SNS活用しスピーディーに情報共有【芦北支部】
発災から5日目となる7月9日、芦北支部の事務所では、騒々しくインパクトドライバーの音が鳴り響く。芦北支部では、事務所を移転するため仮事務所を設けていた。それが被災したのだ。
1メートル強、床上浸水し、後片付け作業が行われていた。芦北町中心市街地は海岸沿いに位置しており、ここに幹線道路となる国道3号が並行している。発災当初は豪雨に見舞われながら丁度、満潮時と重なった。
「4日の昼頃に近くの熊本県芦北地域振興局まで、膝上まで浸かりながら歩いていきました。そこで県の指示を受けての活動が始ったんです。ただ、既に復旧活動は行っていたのかな。芦北支部には防災委員会を設けていてその組織が機能していましたから」と佐藤一夫支部長は初動に素早く反応できたことを説明する。
芦北地区では、平成15年(2003年)7月に豪雨災害を経験している。防災委員会を設けたのは、その教訓から。情報を一本化させ、共有できる組織が緊急時に役立つことを肌で感じていた。
佐藤支部長は「〝あの時こうしておけば良かった〟との先輩たちの意思が受け継がれたものを具現化した体制」と自負している。さらに「県内ではうちだけの組織」と自信を覗かせる。
この防災委員会で特に活躍しているのがSNSだ。委員会では、ターゲットに向けて一斉に情報発信するプッシュ型WebメディアとなるLINEを使っており、タイムリーに情報共有が出来ていることに価値を見出している。
支部会員の技術屋をはじめ役所も個人の携帯で参加するなど、情報の共有化では抜けがない。防災情報システムと併用することで必要な情報を瞬時に取り込むことができる。芦北支部では、防災訓練時でもLINEを活用しているという。
「安全性という面で、これを推奨していいのかはわかりませんが、必要な情報をスピード感をもって共有する手段として今のところ何のトラブルもなく非常に助かっています。しかし闇雲に使ってもダメで、核になる人がいないと有効活用することが難しいでしょう。その点、芦北支部では防災委員長がその任を担っています」と佐藤支部長は信頼する仲間に対して誇りを感じている。
未だ豪雨が続く中、緊急復旧のめどは見いだせないまま。こうした中、佐藤支部長は新たな試みを提案する。
「支部会員企業の従業員の中には、自らも被災した者もいます。当然、親戚にも多数いることでしょう。こうした人たちに休みを取ってもらうことが重要と考えています。本協会主導で休日の取得を指示して頂けるよう申し入れているところです。みんな後ろめたいんです。でも上からの指示があれば堂々と休むことが出来ます。そこで従業員の方々にはリフレッシュしてもらい、休むことで空いた資機材を有効に自分たちの支援に役立てることが出来ます。もちろん孤立集落や緊急の個所については例外ですし、今後新たな災害発生があればこの話は無しですが」。
応急復旧はあくまでも一時的なものですよね。
その後の本復旧は国と自治体が連携して被災地の安全確保を考えて焦らず計画的にやる必要があると思います。
東日本大震災の本復旧も道半ば、九州北部豪雨も含め、災害対応インフラの整備も難しいところ。
予算も見据えつつ対策を講じるのであれば防災ではなく減災に軸を置いた復旧にシフトしていく時期に来ていると感じてしまいます。