「自衛隊さんはタダでやってくれるからねえ」
しかし、それから何日か経っても、自治体のスタンスは変わりませんでした。私ががれき除去現場に派遣された夕方の打ち合わせ時に、自治体担当者の本音が漏れた瞬間がありました。それは、とある建設会社の社長の一言からでした。
「〇〇さん(自治体の担当者)、そろそろ自衛隊さんたちは本業に戻ってもらったほうがいいんでないのかい? 民間でも十分対応できるだけの器材と人は戻ってきているよ」
すると自治体の担当者は、こう言いました。
「そうしたいんだけど、自衛隊さんはタダでやってくれるからねえ。民間さんはお金がかかるからさ。予算が後からつくのはわかっているんだけど、先が見通せないんで」
自治体職員以外の出席者は、みんな苦笑いして何も言いません。
最後に、私は上司の指示どおり「自衛隊の撤収時期については早急に検討してもらいたい。また、先ほどの社長の発言にもあったとおり、民業圧迫は自衛隊として災害派遣の要件を満たさないことから許容できない。民間企業が回り始めないと復興も始まらない」と発言したことを今でも覚えています。
やや感情的になって発言しましたが、それは自治体職員の発言に怒りを覚えたからです。
自衛隊が災害派遣活動をすることは周囲に大きな影響を及ぼします。
私は大きく3つあると思います。
①国民の生命・財産の安全確保に寄与
②自治体の予算に影響なく復興活動が進む
③国土防衛上の空白が生じる問題(特に南西方面)
②については、民業圧迫の問題があるので政府と自治体は線引きを明確にしなければならないでしょう。
③は自衛隊の本来任務の国防に影響をきたすことから政府が自治体に理解してもらうよう引き続き働きかけていかなければならないのでしょう。
被災地出身の隊員は撤収することに対して抵抗を感じるかもしれません。しかし、自衛隊の撤収からが本当の復興の始まりなのではないかと私は思います。
昨年の千葉の台風で、10月になっても自衛隊の人達が、屋根にブルーシートを掛けているのには違和感を感じました。
主に、空き家をメインにしていたように思います。
一般の家屋は、工務店が既に掛け終わっていました。
これは、後から瓦の修理工事を請け負うためであるのは明らかです。
緊急事態が終わったなら、後は自治体が対応するべきなのに、
自衛隊は費用がかからないからだというのは、部外者から見ても明らかでした。
これで、民業圧迫と言われたら、危険な作業をしている隊員達としてはいたたまれない気持ちになります。
名前は自衛隊でも、あくまでも国防軍なのですから、
自治体に対しても、言うべき事は言えるという制度にしなくてはならないと思います。