本復旧には抜本的な見直しが必要【人吉支部】
人吉支部の幹部らは、国土交通省からの要請に応えるべく、豪雨の降り始め当初からその対応に追われていた。球磨川本川の水位が上がった段階で、災害の可能性あることから、いち早くポンプの設置に動いていたのだ。
そんな中、球磨川本川で人吉市街下流部の中神町で堤防決壊の一報が入る。人吉市中心街部では浸水、支川万江川、支川山田川が次々に氾濫。情報が錯綜しながらも冷静に指揮を執っていたのが熊本県建設業協会の松村陽一郎副会長だ。
「どれだけ被害が拡大していくのかわからないのが実情でしたが、今やるべきことはきちんとやっていくことを考えていました。発災から2日間は、目の前の課題を解決するだけ。動くに動けない状況でした」。松村副会長は国土交通省や熊本県球磨地域振興局と連絡を取りながら情報収集に没頭していた。
それでも完全に情報を把握できてはいなかった。発災直後が週末だったこともあって町村からの情報が上がってこない。人吉市の球磨川本川下流部で隣接する球磨村は国道219号が寸断しており、何も見えていない状況。
松村副会長は発災から3日目の早朝に熊本県のA1クラスに集まってもらい、球磨地域振興局と何を優先すべきかを協議すると同時に、応急復旧方針を固め各社に対応を割り振った。
松村副会長の方針はこうだ。「人吉支部の会員各社は被災した地元町村からの依頼もあり動いています。だから機動力のある数社に協力を求めて、国土交通省管理の被災個所や熊本県管理の大規模被災地、緊急復旧個所などに対応しているんです。みんな良くやってくれています」。
発災から8日目には、国会議員や地元選出県議会議員らと被災地の巡回を行った。既に激甚災害指定も公表されており、被災の現状を政府に届くようにとの願いからだ。こうした地道な取り組みにも松村副会長は、懸命に骨を折る。人吉の将来がかかっているためだ。
「応急復旧は我々がやるので、本復旧の希望を聞いてほしいと願っています。仕事を下さいという事ではありません。国道219号は今の路線でいいのか、球磨村は今のまま復旧していいのか。抜本的な見直しが必要と考えているからです。それには国の力を借りないとできませんので」。
ダム問題については、「今はそれを語る時ではないでしょう。多くの人たちが亡くなり、未だ不明者もいらっしゃる。不明者のめどがつかない限り、自衛隊や警察も引き上げられないのではないでしょうか。本格的な予算付けなどが始まった時でしょう。業界として意見が言えるのは」。松村副会長は物静かに呟いた。
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応急復旧はあくまでも一時的なものですよね。
その後の本復旧は国と自治体が連携して被災地の安全確保を考えて焦らず計画的にやる必要があると思います。
東日本大震災の本復旧も道半ば、九州北部豪雨も含め、災害対応インフラの整備も難しいところ。
予算も見据えつつ対策を講じるのであれば防災ではなく減災に軸を置いた復旧にシフトしていく時期に来ていると感じてしまいます。