建設業界の接待文化は自分に合わない
――引き継いだ当時、大変だったことは?
櫻井 防水工事の仕事のやり方は知っていても、経営のやり方は理解していませんでした。当時の会社の売上高は4億円規模で既存の顧客もいらっしゃったので、まずはその方々に新社長になった私をしっかり知ってもらうために、現場に足を運んでは仮設トイレを掃除したりして、「彼がやっている会社はしっかりしてそうだ」と目に留まるようにアピールしましたね。
また、建設業界では飲み会や接待が多いですが、その文化が私にはピンとこなかったんです。「スエヒロ工業さん、打ち上げ終わったから飲み会行こうよ」と言われたり、お客さんの中には「スエヒロ工業さんは、飲みに連れて行ってくれないの?」という声もありました。ですが、「発注者から次も仕事をもらえるような満足できる仕事をこなすので、まずは仕事ぶりを見てください」とお願いしました。
正直、「つまんないやつだな」と言われたこともありますよ。でも、まずは仕事で信頼を勝ち取ることが先でした。元請も下請も、協力し合ってはじめていい建築物ができると考えています。持続的に仕事を受注していくためには、「飲みに連れて行けば仕事をもらえる」という営業方法ではなく、仕事で信頼を勝ち取ることを貫きました。
協力会社の資格取得も支援
――今の仕事の主流は?
櫻井 元々は防水工事専門の会社でしたが、今は塗装や内装、足場を組んだリニューアル外装工事などの修繕など幅広く手掛けています。防水工事は、どこが雨漏りしているかを探る職種でもあるため、大規模修繕工事にも参入しやすかったですね。

大規模修繕工事を手掛けた神奈川県のマンション
――施工の強みは?
櫻井 櫻和という協力会に登録いただいている会社が51社あります。その協力会社の距離感がすごく近いのが特徴ですね。勉強会やレクリエーションを当社主催で開催したり、今年は新型コロナウィルスの影響で開催できませんが、昨年はバーベキュー大会などを開いたりと、顔を合わせる機会がとても多いんです。

スエヒロ工業協力会のBBQ大会
そのため、塗装工事の職長が業務を完了させた後、次に行う防水工事のタイミングなどを詳細に防水工の職長にスムーズに伝えられるコミュニケーション力が強みです。品質が保たれているのは、協力会社同士の連携力でもあります。また、協力会社を51社抱えているので、お客様から「雨漏りしているから明日来てほしい」と要望があっても対応できる機動力があります。

安全大会
――先代の売上高は約4億円で、現在は約10億円です。
櫻井 大きな戦略をもって売上高を伸ばしたわけではないんですよ。協力会社は当時30社ほどでしたが、年々信頼できる会社を増やし、工事をこなせるスタッフを抱えるようになって、売上高も自然に増えるようになったんです。大きな案件にすぐ飛びつくのではなく、一つ一つ確実にこなせるように技術を磨くことで、できる工事の範囲が拡大していきました。
また、仕事の増加に伴って得た新たな協力会社との縁をより大切にすることも意識しました。その縁が絆へと変わり、結びつきがいっそう強固になるからです。たとえば、建設業に関する資格取得の費用を、当社社員だけではなく、協力会社の方も対象に全額会社負担しています。良い人材が他社に流出するリスクも考えられますが、建設業界に技術者が増えれば、最終的には私たちも潤っていくと考えています。
従業員や協力会社の信頼を仕事で勝ち取ろうとする姿が素晴らしいです。
飲みにケーションで仕事を融通する時代ではなくなってきていると個人的にも感じています。
このような考え方を持った建設会社が増えるとよいですね。
同感です。仕事を頂いてる感謝はもちろんありますが。見返りを求められるのはどうかと思います。真面目にしっかりとやってくれるからと仕事を振ってくれる相手には今以上の仕事で返そうと思います。きれい事は大事にしていきたいですね。