最近の学生は、叱るとすぐ心が折れる
――学生の就職先は建設業界が多いのですか?
波床正敏 ウチの大学の卒業生には、建設会社に入社して、現場監督をやっている人間が多いですね。
20年ほど前の学生時分は、ヘナヘナっとしていて「大丈夫かな?」と思っていたようなヤツが、工事現場で所長をやってたりする。「えー!アイツが?」と驚くことあります(笑)。
――最近の学生さんの気質はどんな感じですか?
波床正敏 昔の学生に比べ、最近の学生は、なにかあるとすぐ「ポキッ」と心が折れる人間が多い印象ですね。
最初はウチの学生だけかと思っていましたが、他の大学の先生と話をすると、同じことを言っていたので、世代的にそういう傾向があると感じています。最近の学生は、以前に比べ、打たれ弱くなっています。粘り強さがなくなっていますね。
――?られると、次の日から来なくなるみたいな?
波床正敏 その通りです(笑)。昔みたいにガーッと言うと、ホンマに来なくなります。文字通りいなくなります。
なので、なるべく優しく接するよう気をつけています。ただ、それを学生にさとられるとナメられるので、難しいところがあるのですが(笑)。
一方で、昔に比べると、最近の学生ははるかにマジメです。ちゃんと授業に出ます。私が学生の頃は、夏休み後半になっても「いつ頃授業が始まるのかな」という感じでした。確認しに行ったら、ガイダンスが終わっていたということもありました(笑)。
――「学生の土木離れ」を感じることはありますか?
波床正敏 リーマンショック以降、建設業界が学生を採用しなくなり、土木を学ぶ学生が減りました。民主党が政権をとって「コンクリートからヒトへ」と言い始めて、トドメをさされました。
学生の土木に対するイメージは最悪になりましたね。土木とか建設という言葉を使うと学生が集まらないので、ウチも含め、多くの大学で学部名、学科名を変更しました。
多くの学生は土木だと思わないで入学してくるので、入学してから「アレ?」という感じになるわけです。土木の学生だけども、最近の建築人気のせいで「実は建築志望でした」という学生が増えました。
建設関係に就職する学生がいても、少しでも建築のニオイがする住宅メーカーを選ぶようなところがあります。
――学生への指導方針などは?
波床正敏 新幹線などに関する研究はムリに学生にさせていません。ウチの学生は、新幹線なんかより、より身近なまちなかの交通に関する研究をやりたがるからです。新幹線の研究をやりたいと言う学生は3年に1人ぐらいです。
好きに研究テーマを提案させてみると、「調べてみると、この道路は渋滞がヒドいのでなんとかしたい」みたいな話を始めます。私は「気持ちはわかるけど、ウチの研究室は公共交通の研究室なんやけどなあ」とやんわり軌道修正をかけます。
本当は「そんなモンあくか~!!」と言いたいところですが、「じゃあその研究一緒に考えてみよか~」ぐらいにとどめています(笑)。なので、卒業研究と学会用研究は分けており、学会用は新幹線に関する研究が多いです。
――大学が抱える課題は?
波床正敏 うちの大学に限りませんが、若い研究者が減っています。助教(助手)をとらなくなったからです。今でも助教をとっているのは、一部の大きな国立大学ぐらいでしょう。
若い研究者が減ると、自前で大学の研究者を組織できなくなります。即戦力を求めがちになるので、大学の教員組織の高齢化が進んでいます。高齢化が進むと、ICTなどの新しい挑戦に対して消極的になりがちです。
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