新幹線効果で観光が伸びた代表例は京都
――公共交通インフラの経済効果はわかりにくいところがあると思います。
波床正敏 そうですね。例えば、四国には3つの橋(瀬戸大橋、明石海峡大橋+大鳴門橋、しまなみ海道)があります。
世間的には3兆円突っ込んだのに、大失敗というイメージが植え付けられていますが、それは事業費と通行料金の関係だけしか見ていないからです。それらの関係だけで見れば、確かに赤字です。そもそも交通インフラは利用料金でペイするものではないので、当然のことです。
ところが、四国経済全体で見ると、本四架橋は、四国に大きな経済効果を生み出しています。これら3本の橋ができたおかげで、本州から四国への移動時間はかなり短縮されました。その前は船で行き来していましたから。
その経済効果を、統計を分析して推計してみると30年間で20数兆円に上ります。
つまり、3兆円を突っ込んで、20数兆円分のGRP(域内総生産)が生み出されているわけです。インフラの経済効果としては十分な数字です。
――新幹線の経済効果についてはいかがでしょうか?
波床正敏 新幹線の経済効果は明らかです。新幹線が停車する都市は、軒並み人口が増えています。
新幹線によって東京が地方のヒト・モノ・カネを吸い上げる「ストロー現象」が起きたと言われます。企業の管理機能など一部を見ればその通りですが、すべての産業を見ると必ずしもそうではありません。新幹線によって沿線地域の産業構造が再編されただけです。沿線都市の観光サービスを見ると、むしろ軒並み伸びています。
新幹線整備時期が古いので、継続的な統計的数字は追いにくいのですが、新幹線によって観光サービスが伸びた代表例としては、京都が挙げられます。もともと歴史のある都市でしたが、東海道新幹線が停まるようになったことで、観光都市としての地位を確立しました。
東京~新大阪間という大移動区間の間に立地していたのが、功を奏しました。意外なところでいくと、広島も新幹線によって観光が伸びました。
――北陸新幹線開業によって、金沢の観光が伸びているという報道があります。
波床正敏 金沢については、開業後まだ5年なので、まだはっきりとしたことは言えないと考えています。明確な経済効果が出るのは20~30年後です。
確かにメディアは金沢で観光ブームが起きていると伝えています。話題としては面白いかもしれませんが、経済効果というものはわずか5年ぐらいで評価することはできないものなのです。