前のこの地区はどうだったのか」という精細なデータがあるので、復旧作業などにも役立てることができると考えています。
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