「GCP設置」というドローン測量の意外な落とし穴

※現場に移動しました
田島さん 基本的に、ドローン測量というのは、
- UAV(ドローン)による自動飛行、写真撮影
- GCP(標定点)の座標値を計測
- SfM解析により3次元データを得る
という、3つの工数を踏むわけです。このうち、1と3に関しては、ある程度条件さえ入力すれば、機械作業で済むのですが、2に関してはどうしても人力作業で、現状では削減できない工数なんです。今回の工事でいうと、420分もの時間が掛かってしまう。
ここを削減して、「GCPレスのドローン」を活用することで、ドローン測量の生産性をより向上させようというのが今回のPRISMでの検証になりまして、ドローンソリューションを提供している芝本産業株式会社(東京都中央区)とコンソーシアムを組んで取り組んでいます。
――すみません、GCPってなんですか?
田島さん 標定点と呼ばれるもので、測量をする際の基準となる地上点の緯度経度を調べて、その位置を明確に示すことで測量精度を向上させるために写真中に写し込ませるものです。
通常、ドローン測量では、撮影した写真に自機の位置情報をひも付けることで、座標を持った3次元データを作成するわけです。ただし、GNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)が位置情報を取得して写真を撮るまでにタイムラグが生じるので、計測結果に誤差が生まれてしまうんです。
どのくらいの誤差になるかというと、0.05秒のタイムラグで約25cmズレるんです。そうなると、使えないですよね。だから、地上にマーカーとなる標定点(GCP)を設置しておいて、あとで座標を照合して位置情報を補正するのが一般的なんです。

当現場に設置してある標定点(GCP)
ただ、国交省のマニュアル(「空中写真測量(無人航空機)を用いた出来形管理要領(土工編)」)では、100mごとにこの標定点(GCP)を設置することと定められています。
なぜ100m間隔かというと、ドローン測量の場合、高度70mを飛行するのですが、カメラの画角に納まるのが大体100m前後なんです。つまり、100mに1枚標定点(GCP)を置いておけば、どこを飛んでいても必ず画角に標定点が入ることになります。すると1枚1枚の写真の座標が決まって、精度も良くなる、ということです。
「さらなる生産性向上」のためにはGCPレスは必至
――それでは、ドローンを使っているすべての現場で、標定点を置く苦労があるんですね。
田島さん そうなんですよ。ただ、ICT施工が進んでいる現場って、規模が小さい現場が多いんです。例えば、5,000m3くらいの盛土なら、4つくらいの標定点を置けばいいんです。だから、すべての現場で苦労されているわけではないかもしれない。
しかし、今回のような大きな現場だと、膨大な数の標定点(GCP)を置かなきゃいけない。そのため、今回の現場では、オーストラリアのKLAU Geomatics社製の「KLAU PPK」という後付けの補正システムを搭載したGCPレスドローンを活用することでタイムラグを0.001秒に抑え、標定点(GCP)を設置しなくてもいいドローン測量を目指しています。

「KLAU PPK」を搭載したドローン
ただ、ドローン測量に際して、標定点(GCP)の設置が必要だという認識がある方は意外と少ないんです。「ドローン飛ばして、撮ればいいんでしょ」って方も多い。
もちろん、標定点(GCP)を置く労力を加味しても、従来よりも測量は効率化されますよ。それまで、トータルステーションで地形の変化点を測っていって、それを図面に起こして、そこから断面図を作って…という手順を踏んでいたわけですが、3次元データを使えば図面に起こすという概念すらなくなるので、すぐに断面図も作れます。
ただもう一歩、”さらなる”生産性向上を目指す上で、標定点(GCP)の設置というのは極めて厄介だったわけです。
――なるほど。
田島さん それに、標定点(GCP)って生産性以外の部分でも問題があって、設置作業って意外と危ないんですよ。
標定点(GCP)って、施工の途中途中で置いて、計測もその都度やらないといけない。でも、現場って、複数のチームで平行して進めていくわけじゃないですか。だから、建機は稼働しているし、人が立ち入ると不安全な場所もあります。そういう中で、標定点(GCP)の設置や計測を行うことには、非常に注意を払う必要があるんです。
――GCPレスのドローンを導入したら、協力会社にはどんな恩恵がある?
田島さん 簡単な丁張は協力会社さんにお任せすることもありますが、これがなくなるので、そのぶん別の作業ができるようになります。そうすれば、現場の出来高も上がって、利益も生みやすくなります。
ドローン飛ばすだけで全部完結するって思ってるおっさん多いよね
いい記事です。評定点のいらないドローンの開発は急務です。
コンサルも3次元設計は急務です。
発注者には、請負金額をあげて欲しいもんです。変更金額も支払うシステムが必要。
日本の場合、役所に技術者がいるのが、一番の問題。