最大にして唯一の解決方法は「仮設展示場の建設」
――問題は山積しているが、解決策は?
石森 私を含め、多くの展示会関係者が考えている最大で唯一の打開策は、「仮設展示会場の建設」です。今回、小池百合子都知事宛てに「7万m2の仮設展示場の建設」を嘆願する嘆願書を渡しました。これは自助努力をしないことを意図するものではありません。先ほども申し上げましたが、我々にとって展示会場とは、漁師にとっての海と同じなんです。
展示会業界は展示会ありきです。東京近辺で、東京ビッグサイト東館と同等の広さを持つ仮設展示場を建設するには、100~130億円の金額で施工可能です。130億円で出展企業を含め救える会社は数多くあり、効果は大きいと考えています。
――嘆願書はどれくらい集まった?
石森 1週間で発起人572社と賛同者2,800人が集まりました。私もすべての嘆願書を目に通しましたが、1社1社大変な思いを綴っています。たとえば、ある装飾施工の専門会社では、「これまでの20か月の使用制限ですでに仕事が激減していた。これがさらに1年続くなら、将来に希望が持てず廃業を考えている」とのコメントがありました。
また、出展社からは、「東京ビッグサイトで毎年3つの展示会に出展し、8,000万円の売上を計上していた。零細企業で宣伝や全国営業ができないので、使用制限の1年延期は弊社を倒産の危機に追い込む」などの切実な意見も寄せられています。
東京都にとっても、東京五輪の延期とそれに伴い2021年末までビッグサイトの使用制限の延長を決定したことは、簡単なプロセスではなかったと思います。しかし、展示会業界に事前に相談があったわけではありません。ただでさえ新型コロナウイルスで苦労されている中で、さらに1年間活動停止することになれば、「生きるか死ぬか」の瀬戸際に追い込まれることになります。東京都の方々が、真摯に私どもの話を聞いていただいたことはありがたかったです。
仮設展示には、花火のような美しさがある
――最後に、仮設展示の施工についての思いを。
石森 展示会の主役は、出展社とバイヤーとなりうる来場者です。この主役をどうやってもりあげていくか、戦略を含めたブースデザインや運営計画をご提案をするのがわれわれ装飾施工会社のつとめとなります。
展示会やイベントでは、1日か2日で仮設を設置し、終了すればその日の夜のうちに一気に撤去し、更地にする。この繰り返しです。仮設は勝負の期間が短く、一度一度のライブ感をとても大切にしています。また、仮設は短期間で無くなることが魅力にもつながっており、花火のような美しさもあります。多かれ少なかれ、販促ツールやエンターテイメントとして役立っていると自負しています。
日本で展示会文化が根付いてから半世紀ほど経ちますが、今、この文化が根こそぎなくなるかもしれないんです。新型コロナウイルス発生により求められる対応と、東京五輪開催延期で求められる対応は、性質の異なる問題であることをこれからも強く訴えていきたいと思います。
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