新幹線投資はデフレ脱却につながる
――新幹線整備の財源をどうお考えですか。
西田昌司議員 建設国債です。国は、新幹線のためにポンと30兆円投資すれば良いんです。民間投資も当然増えます。今、民間投資が増えないのは経済の先行きが不透明だからです。国は「日本経済はこれから先細りだ」と言ってきました。ところが、実はこれが一番の間違いなんです。
国はバブル崩壊後、不良債権処理を強行しましたが、私はこれは大きな失敗だったと考えています。民間企業の多くはこれに懲りて、「銀行からお金を借りて、投資するのはイヤだ」と考えるようになってしまったからです。実際、どんなに低金利でも、お金を貯める一方になっています。すると、「民間投資が減っているのだから、国もお金を節約すべきだ」という間違った世論が蔓延しました。
この世論に押されるカタチで、国は予算を小さくし、人員整理なども整理しました。その波は地方にも及び、地方経済、財政が疲弊しました。景気が良いのは、東京をはじめとする大都市圏だけです。容積率を緩和して、今でも新しいビルがどんどん立っています。
私は、バブル以降の国の経済政策はデフレ政策であり、実体経済を見れば、まったくのデタラメだったと考えています。日本の再生のためには、デフレ、緊縮政策からの脱却が不可欠です。脱却するためには、財政出動が必要であり、その代表的な例として、「全国の新幹線計画を進めよ」というのが私の持論なんです。
国債残高がゼロになると、国民預貯金もゼロになる
――旧大蔵省はかつて「新幹線はバカ査定」と言ったそうですが。
西田昌司議員 そう言う彼らが「一番バカ」なんです。財務省は、財政赤字が続いたら、国家が破綻すると本当に考えていますが、それは間違いです。彼らはどうやら本当に「破綻する」と思い込んでいるようですが、国家財政の仕組みをまったく理解していないと言わざる得ません。
民間企業は、返済できない負債を抱えたら、破綻します。ところが、国家は債務が自国通貨建てである限り、国債発行により債務返済できるので、破綻しません。破綻しないというより、破綻できないんです。
こう言うと、「国債を発行し過ぎれば財政破綻する」という批判が出ますが、それもあり得ません。なぜなら、市中銀行は、新規国債が発行されれば、金利が付くので、必ず買うからです。
財務省の言う通り財政再建をするのであれば、1000兆円を超える公債残高をゼロにしなければなりません。税金を上げ、政府の支出を減らす続ければ、いずれゼロになります。ところが、国債残高がゼロになると、民間の預貯金も100兆円分なくなります。政府の赤字は国民の黒字だからです。「国民の預貯金を1000兆円なくしてなんの意味があるのか」という話です。
財務省はこういうバカなことを実際にやりました。1946年に財産税をかけるため、新円切替えを行いました。新円切替によって、それまでの円は使えなくなるので、国民はこぞって旧円を新円に切り替えましたが、その際、政府は最高税率90%の財産税をかけました。1万円を切り替えたら、1,000円しか戻ってこないわけです。その結果、国民は大貧乏になりました。
財務省は今でも、この財産税について、インフレを抑えるために通貨量を減らしたと説明していますが、大間違いです。当時の国債残高はGDPの2.5倍ほどありました。戦時国債を大量に発行したからですが、戦時中はインフレになっていません。インフレになったのは、空襲によって全国のインフラ、住宅や工場などが破壊され、供給力が圧倒的に不足したからです。
供給力不足を解消するには、住宅や工場をたてる必要がありましたが、政府は逆に財産税をかけました。おまけにドッジ・ラインによって、投資も抑制しました。政府は供給力不足をさらに加速させたのです。
日本は今、このときと同じデフレ政策、緊縮政策をやろうとしているわけです。問題なのは、国民をはじめ、財務省もこういうことをまったく認識していないことです。「拡大均衡」でなければ、経済は成り立ちません。企業や個人が銀行からお金を借りて、保有する現金以上に投資をすることが、経済が発展する第一原則なんです。私が主張している新幹線ネットワークの構築は、緊縮財政から積極財政への転換させるためのものです。
法律的な制度改正も重要ですね。
建設の仕方として、局所的な新線建設を積み重ね、ある程度まとまった区間が繋がった時点でフル規格新幹線に切り替える、という手法も必要ではありませんか。
なぜなら、今の整備新幹線はまとまった区間で建設するありかたになっており、それもまた全国的な整備・建設の支障になっていると考えられるからです。高速道路のように局所的な建設を積み重ね最終的に全線開通させる、という手法を新幹線でも行なうべきです。
その局所的な新線建設をしている期間はいわゆる「スーパー特急方式」で暫定的に運行。但し、そのスーパー特急方式も狭軌在来線車両では時速200km運転は難しいという話を聞いたことがありますので、およそ時速170kmくらいの運転を認める。場合によっては「新幹線」の法律的な定義を「時速170km以上で運行する鉄道」に変更することも必要だと考えます。