古木や木材を使って、人生に潤いを
――木と建築への関わり方は。
赤坂さん これからより一層、木造の需要は高まると考えています。今は企業ベースでSDGsが語られますが、それが一般家庭にも浸透していくのは時間の問題です。そうなると「自然環境を考えると、できるだけ再生可能な木材で家をつくることがいいよね」とフェーズが転換していく。コロナ禍で在宅時間が増え、おうち時間がより大切なものになる、空間的にも“木のぬくもり”がもたらす効果はフィーチャーされていくと考えています。
当社としては、半年かけて桧原村で林業を行っている会社や古木を取り扱う長野県の山翠舎とお付き合いがあり、今後体験型のイベントを通じて、木の大切さをお客様に伝えたいと考えています。さらに、多摩産材や古木をうまく使って施工できる会社もありますので、そういう会社とうまくお付き合いしながら、競合ではあってもお互い技術を高めていきたいですね。
――古木を建築に使うことに潤いがあるのでしょうね。
赤坂さん 一つの建築物すべてに古木を使うことは難しいですが、ピンポイントでも古木を使うことで、建築に味わいやなつかしさ、深みが生まれます。
もともと、古木は古民家に使われてきましたが、それを現代建築に採用することは歴史を受け継ぐことにもつながります。また、再生や循環というサステイナビリティをきっちりと捉えていくことにもなります。

使われていなかった農業用アクリルハウスをリノベーションした多目的なアトリエ兼お花屋さん
――施工にもかなり工夫が求められるようですが。
赤坂 当社の強みは、自然の素材をしっかりと使える施工力にあります。長年経験を積んでいるスタッフも多く、現場監督や職人さんら施工側からの提案力にも助けられています。
こうした施工提案力は、チーム「KOMOREBINOOK」のフラットな人間関係により生まれていると思います。仮に施工会社と職人さんに明確な線引きがあり、縦の関係性が強いと、いい提案は生まれにくいかもしれません。
定時廃止の完全フレックス制で働き方改革
――働き方や採用については?
赤坂さん 私は採用や人事も担当していますが、人材は結構集まっていますよ。これは働き方や自由な社風によるところが大きいかと思います。8月から就業規則も改定して、9時~6時の定時を廃止しました。今は完全フレックス制です。たとえば、2時間だけ現場に行く日があれば、そこから直帰してもらって、翌日は会社で10時間働く、なんてこともOKな柔軟な働き方を導入しています。
完全週休2日制も導入し、月単位で働く時間を定めています。現場の直行直帰もOKです。エクセルやワードを打つためだけに会社に戻る手間を避けたいですから。「建設業界は3Kだから、人が集まらない」と諦めるのではなく、まずは自社の改革が必要です。
――ものすごく大胆な改革ですが、これは赤坂さんが異業種出身だからこそできた?
赤坂さん もともと、大学を卒業後は婚活支援およびライフデザインサービスを展開するIBJという会社に入社し、バックオフィス部門や代表直下の子会社のマネジメントチームで、事業企画から経理、ウェブまで幅広く業務を行いました。
2019年10月に当社に入社しましたが、その意味では根っからの建設業界の人間ではないですね。異業種出身の視点のアイディアを当社の代表や役員が採用してくれるところは本当に感謝に尽きます。
――異業種出身の赤坂さんから見て、建設業界が改革すべき点は?
赤坂さん 今、申し上げた通り、働く環境がまず一つ。とはいえ、私も施工現場で作業することもあるので、変えられない部分があることも理解しています。ですから、何が正解なのかは正直模索中です。
また、施工店は発注者やメーカーとのつながりはあっても、工務店同士や小規模建設会社同士の横のつながりがなく、業界として一丸となるような成長やムーブメントが見えづらいことに課題を感じています。